2005年の山旅 (5月〜8月)



妙見山(但馬)


標高1,139m。八鹿、関宮、村岡の境界にあり矢田川、日置川の分水嶺をなしている。江戸時代からの信仰の山であり、ザゼンソウの自生地があることで名高い

【登 山 日】2005年5月8 日(日) 晴れ 【メンバー】千日山歩渉会 (15名)
【コースタイム】 大ナル登山口10:25…町境尾根11:30…妙見山山頂11:40〜12:35…妙見峠13:15…名草神社13:50〜14:10…大ナル登山口14:25

千日山歩渉会としては初めてマイクロバスを利用しての山行。林道に入ったとたん通行止の表示があったがドライバーが「行けるところまで行きましょう」と、狭くて曲がりくねり崩壊箇所もある道を走ってくれて、予定通り大ナルに到着。キャンプ場を通り抜け、クマザサの切り開きの中を緩やかに登る。しばらくヒノキ林に木馬道が続く。「植物歳時記の道」という名にふさわしく色んな樹木の名前を書いた木札が下がる。30分程で背の低いブナ林になる。「ブナを植える会」が5年前に植えた苗木が元気に育っている。若葉を通して落ちる陽の光で、顔まで緑に染まりそうな五月晴れである。汗を流して急坂を登ると尾根道はやや緩やかになり、クマザサの切り開きの中を行く。再び急登になるが町境尾根にでると山頂は意外に近かかった。大きな方位盤のある山頂で昼食。人の少ない静かな山である。
 妙見新道の急坂を下る。石原沼らしい水溜まりで、全員目を皿にして探すがザゼンソウは見つからない。ブナ林の中を緩やかに下り、少し雪の残る林道脇のフキノトウ、タラの芽など春の香りを土産に摘みながら、のんびり歩く。古い参道に出会うと、二体の石地蔵と十三丁を示す町石が立つ妙見峠である。辺りはエンレイソウの大群落。町石は名草神社までずっと続いている。大きなきなスギが立ち並ぶ暗い道は自然に名草神社の境内に入っていく。ザゼンソウの群落は社務所手前の山側斜面にあった。大きな葉の下にチョコレート色の巻いた苞が見える。もう花期には遅すぎたようだ。入母屋作り、こけら葺きの拝殿を潜り抜けて本殿に詣でる。(ともに県文化財)大鳥居をくぐると美しい朱色の三重塔(国重要文化財)がある。広い車道を歩いて大ナルに帰った。

前鬼〜太古ノ辻〜持経ノ宿〜行仙岳(奥駈道6)


奥駈第六回目は前鬼から太古ノ辻に登り南奥駈道に入る。いくつものピークを越えて無人の持経ノ宿で一泊。更に南下して行仙岳を越えるロングコースだったが、幸い好天に恵まれ、シャクナゲやヤシオツツジなど美しい花々に慰められながら予定通り踏破することができた。    

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【登 山 日】 2005年5月13 日(金)〜15日(日)
【メンバー】 JAC関西支部  (会員外参加を含め 計 18名)

高野山町石道(奥の院〜上古沢)

【登 山 日】 2005年5月21 日(土)【メンバー】 JAC関西支部3名、ペンギン夫婦

JAC支部70周年事業記念山行、二回目の下見。ケーブル、バスと乗り継いで奥の院バス停に着いた時は10 時近かった。善男善女で賑わう参道を進み御廟にお参り。帰りは戦国武将の墓を見たり、町石を確かめたりしながら一の橋に出る。壇上伽藍へ山上三十六町の町石を数えて歩く。今日はたまたま「御大師さん」の日で、一の橋ではお茶の接待、そして観光協会を過ぎたところのテントでは、開いた鏡餅をザックが重くなるほど頂いた。 大門で少し休み(11:20〜30)、前回登ってきた道を逆にたどる。四里石の先の展望台で昼食。今日も竜門山がよく見えた。矢立茶屋から笠木峠までの登りが、急坂もあり案外長く感じた。本当の峠は分岐から少し北寄りにある。ゴルフ場を抜けてからの登りはそれほどでもなく、案外楽に二つ鳥居へ着いた。ここで 15時近く。大休止してコーヒーを沸かす。
 八町坂といわれる急坂をどんどん下る。里山の感じから山麓の田園風景に変わり、標識をたどりながら丹生都比売神社を目指す。やがて濃い森影に鳥居が見えた。 日もだいぶ傾いたので、慌ただしく本殿にお参りする。神社からは六本杉の天野峠に出るのが一般的だが、時間節約のために直接、古峠に登ることにする。社務所の若い神官に教わった田圃道から山に入り、ヒノキ林の中を登る。溝状になった道はかなりの急坂で、少し荒れ気味である。勾配が弱まると町石道の通る古峠に出た。 ゆっくり休む間もなく、上古沢へ向かって下る。 白い花の咲くミカン畑を通り、集落の外れに来ると正面の山腹に駅が見える。その間に不動谷川と国道がV字状になった山あいの底を通っているので、いったん下って登り返さなければならない。下りきって橋を渡ると長い階段で朝からの長い行動で疲れた身体に、この登りは少し応えた。17過ぎ乗車。下りが多いハイキングコースと甘く見ていたが、なかなか歩き応えのあるロングコースだった。

行仙岳〜笠捨山〜玉置山〜本宮(奥駈道7)

昨年4月から始まったJAC関西支部70周年記念行事・奥駈道山行は、第七回目にして初めて雨の灌頂を受けた。しかし、玉置神社で泊まった翌朝はすがすがしい好天となり、無事、本宮に完遂の報告をすることができた。 

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【登 山 日】 2005年6月11 日(金)〜13日(日)
【メンバー】JAC、会員外を含め計 17名


尼ヶ岳〜大洞山

【登山日】2005年6月19日(日) 晴れ 【メンバー】千日山歩渉会(14名)
【コースタイム】倉骨峠09:40…大タワ 09:50…尼ヶ岳10:20〜10:35…倉骨峠11:10〜11:20…大洞山(雄岳)11:57〜12:07…大洞山(雌岳)12:23〜12:30…分岐12:35    〜13:05(昼食)…倉骨峠14:10



太郎生から倉骨林道を登る。峠の広場は一台の車もなく、貸し切り状態。 まず尼ヶ岳に向かう。階段を交えた標高差300mの急坂だが、ヒノキ植林の中は風が通り、ひんやりして気持ちがいい。小タワからはススキ原のカンカン照りとなり、苦しい登りを終えて三等三角点の開けた山頂に立つ。やや霞んではいるが曽爾の山々、青山高原がよく見えた。しばらく展望を楽しんで峠に下る。次に大洞へ向かう。スギ植林の道を三ノ峰に登ると、尾根道になる。いったん林道に出て、四ノ峰から急登で雄岳三角点にたつ。他に誰もいない静かな山頂である。
 正面に見える雌岳に向かう。雌岳山頂からの展望も曽爾の山々、雄岳、尼ヶ岳と申し分なかった。十分楽しんで少し引き返し、植林に入った所で昼食にする。予想通り涼しい風が吹き通り、天然のエアコン。ヤッケを着る人までいるほど涼しかった。東に石段を下り、しばらく舗装路を歩いて自然歩道に入る。この道は日陰ではあるが、思ったより風がなく少し暑い。大雨で少し荒れているように思った。峠に帰り、コーヒータイムを楽しんで今日の行程を終了。しばし下界の暑さを忘れた納涼例会だった。

竜王山

【登山日】2005年6月26日(日) 
【コースタイム】長岳寺09:45…竜王山11:05〜11:30…奥の院11:48…長岳寺12:37


アジサイの咲くこの時期は寺が有料になる矢田山を敬遠して、竜王山へトレーニングに行く。長岳寺山門をくぐって境内途中から左の山道に入る。柿畑を抜けて地道になる頃には、すぐ後ろに来ていた数人のグループの話し声も聞こえなくなった。 U字状にえぐられた切り通しのような道を行くと、左側に石のお地蔵さん。さらに雑木林の中の道を登る。蒸し暑くて額から汗が滴る。奥ノ院からの道と合わさると、山腹を捲く感じですぐに車道に出た。展望台を過ぎて階段を登り、南城跡の山頂に立つ。今日はあまり展望はなく、大和三山もぼんやり霞んでいる。サクラ植林のある斜面の道から奥の院に下る。お不動さんを拝み、古墳群の中を下る。前に通ったのは台風の後でかなり荒れていたが、整備が進み古墳も見学しやすくなった。どんどん下って櫛山古墳の横に出て、山辺の道を長岳寺に帰る。

薊 岳

【登 山 日】2005年7月17 日(日) 曇り    【メンバー】千日山歩渉会 15名
【コースタイム】大又・笹野神社09:30…大鏡池上の稜線11:45〜11:50…小屋ノ尾頭12:15〜12:40(昼食)…雌岳13:15…雄岳<1406m>13:20〜13:30…明神平14:50〜15:10…林道終点16:20…駐車地点16:35


歩き始めて20分でようやく山道に入り、スギやヒノキ植林の中の単調な登りが続く。全く風がなく湿度も異常に高く、たまらなく暑い。何時になく調子が悪い人が出て、休んで水分を補給したりしながら、ゆっくり時間をかけて登る。
古池辻で右折して山腹をジグザグに登り尾根に出る。知らぬ間に大鏡池を捲く形で稜線に出てしまい小休止。更に尾根上の登りが続く。小屋ノ尾頭のピークに登ると、左手の大又川の方から冷たい風が吹き上げてきて、人心地がつく。長丁場なので、ここで一回目の昼食。ヤマガラの声が聞こえる灌木帯を抜けて、痩せた岩稜をアップダウン。ミヤコザサの中のピーク、展望のない雌岳を通過、すぐに雄岳の頂上に立つ。細い岩稜に並んで腰を下ろす。残念ながら靄がかかったように展望が悪い。
 ミズナラや、ヒメシャラ、そして見事なブナの原生林の中を、ゆったりした気分で歩く。1334m峰、前山と少し登り返して笹原の三ッ塚に来る。見下ろす明神平には霧が流れていた。斜面全体を埋めるようなバイケイソウの大群落の中を下り、あしび山荘前の四阿で二度目のランチタイム。明神谷への道は少し荒れていて、雪のあった時の方が歩きやすかった。冬の氷瀑とは又違った風格で堂々と落ちる明神滝を眺め、キワダサコまで何度か谷を渡り返す。殆ど壊れた旧あしび山荘の下から木のハシゴで河原に下り、岩を伝って谷を渡る。大又林道沿いの清流や滝を見ながら駐車地点に帰った。
蒸し暑さでかなり体力を消耗したが、休憩を含めて7時間半、歩行距離約15q、標高差約1000mの行程は、来月の槍ヶ岳行きに備えて格好のトレーニングとなった


白 山 (平瀬道)

【登 山 日】 2005年7月28 日(木)〜29日(金)
【コースタイム】
28日 平瀬道登山口09:10…大倉山12:10〜12:20…カンクラ雪渓13:55…室堂15:15
29日 室堂04:30…御前峰頂上05:15〜05:40…室堂06:15〜07:45…大倉山避難小屋 09:00〜09:05…大倉山09:08…大白川へ2q標識10:00…登山口11:00 

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高野三山

【登 山 日】 2005年8月5日(金) 晴れ  
【コースタイム】中の橋駐車場08:45…浄め橋09:00…摩尼峠09:30…摩尼山09:45〜10:00…黒河峠10:22…揚柳山10:40〜11:05…子継峠1125…林道11:50…転軸山12:05〜12:15…一の橋13:00 …中の橋駐車場13:25

今年三度目の高野山、夏休みのせいか朝から車も人も多い。奥の院へ続く杉並木の参道に入ると、ひんやりした霊気が漂い、アジサイの青紫色が涼やか。御廟を拝み玉川を渡り林道を登る。摩尼山登山口の標識から山道になり、急に勾配が強まる。沢沿いの急坂を摩尼峠に出た。山腹道は終わり、急な木の階段が続く。二人ともすぐに全身汗まみれ。摩尼山山頂には樹木が多く、展望は全くない。ここまで3人にあったが、後は下山するまで誰にも会わない静かな山歩きとなる。ゆるやかな尾根道を行くと、咲き終わったササユリが点々と続く。黒河峠から急登になり、いったんゆるんで再び階段道を頑張ると揚柳山。三角点は揚柳観世音の祠後ろにあった。山頂は広いがブナなどの樹木に囲まれて森厳としている。少し早いが涼しいので昼食をすませる。
 いったん下ってスギ林の中を登り返し、木のベンチと道標があるピークから、かなり急な階段道を下る。下りきった所はT字路になっていて、「左奥の院、右・久保、北又へ」「粉種(子継)道」の標識がある子継峠である。左へ沢沿いに下り、小さな木の橋を何度か渡って草原に出た。容赦のない陽光が照りつける。林道を横断してスギ林の中の階段を登る。転軸山山頂には弥勒菩薩の祠がある。奥の院へ下る道を見送って、女人道の通る南西尾根を転軸山森林公園に下る。急な坂道から薄暗い林の中に入り、池の横を通ると急にバスの通る舗装路に出た。暑い舗装道路をうろうろ歩き、霊園事務所横の橋を渡ると供養塔が並ぶ区域に入った。探していた河口慧海師の供養塔は、一の橋近くにあった。五輪塔で、横に由来を記した銅板を埋め込んだ大きな石標がある。 参拝を済ませ駐車場に帰る頃に雨が降り出した。

大台ヶ原

【登 山 日】2005年8月10 日(水) 曇ときどき晴 
【コースタイム】大台ヶ原駐車場08:20…シオカラ吊橋08:45…大蛇ー 09:30〜09:45…牛石ヶ原09:55…尾鷲辻10:15…正木ヶ原10:25〜10:30…正木嶺10:50…日出ヶ岳11:00〜11:10…駐車場11:45  

駐車場で車のドアを開け、肌寒いほどの涼しさに驚く。時計と逆周りに歩く。シオカラ谷へ下る笹原の道は整備されて幅広くなったかわり、両側に太いロープが張られている。今までのようにいくつもある踏み跡の中から好きな所を選んで歩くわけにはいかない。吊橋からシャクナゲ坂の急坂を大蛇ーに着くまで、誰にも出会わず静かな大台の雰囲気が味わえた。正木ヶ原への道も整備されて公園のようになった。子供達がイトザサの中を走り回ったり、枯れ木の上に登ったりして遊んだ頃が懐かしく思い出される。正木ヶ原周辺で今日見たシカは若い4頭だけだった。正木嶺までは木製の回廊がずっと続く。設置当初よりだいぶ辺りの風景になじんだ色になったが、自然の中に持ち込まれた人工物の違和感は拭えない。この回廊があるお陰で、「もう来まい」と言っていたが、やはり来てしまった。「大台の魅力やなあ」と二人で笑いあう。日出ヶ岳頂上に立つころ、雷の音が近づいて来たので急いで車に帰る。

葛城山

【登山日】2005年8月17日(水) 晴れ 
【コースタイム】 水越トンネルP06:45…中間点ベンチ(朝食)07:33〜07:50…葛城山頂08:30〜ツツジ園〜ビジターセンター09:25…中間点ベンチ09:53〜10:06…P11:00


青崩の集落を抜けてヒノキ林を過ぎると、昨日の雨で沢の水も増え、道に覆い被さる草も濡れていた。鎖場の近くでイワタバコの花を見て、水場で汗を拭う。ベンチまでゆっくり登り、寒いほどの風に吹かれながら、パンとコーヒーの朝食。 身体も慣れて涼しくなったので快適に歩く。山腹の捲き道ではクサアジサイが目立つ。弘川寺への分岐付近では、背が高く延びたフシグロセンノウの花がたくさん咲いていた。ショウジョウバカマの群落がある道の各所で、コケがごっそり削り取られている。ブームにのった人の仕業だろうがひどいことをするものだ。キツリフネやオカトラノオが咲くキャンプ場を過ぎ、アジサイが色鮮やかに咲き残る白樺食堂前から無人の山頂に登る。 頭上の空は真っ青で高いが、下界は雲に閉ざされて展望はない。三角点で写真を撮り、葛城ロッジの横からツツジ園に回る。カワラナデシコがたくさん咲いている。オニユリやオミナエシも美しく、ツリガネニンジンやアザミはもう花期が終わるようだ。天然のエアコンが快適で名残惜しいが、涼しい朝のうちに帰ろうと腰を上げる。元の道を汗をかかないようにゆっくり下った。お盆休み明けの静かな山で、予想外にたくさんの花とも出合い、楽しいトレーニングになった。

槍ヶ岳

槍ヶ岳は姿さえ見せなかった。待望の氷河公園も濃いガスの中。しかし豊富な残雪と高山植物や雷鳥に出会い、ちょっぴり岩登りの感覚も味わった参加メンバーは、それぞれに一夏の北アルプスの思い出を得て夏合宿を終えた。

【登 山 日】2005年7月17 日(日) 曇り 【メンバー】千日山歩渉会 11名
【コースタイム】
(20日) 上高地6:00〜6:45…明神館07:33〜明神池〜明神館08:22…徳沢09:07〜09:23…横尾10:20〜10:30…一ノ俣出合11:20〜11:55…槍沢ロッジ12:30
(21日) 槍沢ロッジ05:50…ババ平06:20〜06:25…大曲07:00〜07:10…天狗原分岐08:00〜08:15…天狗池09:00…槍穂縦走路に出る11:30〜11:55…中岳13:00〜13:10…飛騨乗越14:30〜14:40…槍ヶ岳山荘14:50

20日 夜行バス「さわやか信州号」で薄明の沢渡に着く。無公害バスに乗り換えて、開通したばかりの新釜トンネルを潜り、上高地へ。バスターミナル近くで朝食をすませ、梓川に沿って歩き出す。周りは深い霧に包まれ、焼岳も穂高の稜線も姿を隠していた。ようやく少し霧が晴れて、明神池を見学に行く。池にはカモが浮かび、透き通った水の中ではイワナが泳いでいた。坦々とした道で徳沢が近くなると、雲の切れ間から青空が覗き、強い日差しが照りつけてきた。横尾は小憩しただけで通過。槍見河原にきても僅かに赤沢山が見えるばかりで、待望の槍は雲に覆われていた。一ノ俣出合で昼食。常念岳が遙か高くに仰げた。槍沢ロッジで宿泊受付をすませ、部屋に入ると激しい雷雨になった。雨は明け方まで続いた。

21日 いつ又降り始めるか分からない空模様。槍沢沿いの道は次第に勾配を強める。樹林帯を抜け出し、右手に赤沢山下部の岩壁を仰ぐ所がババ平。しばらく開けた河原の左岸を登る。大きな残雪が沢を埋めているが、上部はガスに閉ざされてうかがえない。水俣乗越への分岐がある大曲から砂礫地の急坂を登ると、天狗原分岐。南岳から大喰岳に続く稜線の下、扇形に拡がる岩屑の堆積を前にした小台地で、僅かな草地にシナノキンバイ、クルマユリ、ゴゼンタチバナ、ヨツバシオガマ、ハクサンフウロ…様々な花が咲き乱れている。天狗原に向かうと急に人通りが絶え、寂しいほどの山道になる。最初は岩礫帯のトラバース。次に草地を過ぎてタケカンバの林に入る。暗いルンゼ状の所を過ぎると、目の前が開けて天狗原の一角に出た。池は想像していたよりもずっと小さく、擂り鉢の底の水たまりのようだ。濃いガスに包まれて、槍の影を映すどころか周囲の景色もおぼろである。長年憧れていただけに、ちょっとがっかり。写真を撮っただけで南岳へ向かう。
小雨の降る中、大きな岩の上を縫うように登る。足元からはゴロゴロという伏流水の音が聞こえてくる。いったん勾配がゆるみ、再び急な登りが終わると横尾尾根の上端部に出た。雲が飛び、横尾右俣側の展望が少し開ける。岩稜は次第に急になり、何カ所かにクサリやハシゴが設けられている。ちょっぴり岩登りの感覚を味わいながら南岳と中岳のコルに飛び出した。強い風の稜線に腰を下ろし、昼食を摂る。
 ごろごろした岩の間を白ペンキの○印に導かれて登る。中岳の頂上も濃いガスと霧のような雨の中。岩稜の下りには長いハシゴとクサリが何カ所もある。頂上がどこか分からないうちに大喰岳を過ぎる。飛騨乗越もガスの中で、飛騨側から強い風が雨粒を吹き上げていた。槍ヶ岳山荘に着く頃から本降りになる。この悪天候は台風の接近によるものらしい。浅い眠りのうちに朝を迎えた。

22日 夜が明けたが雨と風は収まらない。大事を取り、予定を変更して槍沢を下る。殺生小屋分岐まで下っただけで、風は嘘のように収まった。滝見で水量を増した滝を眺め、ノンストップで天狗沢分岐まで行く。この頃には雨が止み、雲の切れ目から少し青空が覗く。槍沢ロッジ、横尾、徳沢と、雨が降ったり止んだり。猫の目のように変わる変な天気で、その度に雨具を脱いだり着たり。明神から橋を渡って梓川右岸を歩く。笹原の緑が雨に濡れて美しいが、いつもより長い道のりに感じた。河童橋が近づく頃、ようやく雨は止んだ。来たときには見えなかった岳沢や明神岳が姿を現したが、穂高の稜線はまだ雲に覆われている。名残を惜しみながら、バスで平湯温泉へ向かった。

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