ダイオキシン類報告書
−デンマーク環境保護庁−
2001年3月19日
CSN #178
ダイオキシン類は、国連環境計画(UNEP)が対象として定めた残留性有機汚染物質(POPs)の1つであり、2000年12月に行われた第5回POPs条約化交渉会議(INC-5)の条約案でも、排出量削減が合意事項として取り決められました[1]。ダイオキシン類に対する研究や調査は日欧米各国で行われており、さまざまな規制や排出量に対するインベントリーが報告されています。
日本では、環境庁(2001年1月から環境省)が1997年8月に策定した「ダイオキシン対策に関する5カ年計画」[2]に基づいて、発生源や環境及び人の汚染状況等に関する科学的知見の充実が推進されており、2000年1月15日には「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行され、耐用一日摂取量(TDI)を4pg/kg体重/日にするなどの取り組みが行われています。
そこで本報では、最近の欧米各国の動きとして、デンマーク環境保護庁(Danish Environmental Protection Agency)が2000年12月11日に発表したダイオキシン類の物質フロー解析に関する報告書(Substance Flow Analysis for dioxins in Denmark)[3]を紹介します。
この報告書によると、1998-1999年までのデンマークにおけるダイオキシン生成量は90-830 g I-TEQ/年で、そのうち環境中への排出量は、表1ように試算されています。
表1 1998-1999年における環境中への排出量([3]をもとに作成)
排出系 |
排出量(g I-TEQ/年) |
大気 |
19- 170 |
水 |
0.3- 1.4 |
土壌 |
1.3- 54 |
埋め立て等の貯蔵 |
38- 420 |
合計 |
58.6- 645.4 |
表1から明らかなように、生成したダイオキシン類のうち、埋め立て等の貯蔵量が多くなっていることがわかります。またその次に、大気中への排出量が多いことがわかります。この内容を、さらに詳しく物質収支フローとしてこの報告書で示されていますので、その内容を図1に示します。
図1 デンマークにおけるダイオキシン類の物質収支フロー(1998-1999年, 単位: g I-TEQ/年)[3]
次に、この報告書における主な結論の概要を以下に示します。図1と対比させると、デンマークにおけるダイオキシン類の物質収支フローの特徴がよくわかります。
欧米各国のダイオキシン類排出量の大半は、主に都市ごみ焼却施設に関連しています[4][5]。そして図1から明らかなように、デンマークでは廃棄物処理残留物(飛灰、焼却残灰)として廃棄物処分場に埋め立てられる、あるいは輸出される量が多いことがわかります。
Author: Kenichi Azuma
<参考文献>
[1] United Nations
Environment Programme (UNEP), PRESS RELLEAS
“Governments finalize Persistent
Organic Pollutants treaty”, December 10,
2000
http://irptc.unep.ch/pops/princ5.htm
(解説)
Kenichi Azuma, 残留性有機汚染物質(POPs)による地球汚染, CSN #170, January 22, 2001
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Janu2001/010122.htm
[2] 環境庁環境保健部et al.,「ダイオキシン対策に関する5ヶ年計画」について, August 26, 1997
http://www.eic.or.jp/kisha/199708/23775.html
[3] Erik Hansen,
Danish EPA Environmental Project No. 570,
December 11, 2000
“Substance Flow
Analysis for dioxins in Denmark”
http://www.mst.dk/news/06090000.htm
[4] Kenichi Azuma,
各国のダイオキシン類排出量の目録, CSN #109, November 16, 1999
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Nov1999/991116.html
[5] 環境庁, ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー), June, 2000
(参考)
Kenichi Azuma, 廃棄物焼却施設からの灰による土壌汚染, CSN #145, July 24, 2000
http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/July2000/000724.htm