ロンドン旅行記
〜テート・ギャラリー編・3〜


<10/11・朝>

左側半分はどうやら見終えたようなので、今度は入り口に向かいながら右半分を見てまわります。こちらは現代アートが多く展示されています。

ブラックの「マントルピースのうえのクラリネットとラム酒の瓶」はキュビズムの影響が顕著に現れていますが、ピカソのそれとは違い、あわい色で統一されています。ヘンリー・ムーアの「横たわる人物」は美術の教科書で見た覚えがある作品です。写真で見たことのある作品が色々ありましたが、一番印象深かったのは、アルベルト・ジャコメッティの彫刻でした。

ここには彼の作品が多数展示されています。
彼の彫刻の人間は、極端に細い手足を持っています。どれもこれもが同じような棒のような手足を持っているので、どの作品も同じ様に見えてしまうのではないだろうかと思いますが、これが不思議と一つ一つ違った印象を与えるのです。そして、その細い人間には動きがあるのです。何とも魅力的だと感心しながらジャコメッティの作品を眺めます。
この細い手足は彼の神経を表している様にも感じ、写真家アンリ・カルティエ・プレッソンに撮影されたジャコメッティの表情を思いだします。写真の中の彼の目は、どこか神経質そうでした。

ジャコメッティの彫刻の後ろには、フランシス・ベイコンの何とも言えないグロテスクな「磔刑像の下の人物の為の3つの習作」が掛けられています。部屋の隅に立って作品全体を眺めると、ここは何とも個性的な部屋に仕上がっていました。

もうこれで終わりかなと思い、ギャラリー・ショップに移動。ところが、その向こうにまだ展示室が続いている事に気が付きました。足を踏み入れるとそこはターナーのてんこ盛り。彼特有のアイボリーホワイト系の風景画がどこまでも続いていました。
最初は、これがターナーの実物かと少し感動しましたが、どこまで行っても私には同じに見える風景画に、あっと言う間に食傷気味になります。疲れた足がもういいよと私に告げ、再びギャラリー・ショップに戻りました。

テートギャラリーのショップも他と同じくポストカードが充実しています。ポスターや関連グッズが並べられた広い店内を見てまわります。今日は雨だし、これからまだあちこち行く予定があるので、日本語の薄いパンフレットだけを購入しました。
では、いざ次の目的地へと思い、外を見ると、信じられないぐらいのどしゃぶり。 入館時には止みそうだった雨が盛大に降っています。これは間違いなくびしょ濡れになります。嫌だなぁと思いながら、時間がないので仕方なく傘の用意をします。

先に写真を撮れば良かったと言う友人にあやまり、これでは写真撮影は無理と諦めました。
叩きつける雨の中、もと来た道をさかのぼります。さすがに余り傘をささないらしいイギリス人も、ほとんどの人が傘を持っていました。レインコートだけでがんばっている人は、当然のことながら、目を開けるのさえ大変そうです。今日は何だかついていないなと思い、駅を目指して歩き続けます。

漸く例の地下道の入り口に辿り着きました。傘をたたんで中に入ります。
すると、やはり先程と変わらず寝袋こたつ男が、公共の通路でくつろいでいました。
おや?という顔をして、また「こんにちは」と日本語でしゃべりかけてきました。それに答えて軽く会釈します。すると今度は「さようなら」と言ったのです。何だか彼までもがテートギャラリーの一部だったような気がしてきました。
彼はここに住んでいるのだろうかと疑問を感じつつ、次のビクトリア・アルバート・ミュージアムに向かいました。

・上の写真はウェストミンスター寺院です。(著者撮影)

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