ロンドン旅行記
〜買い物編・1〜


<10/13・午後>

交通量の多いリージェントストリートをピカデリーに向かって歩きながら、友人に尋ねました。

「それで、何故今朝の電話ではないと言われた物が、今になって出てきたわけ?」
「それがね」

彼女がパスポート入りのセーフティーバッグを、劇場のトイレに置き忘れて来た日、もう一人の日本人(ロンドン在住)が定期券を落としていたのです。
友人の落としたバッグは次にそのトイレを使った人が、すぐに劇場の事務所に届けてくれたそうで、奇跡的にそっくりそのまま、何も無くならずに落とし物として預けられていました。
そして月曜日。もう一人の落とし物をした人も電話で問い合わせをしてきたらしく、その人は事務員から落とし物が見つかったので取りに来るようにと言われたそうです。しかし、実際にはその落とし物は友人のもので、定期券は紛失していたのでした。

何故こんな行き違いが起こってしまったのか。それは名前に原因がありました。
もう一人の日本人の名前は「ようこ」で、友人は「ゆり」。イギリスに「Y」で始る名前は少ないらしく、また日本の名前には馴染みがないので、どうやら事務員には見分けがつきにくかったらしいのです。
そして、劇場に落とし物を取りに来た「ようこ」さんが実際にそれを見て、私のではないという事になり、劇場から警察へ連絡が入ったのでした。そして、すぐにその情報が日本総領事館に入ったのです。

「もうね、もう数分で渡航書の手続が出来ない時間になるぎりぎりで、電話が入ったの」
首の皮一枚でつながたというか、何というか。とにかく危ないところでした。
「でね、急いで劇場に行ったら、そのようこさんがまだ居て、通訳してくれたの」
どこまであなたは運がいいんだ!と思ったのは言うまでもありません。
「でね、劇場の人が定期券無くした人には結構冷たかったのに、私には『よかったね、よかったね』って言ってくれて、それで私、ああ、私って凄いもの落としちゃってたんだって思って」
もう、こうなるとトホホです。

「それにしてもね。総領事館で、身元確認するのに親に電話するって言ったから、居ないって言ったら、親戚に電話するからって言われたの。でも、親戚の家の電話番号知ってる訳ないじゃない。ねぇ。全く」
あなたにはそう言って怒る権利はないぞっ!とは言えず、
「まあ、普通はそうよね。それにしても、治安が比較的いいとは言え、パスポートと航空券、それに日本円まで全く手付かずに戻ってくるなんて、奇跡よね」
と答えました。日本でもこんな事は有りえないと思います。
思わぬ展開に安堵し、心の中でこれで一生"Japanese Embassy"(日本大使館)と"reissue"(再発行)の単語は忘れないだろうと考えていました。

トラブルが解決したので、今残された時間でしなければならないのは買い物です。本来なら今日は大英博物館で一日過ごす予定でしたが、今となってはそれは出来ません。頭痛は少しましになったものの、相変わらずしていますがこうなっては痛いといっている場合ではありません。歩きながら友人に問いかけます。
「お昼は食べたの?」
「ううん。でも、食べなくていい。もうじき夕食だし。それより、私もお土産探さなきゃ。会社の分とか買わなくちゃ」

残された時間は約2時間。素早くセレクトしていかなければなりません。ピカデリーの駅に向かう途中、PringleやJAEGERなどのニット製品のセールをしているお店を発見。
早速入り、落ち着いたワインレッドのセーターに目を留めます。母のお土産にしようと思い質問したところ、男女兼用との事。免税とセールでかなり安くなるので、迷う事なくJAEGERのニットを購入。免税手続きを取って店を出ます。

地下鉄ピカデリー線でコヴェントガーデンに向かい、下車した所でこれからの事を提案しました。
まず、私はホテルに荷物を置きに行きたいと告げます。と言ってももう時間が十分でないのでホテルには私一人が戻る事にし、アップルマーケットのボディーショップの前で6時に落ちあう事に決めました。
急いで買い物をするには別行動の方が効率的ですし、慣れて来たこの場所で、まさか迷子になる事はないと判断した結果でした。

「ところで、トラベラーズチェックは使えますかってどう聞いたらいいの?」
「そうね・・・トラベラーズチェックOK?でいいんじゃない?簡単で通じやすいと思うけど。とにかく実物を見せればどうにかなるわよ。カードもね」
必ず6時にボディーショップねと念を押し、私一人がホテルへ戻りました。

・上の写真は本文とは関係ありませんが、V&Aミュージアムです。(著者撮影)

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