
なんとさびしい、こころにしみる歌だろう。
高円山のふもと、標高120mの丘上に白毫寺がある。
境内からは奈良市街が一望できるが、普段は訪れる人影も少ない。
その素朴な高い石段の参道に萩の咲き乱れる風情が万葉ロマンを
感じさせる。
このあたりに天智天皇の皇子・志貴皇子の邸があったらしい。
霊亀元年(715)九月、皇子はなくなり、ここから約5km
東山中(とうさんちゅう)の田原の里に葬られた。
その葬列の送り火が、まるで、野火かとまがうばかりに
燃え進むさまを、金村はすばらしい長歌に詠じた。
この歌はそれに伴う反歌だ。
もう萩は散りそめた。この秋はことさらむなしい。
このあとにもう一首が続く。
232 三笠山 野辺行く道は こきだくも 繁り荒れたるか 久にあらなくに
文章は、スケッチ散歩「万葉の風景」より。