KCN-Netpressアーカイブス
奈良の酒蔵を訪ねて
「梅乃宿」梅乃宿酒造「山鶴」中本酒造店「春鹿」今西清兵衛商店
[文章内の写真は、クリックすると拡大します]
ライン
「春鹿」今西清兵衛商店
春鹿 専務:今西清隆さん(左)
杜氏:古川武志さん(右)

春鹿 古い町並が続く奈良町。その一画にある今西清兵衛商店は、落ち着いたたたずまいの町に一層の趣を添える建物が目を引きます。そして初めての試み“酒蔵まつり”のイベントを開き、大きな反響を呼びました。限定酒のふるまい酒、お酒に関するクイズなど楽しい企画に参加したのは予想をはるかに超えて約1500人。一枚300円也のつまみチケットで1年に4回の大吟醸や純米吟醸などが届けられる幸運に恵まれた人もいての大賑わいだったとか。ふるまい酒には奈良町散策の観光客も大喜び、秋の町歩きをほろ酔いでとは何とも粋なこと。

春鹿 今西家はもともと春日大社に関わる家柄で、境内にある酒殿での酒造りに携わってきたそうです。明治時代の神仏分離令や世の中の変動で神社を離れて酒造りに専念するようになったのが明治17年のこと。以来、奈良の町で「春鹿」を醸してきました。

春鹿酒造りは昨年10月半ばに最初の米を蒸したそうです。
 訪れたのは1月21日、大寒の翌日でした。酒蔵では甑の上にもうもうとした蒸気があがり、蒸しの真っ最中。蒸し上がった米は麹室へと駆け足で運ばれます。温度を見ながら広げていき、麹造りへとかかるのですが、このあたりが勘と経験、杜氏と蔵人との情報交換という大切なところです。ここで2日間。麹から酒母を純粋培養して2週間、大きなタンクに添、仲、留の三段仕込みで約4日間かかります。更に発酵に3週間、大吟醸の場合1カ月もかかるのです。ここでようやく搾られて新酒の登場。

春鹿 5代目となる専務の今西清隆さんにお話を伺いました。
 「搾りたては新鮮で清涼感があります。人間でいえば角があって奥は浅いが力が漲っている感じでしょうか。時が経つと幅が広くなって穏やかになっていきますね。酒も同じだと思います。古酒というのも近頃話題になりますが、4,5年経ちますと丸みがでてくるんです。華やかさには欠けるがそれを補うものが醸される。酒は生き物ですからね、気を使うところです。私としては箱入り娘を送り出すのですが、途中で思わぬ苦労をして変化することもありますから、そこまでの管理も見ておきたい」

春鹿 杜氏は古川武志さん。岩手県出身の南部杜氏として四半世紀を過ごしてきた方です。今年の米は少し固く、例年よりはまったりとした味になると話されます。春鹿の蔵には精米所があって、ここで玄米を見ながら精米するそうです。
「酒は米によって造られるのですから、米は重要です。精米してしまうと同じ銘柄でも良し悪しが分かりません。玄米の状態を見てどう精米するか判断するためにも自家製米は欠かせない設備なんですよ」

春鹿 道路に面した昔の蔵は今商品の展示とお酒に関わる小物を展示すると共に月替わりの利き酒コーナーとして利用されている。専用のグラスを400円で買うと5種類のお酒が試飲できるという趣向。グラスは素敵なオリジナルで、これを目的に集める人のいるとか。江戸時代の建物の中で味わうお酒はやはりひと味違うかも知れません。なお、ここでは酒粕を存分に使った自家製の奈良漬も評判です。


春鹿

[今西清兵衛商店]
奈良県奈良市福智院町24-1
TEL:0742-23-2255
利き酒はお盆と年末年始以外は基本的に年中可能。
8時15分〜17時15分


ライン

「奈良の銘酒を訪ねて」/ 納得店描メニューページ / TOPページ