◇ 街で見つけたヒゲを”落書き”された子供(天使?)のポスター(ルーベンス展)です ◇

・ウィーン旅行記 2004 vol.18・

〜 美術史美術館 〜

2004年11月04日


 美術史美術館を訪れるのは、もう3回目でしょうか。前回来た時にはまだ、「美術館群」は出来ていなかったので「ミュージアムクォーター」という地下鉄の駅は無かったのですが、今は美術館のすぐ側に駅が出来ていました。

   さて、お馴染みの美術史美術館です。マリアテレジアの銅像を中心に、左右に聳え立つミュージアム。リングを背中にして右手が自然史博物館、左手が美術史美術館です。銅像の下にはマリアテレジアを支えた男達の彫刻が施されています。何時見ても、女帝の貫禄です。

 そして我々はマリア・テレジア像を視野に入れ、風に煽られながら左手にある美 術史美術館へ直行します。扉をくぐり、チケットを購入し、大理石の模様が美しいエントランスへ。エントランス正面には、展示室に続く階段が厳かに存在しており、踊り場にはギリシャ系の彫刻が置かれています。吹き抜けになったエントランス、階段エリアの壁画の一部はクリムトです。円形の吹き抜けの2階にはカフェがあり、エントランスの美しい大理石の幾何学模様を上からのぞき見る事が出来ます。
 エントランスの右手は、ミュージアムショップとエジプトの展示室。そして、上の階にはフェルメール、レンブラント、フリューゲルなどの絵画が展示されています。

 まずは、迷うことなく絵画のコーナーへ。このフロアー、結構広く以前一通り見てこれで終わりだと思ったら、後半分残っていて時間に余裕がなくなりちょっと焦った事がありました。

 海外の美術館を訪れて、一番好きなところは、絵とゆっくり対面できるということです。日本の美術館では特に人気の特別展などに行くと、人ごみの中、人の頭と頭の間からのぞきこむのが関の山。あるいは、一列に並んで最前列で見たとしても、ゆっくり立ち止まる事は出来ません。根気良く列に並び、最前列で見ても、絵を一方向からしか、しかも結構至近距離でしか見ることが出来ない。非常に鑑賞環境は厳しい訳です。
 一方、この美術史美術館には人が居ない。居ないといってもいいぐらい、ぽつぽつとしか人は居ません。天井の高い広々とした空間。歴史的建築物の中に絵があり、中央の椅子にはいつまででも座っていられる静けさがあります。そして、展示されているのは、日本ではなかなか見ることが出来ない名画が揃った絵画です。
 充実したコレクションの数々。そして充実した空間。そして、静かな時の流れ。この贅沢になれてしまうと、よほどの事がないとなかなか日本の美術館に足をのばす気が起らなくなってしまうのです。それこそ、非常に贅沢な話しですが。

 大きな扉を開け、数年前にも経験した絵画の世界に入りこみます。この美術史美術館。ガイドブックで見ると、必ず紹介されているのは、ブリューゲルの絵。「バベルの塔」や「農民の婚礼」が有名です。そして、この旅行の少し前まで日本に来ていて大人気だったフェルメールの絵。その他にも、ヴァン・ダイク、ルーベンスや私の好きなレンブラントも所蔵しており、世界的な美術館の一つです。

 さて、相変わらず以上な程の至近距離で見る事が出来るとっても寛大な美術館で鑑賞開始。何故か柵が非常に少ないのです。言ってみれば、触ろうと思えば直に触れてしまう展示方法がとられています。ですが、本当に近づきすぎると、しっかり監視されているので該当者の居る室内に注意の声が速攻で飛んできます。正に天の声のように。

 相変わらずここに描かれているバベルの塔は、人間のおごりを表現している割りには、こじんまりしているというか、小さい感じ。絵のサイズもさほど大きくは無く、この美術館の中では普通サイズです。そして、何故か思い出すのはジグソーパズル(笑)この絵がパズルみたいだと言っているのではなく、良くパズルでこの絵柄を見るんですよね。色が全体にベージュで似ているので、多分難しくて丁度いい絵柄なのでしょうね。
 門外不出の「バベルの塔」「農民の婚礼」「青い花瓶の花束」といったブリューゲルの作品に会うと、ここに来たという感じがするというか、お久しぶりです、という気分になるなと思いながらネーデルランドエリアを後にします。

 さて、世界に30数点しか無いと言われ、日本で大人気のフェルメール。遂に「絵画芸術の寓意」の登場です。しかし、フェルメールの絵が展示されているのは、メインの部屋ではなく部屋の周辺、回廊。しかも、その展示のされ方が、何だかポソっと掛けられています、という感じ。これがあの大人気だったフェルメール!今、この絵の前には私と友人の二人しか居ません。しかも、警備なんか全く無く見えるんですけど。
「あのさ。この絵って日本で大人気で連日大変だったはずなんだけど」
「何で廊下にさりげな〜く掛かってるの?って感じだよね」
「メインホールでなくてね。廊下にね。」
「誰も注目してませんっ!みたいな感じでね。」
もし絵がしゃべれらたなら、国によってはスーパースターなんだけど、本国では普通に暮らせるんだって語ってくれそうです。
 フェルメールと言えば、相変わらずの写実力。思わず触れてみたくなる、と書いた作家が居ましたが、本当に不思議な質感を持つ絵である事は間違いありません。
 時々思うのですが、画家と我々一般人が見ている世界は、きっと見え方が違うのでしょうね。物を見つめて入って来る情報量が違うというか、色が違うというか、光が違うというか。恐らく同じ物を見ていても、彼等の目には違う映り方をしているのでしょう。

回廊組(勝手に命名)には、花や果物で人の顔を形作った、私の嫌いな作風のアンチン・ボルドの絵も。何度見ても、やっぱり私はグロテスクに感じてしまいます。  日本で有名な絵は結構回廊組?などと思いながら、再び中央の部屋に戻り、順路を辿りレンブラントの部屋へ。これで半分を見終えました。

 展示室を抜け、ちょっとカフェで休憩でもと思ったのですが、悲しいかなカフェはもう店じまいの最中で、仕方なく諦めます。階段上の吹き抜けを見上げ、久々にクリムトの壁画を鑑賞。そういえば、ベートーベンフリーズを一度見て以来、セセッションは二度と訪れていないなぁと思いながら。

 再び展示室に戻ります。それにしても、いつも段々体力勝負になってくる海外の美術鑑賞。散々街を歩いた挙句辿り着くことも多いだけに、最後の方は見流す状態に陥ってしまうこともしばしば。本当は、ゆっくり何度も足を運ぶのが理想なのでしょうが。

 多く見られる宗教画は、キリスト教信者にはまた違って見えるのだろうと、いつもと同じ感想を持ちながら歩いてきます。それにしても、良く出てくるモチーフ、サロメ。切り落とされた首と美女。本当に好きですよね。サロメそのものでなくても、このテーマは良く目にします。そして、いつも見たくないのについつい、切られた首の切り口を見てしまうのです。

 この美術館の絵は、どれも知っているだけに新鮮味はさほどないものの、再会を楽しみながら絵と絵を渡って行きます。
見ながら、ああ、この絵はここにあったのかとか、この絵には何だかいつも足を止められるとか、この風景はイタリアで実際に見たとか思いながら、止まった歴史の断片と、過去の才能のきらめきを目にしながら歩を進めます。

 そして、再びカフェのある中央のスペースへ。辺りはすっかり暗くなっています。階段を下り、エントランスホールへ。リニューアルしたミュージアムショップに足を踏み入れる頃には、グッズではなく、思わずそこのソファーに腰掛けていました。うーん。良く歩きました・・・

 既にこの美術館の作品目録は入手済みなので、結局買う物もなく、完全なるひやかし&ソファー利用だけでミュージアムショップを後に。この後、もっと憩う為、絶対今回どこかで行こうと決めていたカフェ、オーバーラーに向いました。

 オーバーラーと言えば、泊まっているペンションのすぐ前で、毎日その前を通るカフェにもかかわらず!何故か今回イートイン出来ておらず、結局ペンション前の本店ではなく、ミュージアム近くの支店でお茶をする事に。

 雨のぱらつく中を、折りたたみ傘でしのぎながら店内に入ります。ここは出来たばかりらしく全体に新しい感じが漂っています。
 ケーキのショーケースを見てケーキを選び、奥の席に移動します。私が選んだのはリンゴのトルテ。私が好きな、上にさくさくっとした焼き菓子の粒が降り掛けられたものです。友人が頼んだのは、チョコレートの模様が美しい、エスターハージートルテ。白地のチョコに茶色のチョコで羽のような模様が繊細に描かれたトルテです。それに、メランジェを頼みます。これぞ定番ですね。

 外はすっかり夜の雰囲気ですが、まだ時刻は4時前。今日はこの後、国立歌劇場で「ドン・カルロ」を観る予定です。
ゆっくり、まったりメランジュを飲み、ウィーンで初めてダイエットケーキを作ったといわれる割りには甘いオーバーラーのケーキをおいしいな〜と思いながら食べます。天井の高い店内には、私達以外、数組しかゲストは居ません。
落ちつくね〜。のんびりするね〜。と語っていると、そこに家族らしき一団登場。ヨーロッパ系・・・って随分大きなくくりですが、にぎやか家族登場。恐らくこの国の人ではない人々が入って来ました。
 好きなところにどうぞ、といわれてから、あっちでもない、こっちでもない。で、やっと座って、でもやっぱりあっちに変える!あ、でもテーブルをくっつけないと全員まとまって座れないとか、とにかく忙しく動いています。何を基準に何が気に入ったり何が気に入らなかったりしてるのか?!謎ですが、見ていると結構人間模様で楽しい!おじいさんの帽子が落っこちたり、ケーキを選びに再び皆が立ちあがったり、面白いな〜と見ているうちにそろそろホテルに戻る時間に。

   つかの間のまったり時間を満喫し、ついでにイタリア映画みたいなある家族の人間模様をちょっと垣間見て、オーバーラーの味も堪能出来満足して、ミュージアムオブクォーターの駅へと向かいました。


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