ロンドン旅行記
〜AMP「シンデレラ」2nd Night編・5〜


<10/10・夜>

再び目の前にシンデレラのイラストが描かれた幕が現れました。会場では昨晩と同じアイスクリームの争奪戦が始まっています。

その中、私はぼうっと辺りを見ていました。そして大きく幸せのため息をほうとつきます。今、目の前で繰り広げられた出来事が夢のようです。
本当にロンドンに来て良かったとぼんやり考えていました。15分の休憩が始まった途端急に騒がしくなった会場は現実的ですが、私の感覚は夢の中でした。

ぼんやりと前を見ていると、後からイギリス人がぞろぞろとやって来ました。見ていると彼らはオケボックスの中を覗き込み始めたのです。楽器の見学かと思っていると、楽団員と会話をし始めました。どうやら家族かなにかのようで、かなり親しい知りあいのようです。
あの席に座っているからねと告げて彼らは去っていきました。何てアットホームなんでしょう。

さあ、もうそろそろ二幕目が始まります。会場をうろうろしていた観客も徐々に着席し始めました。オーケストラのメンバーも揃い始めます。パンフレットを開けたり閉じたりして楽しそうに話している私のお隣りさんグループのメンバーも全員揃いました。友人の隣りのカップルは相変わらず肩を抱きあって二人の世界にどっぷりつかっています。
そして、耳を直撃する爆音が会場に鳴り響きました。

爆破されたダンスホール。舞台の上ではブルーカップル達が倒れています。
昨日と同じくエンジェルが舞台正面奥に置かれたピアノの側に一人立っていました。薄い幕を通して見るエンジェルは、少しかすんで見えます。舞台中央には落ちた天井とミラーボール。中央から舞台右奥に向かってかけられている壊れた赤い階段。死の匂いに満ちているダンスホール・・・・
その中唯一の生命体であるエンジェルがピアノの鍵盤に指をおろします。すると、全てが爆破前の状態に、まるでテープの逆まわしを見るかのように戻って行きました。

ブルーカーップルはその名の通り青い人達で、同性同士は同じ洋服、同じ髪型をしています。
女性はセミロングの青い髪、肩を出した深い青のドレスを着ています。スパンコールなどの光る素材で飾られた身頃に、パニエをはいて少し膨らませたような、足首より少し上ぐらいの長めの丈をもったドレス。ルビーのような宝石でゴージャスに飾られたネックレスと右のウエストにつけられた赤いリボンがポイントになっています。
男性の洋服は女性のドレスと同じような暗い青色をした軍服です。しかし彼らの軍服の下は赤いワイシャツに赤いネクタイで、更に軍服のボタンは赤、ベルトも赤とかなり派手にまとまっています。
さて髪型ですが、こちらはビニール素材のようなもので出来ている人形の髪のような青いカツラを全員かぶっています。「SWAN LAKE」で見た女王のお面を思いだします。どうやらこのビニール素材の人形みたいなかぶりものも、レズ・ブラザーストーンのお気に入りのようです。

そしてこのブルーカップル。全員同じメークをしているのです。赤い唇に青いアイシャドー。しかもかなり目の下のアイシャドーが強調されています。そう、少々死人のように見えるのです。見た目は結構怖くてインパクトがあるのですが、彼らの踊りは極めて普通で、大人しい印象を受けました。

そこにその静かな雰囲気をぶち壊す御一行が到着。シンデレラの義兄弟、姉妹、その友達です。
シンデレラの家族達は皆パーティー用の洋服に着替えています。イレーネは黒、ヴィヴィアンはグレーのドレスを、マルコム、ヴァーノンは黒のタキシードを着ています。末の弟エリオットは蝶ネクタイはしているものの、相変わらず半ズボンです。

少し遅れてシビルが登場。黒のロングドレスにダイアのアクセサリーをつけています。どうも酩酊状態でよろよろしています。気の強さゆえに家族の手助けを嫌がっています。よろよろと階段を下りてくる様は本当に酔っ払いのようです。はらはらしながら見ていると、遂に足を滑らせて階段を落っこちはじめました。ああっと思った瞬間、見事に舞い降りるように着地!上手い!!!シーモアはもう、本当に役者です。登場する度に観客の目をくぎ付けにしてくれます。

その後ますますおかしさを増した家族のダンスがあり、いよいよアダム扮するハリーの登場が近づいてきます。ファンファーレが鳴り、昨日と同じくヒーローは出てこず、人違いでがっかりするというお約束が終わります。そして、いよいよ2度目のファンファーレが鳴りました。アダムの登場です。

さっそうと軍服を着たヒーロー三人が現れました。映画で見るような形のいい帽子をかぶっています。皆の注目を一身に浴びて彼らは階段を下りて来ました。
昨日のイワン・ワードロップが演じるパイロットの時には、皆に挨拶をするようにフロアーをまわるというシーンが間延びして見えたのですが、今日アダムが同じ振付で挨拶していると、間延びする事無く、正しくヒーローの凱旋という感じがしています。やっぱり違うっっ!!!!ファンの欲目だけとは思えない違いです。そう、間の取り方が違うのです。歩いているだけでもかっこいい!
うーん・・・・やっぱり欲目かもしれません・・・でも、本当に違うのです。

挨拶がわりに三人のヒーローで踊るシーンが終わったとき、私は舞台の上のヒーローを絶賛する「役」をしている登場人物たちと同じぐらい、一生懸命拍手をしていました。会場ももちろん拍手で湧いています。

舞台ではあっと言う間にハリーとシビル、つまりアダムとシーモアのデュエットが始まりました。
華やかなヒーロー達に積極的に自分を売り込むシビルとその娘達。嫌がるアダムと逃がさないわよという迫力のシーモア。この二人の掛けあいが実に見事です!踊りはじめからして既に凄い。逃げるアダムの手をひっぱり、無理やり踊りにひっぱり込みます。突然腕を引っ張られ、何が起こったのかと思う頃には、既にダンスの相手をさせられているアダム。

シーモアとアダムの身長差はかなりあるのですが、シーモアの存在感のせいか、二人の技術のせいか、動きは実に滑らかで、二人の息はぴったりあっています。
ハリーが嫌々踊っているというのが手に取るように分かり、笑いを引き出します。表情の一つ一つにその感情が現れています。
一方のシーモアは絶好調で踊り、逃げるすきを与えません。その二人のデュエットに客席はわき返っています。その拍手の渦の中、二幕の一番の見せ場はこのデュエットかもしれないと思っていました。

・上の写真はダンスブックスで購入した雑誌(左)とシンデレラのパンフレット(右)です。(著者撮影)

・「シンデレラ」の内容についてはこちらをご覧下さい。

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