ロンドン旅行記
〜ビクトリア&アルバート美術館編・3〜


<10/11・午後>

ウィリアム・モリスとジュエリーを見終わった今、これから何を見るのかという相談をします。部屋数145部屋、通路の全長13Kmというこの広い美術館を、満遍なくみて回る時間は残されていません。

せっかくイギリスに来たのだからと英国コーナーを見る事に決め、今度は迷わず目的地に辿り着く事が出来ました。
ここはチューダー、スチュワート、ジョージ、ヴィクトリアの各王朝の美術品が展示されています。色々な装飾品が展示されていますが、得に目を引いたのは、貴族達の部屋を再現した、美しい部屋でした。

見事なシャンデリア、美しい壁に天井。贅を尽くした部屋が次々に現れます。天蓋のついたベッドのある、青い壁に花と鳥を描いた部屋はさすがにガラスで覆われていましたが、ほとんどの部屋はロープを張られただけの開放的な展示がされています。
次々に現れる豪華に装飾された部屋は素晴らしいの一言ですが、同時にこんな派手な部屋は落ち着かないし、こんな中では目を閉じた途端、派手な壁紙の残像が浮かび上がってきてなかなか眠れないだろうとも思います。

詳細に見ていたら何時間もかかる英国コーナーを風のように駆け抜け、ステンドグラスのコーナーに出ました。とりあえず下におりる事にして一階に移動します。
次に、ドレス・コーナーに入りました。ここには16世紀半ばから現代までの、ヨーロッパのコスチュームが展示されています。一周すると、ドレスや洋服の変遷が一目で分かるようになっているのです。

白いマネキンが各時代の髪型をし、美しい衣装を纏ってガラスケースの中でポーズを取っています。レースとリボン、そして見事な刺しゅうに飾られたコスチュームが次から次へと登場します。
時代によって一番変化しているのは、ドレスのスカート部分です。ただ単にボリュームがあるというのではなく、ヒップ部分が持ち上がっていたり、以上に横に広がっていたりと、とにかくバラエティーに富んでいるのです。
これは動きにくいだろうと驚いたのは、18世紀に貴族女性の正装に使われた、「マンチュア」と呼ばれる横長の長方形型をしたスカート部分(正確にはパニエの上に羽織るローブ)でした。
これは実に奇妙な感じで、ここに展示されているマンチュアの横幅は、何と1.5mもあるのです。横幅1.5mの長方形の、腰の位置まで来る箱に、自分が入っているところを想像してみて下さい。この時代の貴族の女性たちは、そんな不自然なドレスを着ていたのです。さぞかし動きにくい事だったでしょう。本当に場所ふさぎなこのドレス。
細い道では、カニ歩きを強いられるでしょうし、座るのもさぞかし大変だったと思います。それに、かなりの重さだとも思います。何せ、内部はパニエですから、金属の針金やクッションが入っているはずです。

人間の考える物はおもしろいなぁと感じているうちに、あっという間に現代まで来てしまいました。
昔に比べると、何と機能的に出来ている事でしょう。今の時代に生まれて来て本当によかったと思い(貴族以外の庶民のものでも、窮屈そうだったのです)、今度は博物館の入り口近くにある彫刻と建築のコーナーへ移動しました。

ここの天井はひときは高く、天井からは自然光が差し込んでいます。そしてそこにはギリシャ、イタリア風の彫刻が所狭しと並べられていました。
よくこんな大きな壁ごと、ここへ持って来たなと思う大きな展示物もあります。凄いねと辺りを見回しながら、どんどん奥へ入っていきます。すると、胸像が横にいくつか並んだ所に親子らしい3人組が、あれこれ話しながら立っていました。
どうしたのだろうと見ていると、一人がカメラを持って離れ、他の二人が胸像の顔と顔の間だから自分の顔を出しました。どうやら胸像と一緒に写真を撮る相談をしていたようです。
胸像、人、胸像、人、胸像という並びで写真撮影を終えた彼らは、嬉しそうに笑って次の場所に移動して行きます。それを眺めていた数人の見物人もにやにや。出来上がった写真を私も見てみたいと思い、私たちもその場を後にします。

一応ざっとではありましたが、見たいものは見たという事にして、ミュージアム・ショップに寄ってからここを出ようという事になりました。
充実していると評判のショップに入ります。
まずは想像していた通り、ウィリアム・モリス関連のグッズが多数置かれています。傘やマグカップ、便箋やカードなどがありました。
今は10月という事で、クリスマスの飾りも色々並んでいます。オーナメント、キャンドル、エンジェルの飾りなど、思わず欲しくなるようなクリスマス・コーナー。そして何故ここにあるのかが分からない、ピーター・ラビットのコーナーなどなど。広い店内に魅力的な商品が所狭しと並んでいました。
中には高価な物もあり、展示品の精密なレプリカや、宝石を使った装飾品もガラスケースに入って並べられています。 ここはグッズもおもしろいと感心しながらも、結局は図録だけを購入。
そして雨が小降りになったロンドンの街へ、再び出て行きました。

・上の写真はV&Aミュージアムの英国のコーナーです。(著者撮影)

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