I127
遂に「合計特殊出生率」が1.26となりました。まさに「1.26ショック」と言うべき事態です
6月2日のNHKテレビニュースは、「去年の出生率1.26で過去最低 7年連続で前年を下回る」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
(茶色字は報道 黒字は安藤の意見)
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去年の出生率1.26で過去最低 7年連続で前年を下回る
2023年6月2日 14時00分 NHK
1人の女性が産む子どもの数の指標となる出生率は去年1.26で、7年連続で前の年を下回り統計を取り始めて以降最も低くなったことが厚生労働省のまとめで分かりました。
厚生労働省は2日、去年の「人口動態統計」の概数を公表しました。
それによりますと1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、1.26でした。
おととしの確定値と比較すると0.05ポイント低下していて、前の年を下回るのは7年連続となります。
1947年に統計を取り始めて以降では2005年の確定値が今回と同じ1.26で過去最低でしたが少数点以下の詳細な数字の比較で今回は2005年を下回っているということです。
都道府県別の合計特殊出生率は
都道府県別で最も高かったのは
▽沖縄県で1.70
次いで
▽宮崎県が1.63
▽鳥取県が1.60でした。
一方、最も低かったのは
▽東京都で1.04
次いで
▽宮城県が1.09
▽北海道が1.12でした。
また去年1年間に生まれた日本人の子どもの数は77万747人で、おととしより4万875人減少し1899年に統計を取り始めて以降、最も少なくなり、初めて80万人を下回りました。
一方、死亡した人の数は156万8961人とおととしより12万9105人増加し、統計を取り始めて以降、最も多くなりました。
このほか結婚の件数は、おととしが戦後、最も少なくなるなど減少傾向が続いていましたが、去年は50万4878組と、3年ぶりに増加に転じました。
(前年比:3740組増)
未婚・非婚が少子化の原因と言われているにもかかわらず、結婚(未婚・非婚)の年齢別割合等についてや、年ごとの増減の推移について何もデータを示さず(昨年単年の結婚3740組0.74%増だけ報じて)、あとは口を閉ざしています。これは情報隠しです。
離婚の件数は17万9096組で3年連続で減少しました。
(前年比:5288組減)
厚生労働省は「少子化が進む背景には結婚や出産、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因が複雑に絡み合っていて、新型コロナの流行も結婚や妊娠に影響した可能性があるのではないか」としています。
これにはやる気が全く感じられません。原因を突き止めずに有効な対策を導き出せる筈がありません。頭が悪いのか、やる気が無いのか、或いはその両方なのか。高級官僚(?氏名不詳)がこれでは、少子化対策が成果を挙げる可能性はありません。
コロナに安易に責任を転嫁するあたりは、悪質性を感じます。高級官僚の劣化を目の当たりにする思いです。
原因は不明としていますが、戦争に敗北するとか、飢饉に見舞われる、疫病が大流行するなどのはっきりした原因が無い限り、人口の継続的な大幅な減少はあり得ません。自然界の他の生物でも同様です。
有性生殖の生物が生殖行為をしなくなるとは、自然環境の急変とか他の生物(天敵)に脅かされるなどの事態が無ければあり得ない事態です。
出生数は減る一方
1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は確定値で統計を取り始めた1947年は4.54でした。
その後は低下傾向が続き1961年は1.96と初めて2を切り、2005年には1.26まで低下しました。
翌年の2006年からは一時、増加傾向となり2015年には1.45まで増加しましたがその後は再び低下傾向となり、おととし(2021)は1.30でした。
また出生率の低下傾向とともに出生数も減少が続いています。
日本人の出生数は確定値で統計を取り始めた1899年は138万6981人でした。
その後、増加傾向が続き第1次ベビーブームにあたる(昭和22年〜24年)1949年には最多の269万6638人に上りました。
そのあとは減少傾向となり、1960年代から1970年代半ばごろにかけて一時、増加に転じ第2次ベビーブームにあたる(昭和46年〜49年)1973年には209万1983人に上りましたが、その後は再び減っていきました。
1990年代は120万人前後で推移していましたが、2000年代に入るとさらに減少傾向となり、2016年には97万7242人とはじめて100万人を下回りました。
ダラダラと細かい数字の解説を続けていますが、何を言いたいのか不明です。
理想の数の子どもを持たない理由は
理想の数の子どもを持たない理由について国の調査では経済的な理由を挙げる夫婦が最も多くなっています。
国立社会保障・人口問題研究所が5年に1回程度行っている出生動向基本調査では、夫婦が「理想とする子どもの数」は2021年の時点で2.25人で、前回の調査(2015年)より0.07人低下しています。
また「予定している子どもの数」が「理想とする子どもの数」を下回っている夫婦に対して理由を複数回答でたずねたところ
最も多かったのが
▽「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」 52.6%
次いで
▽「高年齢で生むのはいやだから」 40.4%、
▽「ほしいけれどもできないから」 23.9%、
▽「これ以上、育児の心理的・肉体的負担に耐えられないから」 23.0%
▽「健康上の理由から」 17.4%、
▽「自分の仕事に差し支えるから」 15.8%
などとなっています。
子育て世代の声は
去年の出生率が統計を取り始めて以降最も低くなったことについて子育て世代の親に聞きました。
2歳と0歳の2人の子どもを育てる30代の母親は「日本の出生率はほかの国と比べても低いほうだと思いますし、仕事をしたくても子どもを預ける場所が見つからないこともあるなど子育てしにくい国なのかなと感じています。本当は3人目の子どもも欲しいですが経済的にも苦しく難しいです」と話していました。
2歳と0歳の2人の子どもを育てる父親は「結婚している人が減っているとこともあると思いますし、若い人のお金がないことも大きいと思います。若い人向けの施策を充実させてほしいと思います」と話していました。
1歳の子どもを育てる30代の母親は「そもそも子どもはいらないという知人も多く、昔と違って結婚したら子どもを持つという人だけではなくなっていると思いますが、子どもが欲しいと人が諦めずにすむようなサポートがあるといいと思います」と話していました。
アンケート調査と30代の2人の母親と年齢不明の1人の父親、合計3人のインタビューの内容が報じられていますが、この回答者をどうやって選んだのか不明です。そんな3人の意見を引用して、全国に放送する意味があるのでしょうか。
数字のデータと、インタビューの内容がバラバラでこの調査からは何の結果も見出せません。何かを調べよう、調査しようという意欲・熱意が全く感じられず、何かをしないと何もしていないと言われそうだからやったというと言うだけです。
過去最低の出生率で方針転換 兵庫県加西市
出生率が1.0を割り込むまで低下し、将来への危機感から子育て支援策を大幅に拡充する方針転換を行った自治体があります。
兵庫県の中山間地域にある人口およそ4万人の加西市は、ここ10年ほど出生率が国や県の水準を下回る状況が続いていて、おととし(令3)は過去最低の0.91にまで減少しました。
さらに1年間に生まれた子どもの数も減少傾向が続き、令和3年度は174人とこちらも過去最少となりました。
以前から若い世代の定住促進などに取り組んできましたが、このまま減少傾向が続けば地域の活力や産業を維持できないとして昨年度(令和4)からは子育て支援策を拡充したうえで、市の中心施策としてPRしています。
その中身は
▽0歳から5歳までの保育料の無料化
▽すべての保育施設や学校での給食費の無料化
▽高校3年生までの医療費の無料化
▽1歳までの子どもがいる世帯へのおむつなどの無料宅配
▽子どもが病気で学校や保育園などに通えない場合に利用する「病児・病後児保育」の無料化です。
所得制限はなく、市の試算では子どもが生まれてから高校卒業まで1人につきおよそ250万円分の負担軽減になるとしています。
5項目に及ぶ無料化は全国的にも珍しく、市内で子育て中の母親からは「他の市では給食費とか教材費とかいろいろかかると聞きますが、加西市では保育料も給食費も医療費も無料ということで、1人あたりにかかる費用が大きく軽減されているのでとてもありがたいです。子育てにお金があまりかからないので、もう1人子どもがいてもいいかなと考えています」という声が聞かれました。
一方で加西市の子育て支援関連の予算は5つの無料化を始める前と比べ2倍以上に増加しています。
市は好調なふるさと納税を財源にあてることで、今後、10年程度は支援を継続できるとしています。
加西市人口増政策課の小菊啓靖課長は、「少子化による影響は小学校の統廃合や町の行事ができなくなるなどの社会的な影響のほか、もの作りや農業など産業の担い手がさらに減少することにもなります。10年後、20年後も見据えた持続可能なまち作りを考えると早急な対応が必要で、安心して出産や子育てができる環境の整備に市をあげて取り組んでいきたい」と話していました。
支援を当てにして子どもをもうけた父母のことを考えれば、少なくとも成人するまでの18年間は支援を継続して貰う必要があります。10代後半の方が養育費は掛かります。10年程度では無責任です。
テレビニュースがどうしてこの加西市を抽出したか不明ですが、日本全体の事を論じるときに、全国で1,724ある市町村の中から、加西市だけを選抜した理由は何か、それでまともな議論が出来ると思っているでしょうか。議論をする気がないとしか考えられません。する気はないけど、何もしないと破綻を認めていると言われそうだから中身がないことを承知で報じただけでしょう。
専門家「成長段階に応じた多岐にわたる支援を長期的に」
少子化の問題について経済学の観点から研究している東京大学大学院経済学研究科山口慎太郎教授は去年の出生率が過去最低になったことについて、「若い世代が安心して家庭を持つことができない経済状況になっていることや女性の社会進出が進む一方で家事や育児の負担が女性に偏っていることなどの社会問題に加え、子どもを持たないことや結婚をしないことへの価値観の変化といった要因も重なっているのではないか」と分析しています。
例外的な個人の問題ではなく、国全体で「子どもを持たないことや結婚をしないこと」が蔓延しているのは、「価値観の変化」、「社会問題」の範囲を超えた「病気・異常」と言うべき精神状態であり、これが蔓延している社会は「病める社会」であり、必要なのは「治療」・「矯正」であって「社会問題」へのすり替えは誤りです。
(以下略)
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1989年の「1.57ショック」以来34年、毎年多少の増減はあるものの、合計特殊出生率はほぼ一貫して低下を続け、遂に1.26となりました。まさに「1.26ショック」と言うべき事態です。
34年間「少子化対策」は国の喫緊の課題という政府・国民の認識の下に、国を挙げて「少子化対策」に取り組んできましたが、その対策はほとんどが「子育て支援」であり、さらにそのほとんどが育児休暇の創設、保育所の増設に代表される、共働きの母親に対する支援でした。
その結末が「1.26ショック」となったことは、今までの少子化対策(子育て支援)が全く効果が無かった(むしろ有害だった)事を明確に示しています。しかるにこの失敗に関する批判・言及は皆無です。今後少子化対策としてまずすべき事は、過去への批判と反省です。
少子化の主たる原因が未婚・非婚の増加であることは統計上明白であったにも拘わらず、それを改善するための提案があっても、「結婚するかしないかは本人が決めることだ」とか、「戦前の産めよ増やせよと同じだ」と非難されて対策は取られませんでした。反対に少子化に便乗して共働きの母親に対する「子育て支援」に話しがすり替えられ、“偽りの少子化対策”が実施され、それが34年間修正されることなく続き、今日の少子化対策の破綻に至ったのです。
それらを踏まえた上でまともに考えれば、今後の「少子化対策」を論じるに当たって、まずすべき事は、今までの“少子化対策(そのほとんどが共働きの母親への支援)の大失敗”を直視し、「その原因」と、34年間ブレーキがきかずに「暴走」を続けた原因を明らかにした上で、今後の「新少子化対策」を議論・実行すべきです。
いま、この問題に取り組んでいる人は、「1.57」の時と同じか、あるいはその流れをくむ人達によっ占められていますが、彼らにはこれ以上任せておけません。
当時の対策の立案とその後の現在に至るまでの実行に関与した者(官僚・学者・マスコミ関係者・その他有識者等)は原則全員を解任し、過去の過ちの「証人」として残す少人数以外は、新たなメンバーを選任して行動に移すべきです。
岸田総理の言う“異次元の対策”は、少子化の原因、その対策の大失敗の原因を究明して明らかにする事もなく、周囲を窺ってするいわゆる所詮人気取りの小銭のバラ撒きに過ぎず、効果は期待できません。
最近報じられたいくつかの世論調査報道では、岸田総理の“異次元の少子化対策”に対しては、効果が期待できないという反応が増えているようです。
I119.毎日新聞(山田道子・元サンデー毎日編集長)が報じる、馬鹿でも分かる“少子化”の原因
A249.少子化対策の誤りを指摘した読売新聞の画期的記事
岸田総理が本当に多様な生き方を守る気があるのなら、それに反する“男女の役割分担”否定思想(男性への育児休暇取得強要等)を助長したり、職業選択における自由と機会均等に反する男女別定員制度(女子の30%枠等)は止めるべきです。
また、本当に若者の賃金上昇を実現しようとするのであれば、若者の低賃金を固定化する“移民(特定技能2号の拡大等)の受け入れ”を中止すべきです。
令和5年6月14日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ