Matthew Bourne's Nutcracker! Report@ Sadler's Wells Vol.1
21&22 November,2002
By Natsumu


 2002年の夏に「Play without words」でスタートを切った「New Adventures」の2作目に当り、AMP時代に上演された事を考えるとリバイバル作品である「Nutcracker!」。私にとってはNew Adventuers初の舞台となりました。

 さてその昔、お友達がこの舞台を観た事があるという方からお話しを聞いたとき( つまり、また聞きですね)「AMPのくるみは、やっぱりAMPしてて、お菓子の国だから、舐めあうんだそうですよ。何しろ、エロティックだそうで、もう、とにかく舐めあうんです!」と聞き、もう、マシューったら。絶対に見たい!!(笑)と妄 想(?)を膨らませた過去が私にはありまして、ロンドンに着き、巷に置かれているパンフレットではかわいらしい女の子が目を輝かせてリチャード・ウィンザーがスノードームの中で飛び跳ねているのを見ている、という「Matthew Bourne's Nutcrcker!」のファンタジーなポスターやリーフレットを見てもなお、「舐める?? 舐める・・・お菓子がお互いに舐める??」と繰り返しておりました(笑)。

 という冗談はこのぐらいにして(今、冗談じゃなくて本心でしょって突っ込みが聞こえたような)今回の舞台は私にとって非常に意味のある、注目すべき点の多い舞台です。
 まず一番の注目点は、何といっても作品です。何せ「40歳になって人にレールをひかれるのはちょっとと思ったんだ。AMPはブランドになっちゃったし、 大きくなりすぎた」と言ってAMPを出たマシュー・ボーンが自由になり、自分の新カンパニーで思う通りに作った作品ですから、この作品を通してこれから彼がどこに進もうとしているのかという方向の一つを見ることが出きるはず。何がしたかったのか、AMPでは何が出来なかったのか、これは自称マシュー・ウォッチャーである私としては非常に気になるところです。

 次の注目点は、言わずもがなのダンサー達です。はっきり言ってNew Adventursのダンサーは、AMP主要メンバーそのもので、お馴染みの人たちばかり。そして彼等は舞台を観る度にどんどん成長を遂げています。今回はどんなダンス、どんな演技を見せてくれるのか、とても楽しみです。久々にエミリー・ピアシーも登場しますし、何といっても渋みの増してきたスコット・アンブラーのDr.ドロスは注目です。
私以外絶対に覚えていないけど(笑)、スコット本人に琵琶湖で「あなたのドロスを観にロンドンに行きます!」と宣言した以上、この目で彼のドロスを観るまでは帰れません!(勝手に力説)

 そして唯一の日本人ダンサー、友谷真実さんの「最年少の女の子役」も大注目!ルーキーで今回は何とこの公演の看板、ポスターにまでなってしまったリチャード・ウィンザーも要チェックです!
「Play without words」の出演といい、このポスターへの起用といい、マシュー・ボーンのかわいがりぶり、いえ、彼への期待が分かるというもの。リッチーの取り上げられ方を見ていると、昔のウィルを思い出すのは私だけではないはずです。

 次のチェック項目はデザインです。白鳥からシンデレラ、Car ManにPlay without wordsに至るまで、1995年からマシュー作品を手掛けて来たレズ・ブラザーストーンですが、本作品はデザイナーが違い、トム・ウォードなのです。
 マシューの舞台でレズ以外の舞台美術を観るのは初めてです。ですが、彼とマシューの関わりは古く、「Natcracker」の初演時も、そしてマシューが振付けでオリビエ賞を受賞したロングラン中のミュージカル「マイ・フェア・レディ」も実はトム・ウォードが舞台、衣装のデザインを手掛けています。余談ですが、今回私がロンドン滞在中に観た、今あげた二つの舞台を含む4つのうちの3作(「マイ・フェア・レディ」、「チキチキバンバン」そして本作品です)は、このトム・ウォードがデザインしたものでした。

 マシューの作品が持つスタイリッシュさ。どこかに闇の香りがする色使い。無駄の無い計算されつくしたセット、影の生み出す不思議な空間、黒、ブルー、そして上質な生地が生み出す美しい光沢。ほどの良さを知っている光を持つ素材使いなど、あげればきりが無いぐらいレズのデザインは洗練されていて一定のカラーがあり、舞台セットなどは正にマジック!といつも唸らされるほど大好きなのですが、マシューとレズがいつもセットになっている為、マシューの世界だと思っている映像的イメージが、実はレズのものかもしれないと思わないでもなく、一度レズ以外のデザイナーが手掛けたマシュー作品も観てみたいと思っていたのです。いったいどんな舞台なのでしょうか。

 New Adventuresにとっては初の長期公演(Play without wordsは2週間だけの短期公演でした)となる「Nutcracker!」はエンジェルにあるサドラーズウェルズで上演されました。サドラーズウェルズはマシュー・ボーンにとって馴染みの深い劇場で、「Nutcracker!」の初演も、「Swan Lake」の初演もここで行われています。そして、ここは通常短期公演しか行われない劇場であり、数カ月に渡る今回の公演は劇場にとっては初の試みと聞いた覚えがあり、もしかしてサドラーズにとって今回の公演は「New Adventure」(新たな冒険)なのかしらなどと思っていました。

 ロンドンに着いてから、当日迷わないように下見もかねて、事前に一度チケットを受け取るべく劇場に出向いたのですが、その時は雨だった事もありこの辺りは何だか寂しい雰囲気が漂っていました。駅を出てすぐに見える劇場の上に掲げされら「Sadlaer's」の看板は思ったより遠く、細い道を下って行きながら本当に劇場に近付いているのかしら?と方向音痴だけに一抹の不安を感じたものです。
 方向音痴の名の通り劇場裏に辿り着いてしまった私は、丁度劇場を一周するような形になり、周囲に貼られたポスターを全部見ていく事になりました。スノーマンのポスターとNutcracker!のポスターが数多く貼られています。漸く劇場入り口に着き、良かった開いていたと胸をなでおろします。

 着いた所は非常に新しくエントランスの吹き抜けが気持ち良い劇場で、カウンターの中のスタッフはインカムをつけてパソコンのモニターを見て話していました。外からの電話の相手と話しているのです。私が劇場に電話をかけてチケットを取った時の相手は、この状態だったんだ!とちょっと驚きました。何せ劇場ロビーでの作業でしたので。しかも二人だけだし。(笑)
 無事チケットを入手し再び雨の街に出て駅に向かって坂をのぼっている時の事。フード付きトレーナーのフードをかぶり、傘をささずに歩いているスキンヘッドの男性とすれ違いました。
その瞬間あれ?と思ったのですが、次の瞬間劇場に向かう二ール・ペリントンだと気付きました。どうやらこれから練習のようです。もしかして、このまま駅に歩いていったらもっと誰かに会えるのかしら?と少し期待しつつ、しかし何事も起こらず駅に到着。それにしても、寂しげな劇場周辺だったと思いながらエンジェルを後にしました。

 さて、当日。夕刻の駅は何処も人が行き交い活気に溢れていますが、ここも例外ではなく忙しげに人が行き交っています。駅構内に貼られたマックエキスポのポスターを見ながら改札を出ると、昼間とはうってかわって多くの人が劇場方向に向かって道を下っていました。
 目的地に向かう時、全員がこれから自分が行く場所に行くように見えるものですが、今回はあながち間違いではありません。実際多くの人が劇場に吸い込まれて行きます。

 暗くなった街を人の流れにそって歩いて行くと、クリスマスシーズンに入っているからなのか、イルミネーションに飾られた並木道が現れました。うーん、ロマンチック!ワクワク度が増してきます。
 そしてひときは明るい建物が。サドラーズウェルズです。壁のポスターは、言うまでもなくリチャード・ウィンザーがスノードームの中でジャンプしている「Nutcracker!」。劇場の前にはバスやタクシーが止まり、どんどん観客が到着しています。

 自動ドアを通り抜け、劇場に足を踏み入れると、既にドリンク片手に話している人、チケットブースでチケットを受け取っている人などで混雑していました。
 まずはパンフレットを購入せねばと、入り口近くに作られているパンフレット販売スタンドに行きます。表紙はポスターと同じリッチーが飛び跳ねているスノードームを見つめる女の子。そして、そのパンフレットの間に挟まっている派手なピンクの紙が・・・一番気にしていたキャスティング表です!!

 何を差し置いても、まずこれです!これをチェックしない事には、何事も始まらない!!!!ドキドキしながらその文字を目で追って行きました。


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