ロンドン旅行記
〜AMP「シンデレラ」2nd Night編・6〜


<10/10・夜>

シーモアとアダムのデュエットの興奮がさめやらぬ中、漸く開放されたアダムが素早く退場。ああ、また消えてしまった・・・と思っていると、ダンスホールに再び新たなゲストが到着しました。シンデレラです。

赤い階段にスポットライトがあたります。そこにしとやかにシンデレラが現れました。一幕でのブスっかわいいサラは美しいシンデレラに大変身していました。
ブロンドの髪を結い上げアップにしています。肩を出したドレスは基本的にはブルーカップルの女性のものと同じ形ですが、その素材と色は全く違っています。
薄い水色に少しメタリックな青いスパンコールを散らした身頃。スカート部分との切りかえはV字です。美しいのはスカート部分で、白と水色にオーガンジーのような布を幾重にも重ねて不思議な色を出しています。切りかえ部分周辺と裾にはスパンコールがちりばめられていて、ライトがあたるとキラキラと光ります。床上10cmぐらいのロングスカートです。
その後ろ、腰の少し下あたりには大きなリボンが一つついていました。結んだリボンは二段になっており、その端は斜めにカットされています。そしてそれにもスパンコールがついていました。
両腕の、肘の少し上まであるドレスと同系色の長い手袋と、二連の真珠のネックレスとが清楚な感じを出しています。

歩くとフワフワとしたスカートが美しく翻り、シンデレラの実母の形見のブルーの靴が見えました。
この変わりよう。一幕との落差。「シンデレラ」の見どころである「変身」は見事に成功していました。

一人遅れてきたサラ扮するシンデレラの登場の後、再びハリーが登場します。
ハリー(アダム)は帽子をかぶっておらず、片手に煙草をくゆらせて佇んでいます。品定めでもするようにゆっくりとシンデレラを見つめます。
その何ともいえないキザっぽい姿が、もう、キャーっという程にかっこいいのです!!!!立っているだけでさまになっています!そう、古い映画の中の二枚目という雰囲気が良く出ています。
このシンデレラを作るにあたってマシュー・ボーンは、1946年の映画「A MATTER OF LIFE AND DEATH」を参考にしているのですが、このハリーという役は俳優デビット・ニーブン扮するパイロットから生まれています。という訳でハリーの口ひげも、ダンスホール以外では必ず着ているジャンパーも映画と同じなのですが、アダムのハリーの方がよほどニーブンよりかっこいいのです!(もう分かったと言われそうですが・・・・)
どうしてこう、舞台にいる時のアダムはかっこいいのでしょう!

タバコを置きに一端舞台そでに戻り、再び今度は何も持たずにハリーが舞台に登場しました。シンデレラとのデュエットです。
流れるような動き。先ほどのシビルとのダンスとは全く違い、美しいデュエットが繰り広げられます。リフトされるたびに翻るシンデレラの白っぽいドレスは、ダークブルーの舞台の中で幻想的に見えました。
このスカートの何ともいえない重力のないような「フワフワ」は、ハリウッド黄金時代のミュージカルに出ていたヒロイン達のドレスを思いださせます。
実に基礎のしっかりした、美しい二人の夢のようなデュエットに私たち観客も、シンデレラと同じように夢見心地になっていました。

いつの間にかステージに集まった他の登場人物達に混ざってシンデレラの父親まで登場しました。
車イスに座っているスコット(父親)が元気に立ち上がり、娘をよろしくというような挨拶をハリーと交わします。うーん、スコット・・・・ロマンス・グレーはかっこいいけど似あわない。
彼にはにこにこ笑ったり静かに座っているだけの役なんて似あわない・・・見ているこっちがむずむずして来ます。まあ、連日マルコム(長男)では疲れてしまうでしょうが、スコットも何かやりたくてうずうずしていそうだと、勝手に思って眺めていました。

ブルーカップルの男性陣とシンデレラのダンスが始まります。楽しげに踊るサラ(シンデレラ)はとてもチャーミングです。
列をなしてシンデレラと踊るブルーボーイたち。その最後尾はもちろん踊りに遅れてくるのですが、それをにこやかに待ってあげるサラの様子がまたやさしくて好感が持てます。
マシューらしい思い付きのこのダンスに客席は笑い、喜び、拍手を贈ります。最後の最後にはちゃんと本命ハリーの腕の中に飛び込み、しっかりとポーズを決めてくれるシンデレラ。
手に手を取って、ハリーがシンデレラを背中から抱きしめるようにして互いの顔を寄せ合っています。サラとアダムにとってもこの舞台は至福の時なのだろうなぁと思わせるほほ笑みを、二人ともが浮かべていました。

・上の写真はダンスブックスで購入した雑誌(左)とシンデレラのパンフレット(右)です。(著者撮影)

・「シンデレラ」の内容についてはこちらをご覧下さい。

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