ロンドン旅行記
〜ビクトリア&アルバート美術館編・2〜


<10/11・午後>

大変オーソドックスなもの選んだにも関らず、思いがけない衝撃的な味で、すっかり閉じてしまった胃袋を抱えてカフェテリアを出ます。
失敗だったと思いましたが、これが噂に聞く料理のまずいイギリスの本来の姿なのかもしれないとも思い、今までが恐らく幸運だったのだろうという結論に達しました。

再び同じ通路を通り、展示室に戻ります。これからの予定を考えると、この広い館内をゆっくり見て回っている時間はありません。セレクトしていこうという事になり、まずはウィリアム・モリスのモリス・ルームを目指します。
イタリアのコーナーを抜け、「リフレッシュメント・ルーム」(軽食堂)と呼ばれるモリス、ギャンブル、ポインターの三氏が作った部屋に辿り着きました。この各部屋は通り抜けが出きるように繋がっています。
まずはモリス・ルーム。「緑の部屋」と呼ばれるここは、モリスらしく草花の模様で装飾された、美しい壁で囲まれています。照明のせいで、少し暗い印象を受けますが、全体に実に凝った造りになっていて、とても美しい部屋です。
隣の部屋側の壁に作られた出入り口から、隣のギャンブル・ルームに入ります。こちらは「緑の部屋」とは違い、ステンドグラスが多用され、光に満ちた美しい部屋になっていました。飾られている彫刻はギリシア風で、ゴージャスな感じを出しています。更に、先の部屋よりもかなり広いこの部屋は、カフェテリアにもなっていました。お茶と軽食といった感じですが、数人の人が美しいこの部屋を眺めながらお茶を飲んでいます。ああ、あんな昼食なら、ここで食べれば良かったとがっかりしてしまいました。この美しい部屋でくつろげたのなら、あの食事でも私は許した事でしょう。今度来る時には、絶対にここでお茶をしようと心に決め、残りの一部屋に移動しました。
ポインター・ルームは白と青のタイルで覆われており、ここがかつて軽食堂だったという事を一番連想させる部屋でした。

急がねばという事で、足早に次の目的地に移動します。
次は宝飾品(ジュエリー)を見に行く事に決め、階段をのぼりました。ところが、どういう構造になっているのか分からないのですが、中二階のような所までしかのぼれない階段をのぼってしまった様で、宝飾品に辿り着かないのです。

行き止まりに来てしまったとしか思えない状態に陥り、何でこういつもいつも迷うかなと悲しくなりながら、今来た階段を下り、違う階段を登ることにします。
今度はどうやら宝飾品のフロアーには辿り着いたようです。銀製品のコーナーを通り抜け、金属細工を見、武器と甲冑を適当に眺めてタペストリーまで辿り着きました。どうやら近づいて来たようです。もうそろそろだろうと思いながら通路を更に進むと、遂に宝飾品のコーナーが現れました。
やった、良かった見つかったと、喜んだのもつかの間。どうやら私たちは出口の方に来てしまったらしく、しかもそこはセキュリティーの為、鉄製の回転式ドアで厳重に守られていました。流れに逆行して無理やり入るのは不可能です。仕方がない、入り口に移動しようという事になり、地図を片手に再び歩き始めます。
ところが、入り口が見つからないのです!もう、迷路に迷い込んだ気分です。地図では簡単に行けるはずなのに、すぐに行き止まりになってしまうのです!もう、何が何だかで、だんだん自分がばかなんじゃないかと思えて来ました。もう駄目だと思い始めた時、目新しい通路を発見。とりあえず行ってみようという事になり、もしかすると、と期待しながら歩きます。すると、漸く入り口が現れたのです!

どうもこの美術館の地図の縮尺と、私たちの感覚にずれがあり、更に所狭しと並べられた膨大な展示品が私たちを惑わしているようです。
とにかく見つかって良かったと胸をなで下ろし、警備員のいる入口を入りました。

中は案外狭く、見学者が沢山います。入り口には展示されている宝石の分厚い解説書が数冊置かれていました。この百科事典の様な大きな本を手に持ちながら見学するのは、私には無理だろうと判断し、手ぶらで見て回る事にしました。

ここには、紀元前から19世紀のアンティークの宝石が沢山展示されています。両サイドのガラスケースに入った宝石はどれも見事なものばかり。細工が見事なものもあれば、石そのが見事なものもあります。
最初の部屋を見終わり、奥の部屋目に入った所に、人だかりが出来ています。何だろうと思ってみると、そこには信じられない大きさの宝石や、珍しい宝石が色々展示されていたのです。ガラス玉なんじゃないかと思わず疑ってしまうような大きさです。ファイヤーオパールやゴールデンサファイアといった珍しい宝石がここにはありましたが、私の目に焼き付いたのは、見事な大きさと光を放つキャッツアイでした。
今までこれほど見事なキャッツアイを見たことはありません。中央に入った模様は美しい光を放ち、これぞ正しく「猫の目」。ネーミングにぴったりの宝石です。
欲しいとは思いませんが(もちろん手に入るような代物ではありませんが)、いいものを見たという気分にはなって来ます。

装飾されていない石だけを展示した、人だかりの出来ているガラスケースを離れ、更に奥へ進みます。
この部屋には、明らかにどこかの国から来たというネックレスが多数展示されています。植民地から略奪して来たのか、買い取ってきたのかなどと考えながら、先ほど見た回転ドアの出口から外に出ました。

・上の写真はV&Aミュージアムの彫刻のコーナーです。(著者撮影)

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