ロンドン旅行記
〜リージェント・ストリート編〜


<10/13・昼>

全く呼び出し音を発しない紺色のポケベルを、テーブルの上に置いてにらんで待つこと数十分。そこに、インド系らしい初老の男性二人が現れました。
「航空券を買いたいんだが」
何故私に言うの?と思いつつも、
「まずはインフォメーションカウンターへ行って下さい」
と答えます。ところが、何やらぶつぶつ二人で話しあい、側にあるカウンターへ移動しました。すると、そこでもやはり
「まずはインフォメーションカウンターへ行って下さい」
と言われ、漸く彼はインフォメーションへ移動したのです。立っているのもやっとの状態の体を支えながら、人を疑うぐらいなら最初から聞かないでよ!と、心の中で毒づきます。

漸くロビーの椅子が開いたので、そちらに移動しました。クッションのいいソファーに座り込むと、もう立てないという感じになってしまいます。それにしても対応が遅い・・・
もう20分は待っています。いらいらが激しくなる頃、漸くベルが鳴り、カウンターの番号が表示されました。急いで立ち上がり、二階へ移動します。

目指すカウンターには、金髪のストレートで前髪をカチューシャであげた、青い目のきれいな女性が座っていました。
まずは、土曜日の夜にパスポートと航空券を劇場で紛失したと告げます。そして、大使館で再発行の手続きをしてもらうようにと言われたと言いました。すると、
「何故、土曜日になくして今ごろ来るの!今は月曜日よ。何故昨日のうちに来ないの!」
と怒られてしまいました。これで私が怒られるのは二度目です。コンシェルジュに続き、英国航空の職員にまで、落とした友人ではなく、私が怒られてしまいました。
「だって、落とし物で出てくる事が考えられたから。昨日は劇場が閉まってて確認出来なかったのだもの!」
必死で説明し、とにかく再発行して欲しいと頼み込みます。
「でも、すぐには出来ないの。まず、その無くしたチケットのディテールが分からない事には」
「ディテールって?」
「何処で、いくらで、いつ購入したかが分からないと駄目なの。だから、まずあなたが購入した日本の会社に連絡を取って確認出来ないと再発行は出来ません」
さっと腕時計を見ると、もうお昼を回っています。時差を考えると日本は夜の8時をまわっています。もう、営業時間を過ぎていました。絶望的・・・
「とにかく、再発行するにしても連絡が取れない限り手続きがとれません」
ここまで悪い条件が揃ってしまうなんて、最悪だとよろけそうになります。
「とにかく、再発行の手続きをしているという事を書いてもらえますか?」
と頼むと彼女が書類に手書きで書き始めました。 差し出された紙を友人に渡します。
「とにかく、連絡が取れるまでどうしようもないから待って下さい」

カウンターを離れ、友人にこの書いてもらった紙を持って日本大使館にもう一度戻るようにと言います。その前に写真が必要という事で、このビルの地下にあるショップに下りて行きました。
英国航空の地下にはトラベルグッズとトイレ、スピード写真があります。そしてソファーも通路に置いていました。 これ幸いと、熱を帯びた体をソファーに静めます。
「航空券の事もあるし、熱もあるから私はここで待ってる。日本大使館は日本語だから大丈夫でしょ。さっきもらった書類を持って受付に行って。とにかく、頑張って渡航書を出してくれるようにねばって来て」
と友人に告げました。
「あの、写真撮るのに小銭がないんだけど、かしてくれる?」
小銭の用意をしながら更に続けます。
「ここで、3時に待ちあわせ。それでいい?ここで座って待ってるから」

写真を撮り終えた彼女の背を見送り、ソファーでぐったりとなります。熱がまた上がりはじめたようです。
数分じっと座っていましたが、考えるにつけじっとしていられなくなり、又、朝の電話で母が言った「解熱剤」が今の私には必要だという結論に達し、お昼御飯と薬の為に立ち上がりました。階段をのぼり、英国航空のビルを出ます。そう言えば、まだお土産も全く買っていなかったと思いだしました。
体はだるく大変なのですが、お土産はこれから時間が出来るあてもなく、今この時にしか買えないし、絶対に必要だと気力でお店を見て回る事にしました。

まずは英国航空の向かいにある「パスト・タイムズ」に入ります。店内には以前から個人輸入しているので手許にある、カタログで見たのと同じグッズがずらりと並んでいました。
店内ではリュートと声楽といった古楽風の音楽が流れています。ざっと品物を見てまわり、ミュシャとウィリアム・モリスのカレンダーを購入。

次に隣のイングリッシュ・テディ・ベア・カントリーに入りました。店内はテディ・ベアで埋め尽くされています。よろよろしてる変な客(私)に、店員がテディベアクッキーの試食を進めてきました。
「結構です」
とつぶやき、断ります。自分でも何が私を駆り立てて、お土産さがしをさせているのか分かりませんが、取りつかれたように品物を見てまわりました。
ここでは「くまのプーさん」の原画のポストカードとテディの柄のマグカップを購入。これは友人へのお土産です。
精算をすませると、茶色の小さな紙袋に品物を入れて渡してくれました。何の変哲もない茶色の紙袋に、デディベアーが描かれています。かわいいと思い、少し心が和みました。再びリージェント・ストリートに出て横断歩道を渡ります。そして今度はオックスフォード・サーカスに向けて歩きだしました。

・トラブル中につき、写真を撮っている場合ではありませんでした。
上の写真は本文とは関係ありませんが、シャーロックホームズ博物館です。(著者撮影)

HOMEに戻る
ロンドン旅行記準備号に戻る
ロンドン旅行記インデックスに戻る