ロンドン旅行記
〜チャイナ・タウン編・2〜


<10/12・夕方>

冷えた指には触れないほど熱い器を持ち、レンゲを右手に持ちます。
器の中には竹の子、エビ、そしてとき卵などが入っていました。とにかく、具だくさんのスープです。そっとレンゲでスープをすくい、口に運びました。おいしいっっっっっっっ!!!!!!!
一口飲んだとたん、幸福感がどっと押し寄せてきました。冗談抜きに目がうるうるしてきます。この温かさといい、味といい、もう、もう絶対ロンドンでは中華だっっっっ!と心の中で叫びました。

「ああ。おいしい」と言いながら一口一口楽しみます。
食べすすみながら、このおいしさは「うまみ」だと思い、この「だしの文化」というか、「うまみ」といった味はアジア独自の物なのかも知れないと思いあたりました。久々のアジアの味に感動している私は、やっぱりアジア文化圏で育った人間なんだなぁとしみじみしてしまいます。漸く体が温まった頃、スープの残りもわずかになっていました。
ああ、終わってしまう・・・と未練を感じながら器の底を眺めていると、頼んだ料理がやってきました。

全ての料理がテーブルに並べられました。思ったより白い色をしたチャーハン、フライメンにたっぷりかけられたあんかけの五目焼きそば。そして長い茎を切らずに、横たえられたチンゲンサイの炒めもの。
久々のご飯がうれしくて、まずチャーハンにとりかかります。うーん、えびもぷりぷりしていておいしい!焼きそばはフライメンがちょっと油っぽくてギタギタした感じ。
チンゲンサイの炒めものは一緒に入っている厚揚がうれしく、食べた途端「お豆腐だ〜」と喜んでいました。チンゲンサイは炒め過ぎず、しゃきしゃきしています。智子さんのお薦めの店だけあっておいしいなぁと、どれも素朴な料理なのですが感心して食べていました。

三人で3つの料理を食べる事数十分。一人一皿の計算で無理はないのですが、なかなかなくなりません。

「いくら食べても、なくなりませんね」
と言って更に食べ続け、結局少し残ってしまいました。見た目より多かった料理に驚き、周りの人はどうなんだろうとリサーチを始めます。
皆楽しそうに話し、多いに食べ、ちゃんとクリアーしている様子。向こうのテーブルに座ったイギリス人らしきカップルは、二人で何と5皿を軽くクリアー。更に何やら頼んでいます。
うーむ、恐るべき胃袋。でも、何故痩せているのだろう?疑問を持ち、しばらく眺めてしまいました。

食事が終わり、智子さんがお茶を頼んでくれます。ウェイターがすぐにやって来て、湯のみ茶わんをテーブルの中央に置き、ポットを持ってかまえました。
入れてくれる様子を眺めていると、何と彼は茶わんの上でポットを傾けてお茶をそそいだまま、ぐるぐると回し始めたのです。もちろん、茶わんに入らなかったお茶は布のテーブルクロスの上にこぼれ落ち、テーブルクロスに染みが出来ていきます。
中国人って、細かい事は気にしない人達なのかしらと、初めてのお茶くみ現場目撃に、衝撃を受けました。入れ終わるとウェイターはポットをどんとテーブルに置いて去って行きます。
うーむ・・・こういう扱いを受けている割には、ここのテーブルクロスはきれいだと感心してしまいます。

お茶を楽しみ、大当たりだった中華料理に、今度来るときにも絶対来よう!と心に決めます。一人頭£8.5を払い、チップを置いて楽しい夕食が終わりました。

再びコートを身に纏い、覚悟を決めて外に出ます。相変わらずチャイナタウンは賑やかく、夜の寒さも増してきていました。
先ほど通った坂を下り、ニュース・スタンドで立ち止まります。道路に積み上げられたサンデー・タイムズの束を拾い上げ、売店のおじさんにお金を渡します。日本の朝刊4日分か5日分ぐらいある束を抱えて、ストリート・パフォーマーが大勢居る場所に向かいます。
風にあおられながらも、彼らは自分の舞台で演じています。中には薄いピエロ風衣装を纏ったパントマイムの人もいて、見るからに寒そうです。彼女はこの風の吹く中、ブラウス一枚程度の洋服で瞬きすらせず、じっと動かず立っているのです。
その精神力に脱帽というよりかは、何故この寒さに耐えられるの?という疑問が湧いてくる程の寒さでした。

賑やかい場所を通り抜け、地下鉄レスタースクエアーの改札口に下り立ちます。智子さんとの別れの時がやって来ました。お礼をいい、パスポートの事を明日報告する約束をします。
「見つかるといいですね」
と最後まで励ましてくれて、彼女はプラットホームに降りて行きました。長く楽しい一日は終わり、現実がそこまで戻って来ようとしています。明日の朝10時。その時に全てが決まります。私の風邪は、くるところまで来ていました。

・上の写真はウィンザー城の内部です。(著者撮影)

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