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大病院での患者負担追加料金強制の目的は開業医への患者誘導 −患者のことは眼中にない厚労省と、それを見て見ぬ振りして報じている読売新聞−

 10月29日の読売新聞は、「紹介状なし負担『200床以上』に…厚労省検討、来年度から 初診5000円以上 義務化拡大」と言う見出しで、次のように報じていました。
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紹介状なし負担「200床以上」に…厚労省検討、来年度から 初診5000円以上 義務化拡大
2019/10/29 05:00  読売

 厚生労働省は来年度、
紹介状なしで大きな病院を受診した患者に定額負担義務化する制度について、現在の「400床以上」から「200床以上」を軸に対象を拡大する方向で検討に入った。軽症者には身近な「かかりつけ医」への受診を促し大病院や中核病院が専門性を生かした治療に集中できるよう、役割分担を進める。

 厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)で今後、検討し、2年に1度の診療報酬改定の具体的な内容に盛り込む。

 定額負担の義務化は、原則1〜3割の窓口負担とは別に、初診で
5000円以上、再診で2500円以上を徴収する仕組み。軽症でも大病院や中核病院を受診する人が少なくないため、定額負担を求めることで自宅近く診療所などで受診する患者を増やし、大病院などへの患者の集中緩和する狙いから導入された。

 救急患者ら一定の条件に当てはまる患者は対象外で、定額負担を求められない。

 2016年度に
「500床以上」で始まり、18年度に400床以上に拡大された。現在は420病院が対象になっている。200床以上にすれば、対象病院が250程度増える。

 200床以上の病院は現在でも、初診の追加料金を徴収することができ、厚労省によると、
200〜399床の病院では平均2500円程度を徴収している。これを5000円以上に義務化する方針だ。

 厚労省は、症状が
軽い場合は、地域の診療所を受診してもらうように理解を求める。

 厚労省の調査によると、18年度から定額負担が義務化された病院では、同年10月時点で、1年前と比べて紹介状なしの患者が4・4ポイント減少した。
大病院や中核病院は患者数の減少により、専門的な技術を生かした治療に専念しやすくなる利点があるとされている
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 今回の改定案は基本的には、今までの500床400床対象の追加料金徴収と同じ方針の踏襲で、ただ、基準を200床と大幅に下げたことが目を引きます。

 記事は「
軽症者には身近な『かかりつけ医』への受診を促し大病院や中核病院が専門性を生かした治療に集中できるよう、役割分担を進める」、「定額負担を求めることで自宅近くの診療所などで受診する患者を増やし、大病院などへの患者の集中を緩和する狙いから導入された」とあり、「大病院への軽症患者の集中を抑制し、専門性を生かした治療に集中出来るようにすること」が目的で、その実現のための手段として「追加料金制度を導入して、大病院で治療を受けている軽症患者を、自宅近くの診療所(かかりつけ医)誘導する」と読めます。

 しかし、今までの500床、400床の時も言えることですが、
大病院の為の施策であれば、一定額(例えば5,000円)以内の追記料金徴収を認めるとすれば足りる話で、何も「義務化」までする必要はありません。料金である以上上限額は必要ですが、下限額を定める理由は考えられません。

 金額は大病院の
経営実態周囲の地域の医療環境に応じて、大病院自身が必要で妥当な金額を決めれば良いはずです。金額がすぎれば軽症患者が減らずすぎれば患者が減りすぎます。新制度が必要性が疑問の下限額を定めかつ徴収を義務化するのは、公言している目的とは別の「他意」があるからだと思います。

 記事は「
大病院や中核病院は患者数の減少により、専門的な技術を生かした治療に専念しやすくなる利点があるとされている」と、曖昧な書き方をしているのは、利点があると言う確たる根拠はないことを裏付けています。
 それではこの制度改定により
利益を得る者は一体誰なのでしょうか。それは、開業医(かかりつけ医)です。彼等は制度改定により確実に利益を得ます。

 こう考えると、金額に
下限額があって、上限額がなく、徴収が強制なのが何故なのかが理解できてきます。これらの改定(改悪)はすべて開業医への患者誘導が目的であって、追加料金の導入(値上げ)によって、大病院の患者を削減するのはその為の手段である事、つまり公言されているのとは本末が転倒していることが分かります。

 
開業医達が本当の目的を手段と言い、手段を目的と偽るのは、自分たちの目的が人には言えない恥ずべきものであると認識しているからに他なりません。
 開業医達のする事は実に悪質であり、これを
推進している厚労省と、本当のことを書かないマスコミは同罪と言うべきだと思います。

(参考)
H76 医師会の医師会による、開業医のための“かかりつけ医”への受診強制−(患者の自己決定権尊重の真逆を行く厚生労働省の診療報酬改定 基本方針)

H91 大病院が紹介状のない軽症患者を敬遠しているというのは本当か −そう言っているのは“かかりつけ医”だけではないのか−

H99 国立大規模病院は本当に、かかりつけ医の紹介状のない軽症患者の来院に迷惑しているのか −赤字に悩み、患者数の増加に力を入れている国立病院機構−

令和元年10月30日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ