ロンドン旅行記
〜チェックアウト編〜


<10/14・朝>

午前6時。友人の目覚しが鳴りだします。泥のように眠っていた私の耳にデジタル音が届き、重たいまぶたを開けます。風邪の熱は完全に下がったようですが、症状は相変わらず続いています。
とうとうロンドン最後の朝を迎えました。まだ薄ぐらいロンドンの街を窓からのぞくと、幸い天気は曇り。
雨だけは避けたいと思っていたので、ほっと胸をなで下ろします。相変わらず沈みきっている友人も目を覚ましていました。

「おはよう。雨、降ってないみたいよ。良かったね」
一晩眠ったからといって、気分が変わるという事はなかったらしく、相変わらず意気消沈しています。
「おはよう。天気、良かったね」
最後の最後まで朝食を食べに行く事もなく、身支度を整えます。
機内に持ち込むものを揃え、その中へついでにお菓子も入れました。結構フライトの途中、お腹がすくものなのです。最後の最後で、結構スピーディーに支度が終わり、いよいよ出発です。

24時間チェック・イン、チェック・アウトが出来るというフロントに下りるべく、エレベーターを待ちます。さすがに早朝のせいか、今日はスムーズにエレベーターがやって来ました。ガラガラとスーツケースを引きずり、エレベーターに乗り込みます。
「朝はすいてて良かったね」
と話しながら一階へ。
下りた所に、例のタクシーを呼んでくれたコンシェルジュが立っていました。

私たちの顔を見ると、「ああ、あの時の」という表情をしました。
「おはよう」
「おはよう。あの、パスポート、ちゃんと見つかったんです」
と言うと、コンシェルジュの目が真ん丸になりました。
「えっ!本当に?それは良かった。どこで?」
そう言って笑う表情には、見つかるとは思っていなかったと書かれています。
話し出すとややこしく、長くなるので簡単に答えました。
「警察に届け出があって」
「そうか。それは良かったね。それで、これからヒースローに行くの?」
「そうよ」
「地下鉄で?」
「そう」
「この荷物で?」
そう言って彼は私のトランクを持ち上げてみました。大袈裟に重いというリアクションをします。

「重いよ、これ。タクシーを使った方がいいよ」
「大丈夫よ」
「でも、君たちは女性なんだよ。無理だよ」
「大丈夫」
そんなやりとりを続け、なかなか決着がつかないので
「とにかく、先にチェック・アウトしてくる」
と言い残し、友人に荷物を見ていてくれるように頼んでから、一人フロントに向かいました。

いつもなら混んでいるフロントも、さすがに今はすいています。あっという間に精算を済まし、友人の待つ場所へ。そこにはまだコンシェルジュがいました。
「空港まで、タクシーで行くことを薦めるよ」
友人の方をむき、
「どうする?」
と答えは分かりきっているのですが、聞いてみました。
「地下鉄で行こう」
「そうよね」
コンシェルジュに向き直り、
「地下鉄で行くわ。大丈夫、やってみる」
「そうかい?それじゃ、さようなら」
「さようなら」
お互いに手を振り、最初にこのホテルに来た時に使ったドアをくぐります。

外に出ると、朝の冷たい空気が私を取り囲みました。霧も少しでています。
ガラガラとスーツケースに取り付けられた車輪が辺りに響きます。さすがに駅への道はしっかり覚えたので、今日はスムーズに移動。ストランドの平らな道をしばらく行くと、右折する場所が見えてきました。
ここからが問題の上り坂です。来るときにも下り坂で苦労しましたが、上り坂はもっと大変かもしれません。と、その時、霧の中から男性が出没。

「空港までタクシーに乗らないかい?安いよ」
まあ、またタクシーの勧誘!ややこしくならない内に、
「地下鉄で行くの!」
と大きな声ではっきり言います。
「安いよ!」
「英語、わからないから」
と、説得力のない返事を返して上り坂への挑戦を開始し始めました。

両手でスーツケースを押して坂道をのぼっていきます。
朝なので人どおりはなく、薄ぐらいので、少し不気味さを感じさせますが、荷物を運ぶには最適の状態です。
しかし、この道。ところどころに石畳があるのです。
アップルマーケットを抜けるまでが、まず大変なのです。石畳にガタガタ、ガタガタとスーツケースが揺れ、それに合わせてそれを押す私の体も、ブルブル、ブルブルと震えています。スーツケースが壊れたら悲惨だなぁ・・・と不安になりながら押して押して、押しまくります。

さっきまで寒いと感じていたのに、アップルマーケットを抜ける頃には汗ばむほどになっていました。
思ったより早いペースで突き進み、あっという間にピカデリー線コヴェント・ガーデン駅に到着。
ここまで来れば、後は楽です。やった、着いたという達成感を感じつつ、チケットブースへ。
「ターミナル4まで、2枚下さい」
スムーズに改札を通り抜け、おなじみのエスカレーターに乗り込みます。心配していたラッシュもまだ始っていません。次の電車の表示を見るとターミナル4行き。
今日はとってもスムーズだとほっとし、電車を待ちました。

・上の写真は、自然史博物館のアザラシです(著者撮影)

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