ロンドン旅行記
〜AMP「シンデレラ」2nd Night編・12〜


<10/10・夜>

再びあっという間に場面は移り、舞台は駅のプラットホームになっていました。
正面には大きく「12」と書かれたボードがかかっています。プラットホームのナンバーでしょうか。AMPのシンデレラは「12」にとてもこだわっています。シンデレラの家は12番地。空襲があったのは12時。魔法が解けるのは当然の事ながら12時。そして、このプラットホームは12番線。そして、駅の大きな時計も、もうそろそろ12時です。

駅ではカップル達が別れを悲しんでいます。そこに、何と舞台左奥から列車が入ってきました。凄い・・・どうやって動かしているのでしょうか。やはり人力?などと現実的な事を考えてしまいます。
再会を喜ぶ恋人達と、別れを悲しむ恋人達が入り乱れる中、新婚のシンデレラとハリー、その見送りの一行が入ってきました。

シンデレラはメガネをかけ、髪を後ろでおだんごにし、黒い小さな帽子をかぶっています。ウエスト部分がくびれている、黒い形のいいロングコートをまとっています。
襟元からはモスグリーンの、ベロアのような素材の襟がのぞいています。歩くと前が少しはだけ、中のモスグリーンのワンピースのスカート部分がのぞきました。もちろん彼女はメガネをかけています。もうすっかり若奥様といった落ち着きがあります。

一方のハリーは、ダークブルーのスーツに、白いYシャツ。赤いネクタイをしめ、こちらもメガネをかけていました。
よほど時間がなかったのでしょう。アダム、ネクタイが少し曲がっているよと、思わず微笑んでしまいました。襟も何だか子供が洋服を着る時みたいに変に布が持ち上がっています。
それにしても、この感じ。メガネをかけ、スーツを着たアダムはサラリーマンでも十分通ります。

見送りの人に別れを告げた時、再びエンジェルが登場。
エンジェルは時間を止め、人の行き交うホームで、シンデレラと二人きりになりました。ほろ苦い別れの場面です。
目の前のアダムはシンデレラに「今何時?」と聞かれ、右手にはめた腕時計を覗き込んだままの姿でフリーズさせられています。かわいそうに・・・・さぞかし右腕が疲れて来ている事でしょう。またしてもエンジェル(ケンプ)にいじめられているハリー(アダム)の図です。

シンデレラとエンジェルが別れを告げ、いよいよシンデレラとハリーの旅立ちの時がやってきました。そのわきで、いつの間に作ったのか、長男のマルコムは軍人のボーイフレンドと別れを告げています。やっぱりマシューは芸が細かい・・・

エンジェルの目の前で二人は口づけをし、列車に乗り込みました。見送りの人に二人は手を振ります。出発する電車、手を振る二人。見送りを終えた人々は帰路につきます。そして、ホームにはエンジェルと寂しげな女性が残されました。

ああ、終わってしまった!!!!!と落ち込み、でもまだエピローグのおまけがあるもん!と再び浮上。

今までの静けさは何処へやら。舞台はパーティー会場になっていました。
紙吹雪が舞う中、楽しげに踊るカップル達。そこにサイドカーにシンデレラを乗せたハリーが「AMP2」号という名のバイクを運転して入ってきました。やんや、やんやの拍手の中、幕が下りそこにはバイクのヘッドライトだけが残りました。それにしても、「AMP1」号の存在が気になります。

そして、いよいよ本当のカーテンコールが始まりました。
群舞が登場し、その後主要登場人物達が一人一人入ってきました。
昨日もそうでしたが、エンジェルという役の人気は凄まじく、今日もひときわ大きな拍手が巻き起こっています。しかし、今日のそれは、昨日のものとは明らかに違う・・・・そう、ウィリアム・ケンプはアイドルなのです!隣の女の子達もキャーキャーとエキサイトしています。
そうか、ケンプはアイドルだったんだと、会場の歓声を聞いて驚いてしまいました。日本ではビデオでの彼しか知られていませんが、ここでは既に「白鳥/黒鳥」のケンプが浸透しているのです。すっかりスターになってしまったケンプが自信たっぷりに歓声に答えていました。

そしてシビルが登場。自信に満ちたキャットウォークで挨拶します。それだけでもう、そこはシビルワールド。シーモアは最後の最後まで見せてくれます。会場はどよめき、笑いと称賛の渦に満たされています。

そして、最後にアダムとサラが登場しました。会場中に大きな、大きな拍手がわき起こります。どこから見てもお幸せな二人はにっこりと微笑みあい、拍手と歓声に答えます。もう、幸せそうなんだからとちょっと羨ましくなりながら、こちらも思わずほほ笑み、出きる限りの盛大な拍手を二人に贈りました。

夢のような一時を終え、超現実的な劇場の外へ。この場を立ち去りたくないと後ろ髪引かれる思いでピカデリーシアターを振り返ります。
劇場の正面には「シンデレラ」の大きな看板がスポットライトを浴びて掲げられています。その下には今見た舞台のワンシーンのボードが飾れています。まだ興奮冷め遣らぬ雰囲気で駅に向かう観客たちで、劇場周辺は賑わっていました。
パーティーは終わってしまいました。時刻は10時半をまわっています。さあ、これで私が予定していたAMPの舞台は全て終わりました。明日は英国ロイヤルバレエのジゼルです。

もう一度劇場を見つめ、また絶対ここに戻ってこようと心に決めてから、先程舞台で見た「UNDER GROUND」(地下鉄)のマークを目指して私は歩き始めました。

・上の写真はダンスブックスで購入した雑誌(左)とシンデレラのパンフレット(右)です。(著者撮影)

・「シンデレラ」の内容についてはこちらをご覧下さい。

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