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奈良の酒蔵を訪ねて
「梅乃宿」梅乃宿酒造「山鶴」中本酒造店「春鹿」今西清兵衛商店
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「梅乃宿」梅乃宿酒造
梅の宿 社長:吉田 暁さん(左)
杜氏:高橋幹夫さん(右)

梅の宿 新庄町東室。金剛葛城の山並みを望み、高田川が流れる一角に銘酒「梅乃宿」を醸す蔵があります。伺った日は風花が舞う底冷えのする日でしたが、蔵の中には蒸し上がった米を広げたり、使った道具を洗い清めたりと活気がみなぎっています。タンクが並ぶ蔵にはお酒のいい香りが溢れ、新酒が搾られていました。昔ながらの木組みの蔵には近代的な設備が整っていますが、そのそばにひとかかえもある杉の半切りや内側を柿渋で塗った大きな桶があります。酒蔵を案内くださった吉田暁さんによると、「杜氏が酒造りにたずさわってまもなくの40年程前の先輩蔵人たちがつくっていた生酖づくりという製法を思い出しながら、復活させようとしているのです。昭和40年代までは結構こういった道具で造っていたようなんですが、今は作る人も修理できるひとも少なくなりましたから、大変だと思います。雑菌が入らないようにすることなどの管理も難しいようですよ」とのこと。もちろん一部のお酒を昔ながらの方法で復活させようという試みです。

梅の宿 杜氏の高橋幹夫さんは南部杜氏。岩手県花巻の出身で、この道45年、蔵の総責任者という杜氏になってからでも25年の経験と実績を持つ方です。その高橋さんがまず口にされたのが「毎年一年生です」の言葉でした。酒米のできも年によって違うし、気候だって寒暖の差があります。原料はすべて自然界の生き物ですから、状態が違うのは当然のことなのだそうです。そこをじっくり見極めながら、微調整していくのが杜氏の腕の見せ所なのでしょう。

梅の宿 「今年は米の質からいっても、蒸しがしっかりしているし、五感の捌(さば)けがきっちりして、良い酒ができると思いますよ。五感の捌けというのは洗った水を吸水してもさらさらと水を切るというのがひとつです。米によって何秒という違いで水を切るんです。二番目は蒸しですね。蒸し上がった時に捌けがいい。三番目は酒母、四番目が麹、五番目がもろみですね。この捌け、さらさら感のことです。ひとつでもいびつなところがあるとうまくいきませんね」

 酒造りが始まる11月初め、蔵に入ってまず気になるのが酒米のこと。
 「ここでは自家精米していますから、思い通りの精米が出来ます。コストは高いが大事なことだと思っています。酒は米が命ですからね。それと蔵人の和が大切ですね」

梅の宿 梅乃宿という名前の由来は本宅の庭にある梅の古木だといいます。樹齢300年という梅の木は堂々として庭の主といった風格です。社長の吉田暁さんによると「毎年、早春の頃この木に鶯がやってきて鳴いていたそうです。明治26年の創業ですがその梅の古木にちなんで名付けたようですね」とのことです。

 昭和50年代、日本酒がビールなど他のお酒に押され気味の時、梅乃宿は全国的にも知られる銘酒を醸して評判となりました。以来、その伝統を受け継いでいます。

 「酒造りのメカニズムは科学的に分かってきました。水も濾過装置が進歩していい水が手に入ります。そうなると、良い原料を使わないと良い酒はできないということになりますね。備前雄町、兵庫県吉川地方の山田錦といった米も使いますが、ここは地酒メーカーですから、地場でとれた米、地元の水を使いたいのです。このあたりは、奈良県でも有数のおいしい米が採れるところですから。いい米を作る体制を整えることも大切なことだと思っています」

梅の宿 地元の原料で奈良ならではのうま酒造りに情熱を傾けての日々と拝見しました。そして、新しい試みとして、奈良県で生まれた苺を使った“飛鳥ルビー”のリキュールや梅を使った“吉野すうぃーと”も上々の評判です。もちろんベースは清酒。そうそう、梅酒の清酒をベースに作られていますが、こちらも熟成感があっておいしいようです。


[梅乃宿酒造]
奈良県北葛城郡新庄町東室27
TEL:0745-69-2121
ホームページ:http://www.umenoyado.com/

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