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国立大規模病院は本当に、かかりつけ医の紹介状のない軽症患者の来院に迷惑しているのか −赤字に悩み、患者数の増加に力を入れている国立病院機構−

 11月11日の読売新聞は、「国立病院機構 65病院が経営悪化…検査院指摘 改善計画達成できず」と言う見出しで、次のように報じていました。
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国立病院機構 65病院が経営悪化…検査院指摘 改善計画達成できず
2018年11月11日5時0分 読売



 全国141の病院を運営する独立行政法人「国立病院機構」が、2016年度に設立以来初めて赤字に転落したことを受け、会計検査院が各病院の経営状況を調べたところ、同年度に経営改善計画を立てていた92病院のうち、約9割の82病院が計画を達成できていないことが分かった。約7割の65病院は15年度より経常収支が悪化していた。

 機構は、国の医療政策や地域医療の向上に貢献することを目的に、04年に設立され、国立病院・療養所の大半の経営を国から引き継いだ。ただ、全体の経常収支比率は10年度の107%をピークに悪化に転じ、診療報酬改定や消費増税の影響などから16年度は99・2%(経常収支は68億円のマイナス)と設立以来初めて経常赤字を記録。17年度も99・7%(同21億円のマイナス)で2年連続の赤字となった。

 検査院は、機構の財務状況や各病院の経営改善に向けた取り組みを調査。その結果、国公立や医療法人などの他の病院に比べ、支出に占める医薬品や医療器具などの購入にかかる材料費の割合が高く、一貫して上昇傾向にあった。収入の大部分を占める一般
大規模病院では、病床利用率が低下していた。

 各病院は、資金余力に不足が見込まれる場合、機構の通知に基づき経営改善計画を作成し、実行することになっている。しかし、16年度決算では、15年度より経営が改善されたのは27病院にとどまった。

 各病院が経営改善計画で掲げた実施項目は「収益の増加」が89%を占め、その内容は
「患者数を増加させる」が大半だった。実現可能性や医療需要などを加味しないまま、患者数の増加を安易に盛り込んだことで、計画を達成できなかった病院が多かったとみられる。

 検査院は「実現可能性や妥当性に疑念が生じる内容では実行の意欲に欠け、経営改善に結びつかない恐れがある」と指摘した。

 機構は「参考となる実施項目の事例や注意点を具体的に示し、改善計画の実現可能性を高めたい」としている。
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 記事にある国立病院機構に所属する病院の多くは、いわゆるかかりつけ医紹介状が無いと、選定療養費として初診時5,000円(歯科は3,000円)以上、再診時2,500円(歯科は1,500円)以上の特別料金が必要な
大規模病院ですが、その多くが病床利用率が低下して、赤字経営に陥っているため患者数を増加させることを目指しているとのことです。

 このかかりつけ医の紹介状と、選定療養費の必要性については、軽症患者が大規模病院に押し寄せてきて、大規模病院が重症患者の治療という本来の役割を果たせなくなっているので、軽症患者の来院を防止するためと説明されてきました(H76「医師会の医師会による、開業医のための“かかりつけ医”への受診強制」、H91「大病院が紹介状のない軽症患者を敬遠しているというのは本当か」参照)が、多くの大規模病院が病床利用率の低下により赤字経営に陥っている
事実は、その説明とは相容れません。
 紹介状と選定療養費は、本来大規模病院へ向かう患者を、むりやり“かかりつけ医”へ取り込むための
開業医達のエゴに過ぎない疑いが濃厚です。

 もしそうであれば、患者の選択権の侵害です。
 エゴをごり押しする
開業医・医師会、それを支援する厚労省と、事実を報じないマスコミの罪は重いと言わざるを得ません。

平成30年11月30日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ