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独占企業「日本郵便」のもと、劣化が止まらない「郵便事業」 −独占を批判し新規参入を目指すヤマト運輸を、一丸となって叩く政・官・マスコミ−

 9月28日の読売新聞は、「郵便『原則3日』緩和要望…総務省へ 配達期限 数日延ばす」という見出しで、次のように報じていました。
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郵便「原則3日」緩和要望…総務省へ 配達期限 数日延ばす
2018年9月28日5時0分  読売

 日本郵便が近く、手紙やはがきなど郵便物の配達期限を現在の
「原則3日」から数日延ばすよう総務省などに要望することが分かった。従業員の負担軽減を図り、収支を改善させる狙いがある。ただ、サービスの低下につながるため、利用者から反発の声が上がる可能性もある。

 差し出し日から原則3日以内に届けると定める郵便法の改正を求める。同省の有識者会議「郵便局活性化委員会」で、議論される見通しだ。

 日本郵便はこれまで、
サービス向上を目指して郵便物の翌日配達を増やしてきた。ポストなどから集めた郵便物を大規模郵便局に集約して夜間に仕分けし、届け先の地域の大規模郵便局へ送る。到着した郵便物は早朝に改めて仕分けして、配達員が家庭などに届ける。

 内勤者の約6割にあたる約2万6000人が夜間の仕分け作業などにあたり、従業員の負担となっているほか、夜間の勤務に支払う手当もかさむ。一方で、
電子メールの普及などで、国内向け郵便物の取扱数は2017年度が172億通と、ピークだった01年度(262億通)から3割以上減少し、収益が悪化している。

 郵便法では、郵便サービスの収支を単独で赤字にしないよう義務づけるが、人件費高騰も重しとなり、黒字の確保が危ぶまれている。

 このため日本郵便は、仕分け作業の時間帯を夜から昼に移して、従業員の負担を軽くし、
人件費を抑えたい考えだ。

 ほかにも、郵便物の
配達を平日のみとすることなどを提示するとみられる。

 今後の郵便サービスのあり方を議論している郵便局活性化委は7月の答申で、日本郵便に「郵便サービスの将来にわたる安定的な提供に向けた方策の検討」を求めていた。


企業物流 一括受託へ…日本郵便が新会社
 日本郵便が、企業の物流業務を一括して引き受ける新会社を設立する方針を固めたことがわかった。28日にも発表する。

 新会社「JPトール」は、日本郵便と同社の豪物流子会社トール・ホールディングスが折半出資で設立する。出資額はそれぞれ数十億円規模となる見通しだ。

 企業物流は、インターネット通販の増加などで成長が続く。近年では、商品の受発注や倉庫での保管、出荷などを一括して外部に委託できる企業向けサービスの需要が高まっている。

 
日本郵便は、自動車やスポーツ用品などの海外ブランド大手から国内での物流を請け負う計画だ。総合的な物流サービスを手がけることで、収益拡大を目指す。
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日本郵便は郵便業務を独占しています。宅配便大手のヤマト運輸が、自社宅配便業務の一部(輸送する荷物に書類を同梱する)が、郵便法に抵触するとされて、一部撤退を余儀なくされた点について、2015年11月12日に新聞各紙に再考を求める意見広告(H83-1 いい競争を いいサービスで)を掲載したものの、監督官庁(国土交通省)、マスコミ、その他からすべて無視されて終わったことは、記憶に新しいところです。ヤマト運輸の主張があまりに正論過ぎて、無視する以外に対処のしようが無かったのでしょう。

 今回日本郵便が「郵便配達を遅らせる」という、明らかに
消費者利益に反する行動を、何の躊躇もなく、何の心配も無く起こせるのは、ひとえに独占事業だからこそであり、明白・顕著な独占の弊害です。市場経済を国是とするわが国では決して看過できない事態です。しかるに新聞報道などで、消費者目線に立って批判する報道は全くなく、さらに、従来のヤマト運輸の主張、意見広告に言及するものもありません。「従業員の負担軽減」などと、“働き方改革”に似せた言い方をすれば、批判されにくいだろうという安易な発想が目を引きます。

 日本郵便は2016年10月にも、2017年から
年賀状の1月2日配達を止めるという、消費者の利益に反する決定を一方的に発表し実行しています。これも独占事業ならではのことです。(H83日本郵政独占の弊害 1月2日に配達されなくなった年賀状 −ヤマト運輸に「親書」の取り扱いを認めよ−)

 これらの問題における監督官庁の
国土交通省マスコミ各社の対応は、半官独占企業である日本郵便を支援し、市場参入を求めている民間企業の主張を全く無視し、消費者の不利益を容認するものであり、不可解千万です。

 この点に思いが至った時に改めて想起されるのが、今年8月のこれまた不可解な
国土交通省マスコミ各社による、理不尽なヤマト運輸叩きです。ヤマト運輸の企業向け引っ越し荷物の運賃の算定がルーズである事を糾弾するキャンペーンが数ヶ月続き、やがて終焉しましたが、官主導、マスコミ主導、消費者不在のキャンペーンであった印象は拭えません。(H94理不尽なヤマト運輸叩き マスコミと役所の意図は何か −見積もりと結果の相違は珍しくない−)

 
この2015年11月12日ヤマト運輸の意見広告年賀状の2017年1月2日配達廃止2018年8月の官・マスコミのヤマト運輸叩き2018年9月郵便の3日で配達原則の廃止を眺めてみると、一連の動きに関連性があるのではないかと言う点に気付きます。

 それぞれを関連づけてみると、筋が通った行為に見て取れます。
個別に見ていると不可解な行為が、結びつけることにより、不可解が解消し、すべてが何者かの意思による合理的な行動であると理解できます。
 その意思とは独占企業である
日本郵便の消費者利益に反する営業を擁護し、そのために、政・官・マスコミが力を合わせて、競合する民間企業ヤマト運輸を叩くという意思です。

 このように見てくると日本の社会は、消費者(国民)利益の保護どころか、
言論・報道の自由とはほど遠い社会であると認識せざるを得ません。

平成20年12月13日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ