◇ 中央ペットボトル右横、カーテンに隠れ気味の白いのがヒーティング調節レバー ◇

・ウィーン旅行記 2004 vol.2・

〜ブンデステアターチケット発売所・デーメル〜

2004年11月01日


 夜中に目を覚ます事もなく、朝8時に起床。昨夜から、ちゃんと作動しているのかしていないのか、良くわからないヒーティングの「謎」を抱えたまま朝食を食べにフロント横の食堂へ。

 エプロンがわりの白衣を着て、いつも機嫌悪そうに朝食の面倒をみてくれるおばさんは健在で、これまたいつものように、我々の顔を見ると
「カッフィ?テ?」
と聞いてきました。
 「テ、プリーズ」
というと踵を返してキッチンへ。年は50歳ぐらいでしょうか。 金髪風(微妙な色!)なセミロングのくるくるした髪を左右ヘアピンでとめている、中背、小太りのおばさんは、私達がここに初めて泊まった時からずーっとここで働いていて、毎朝険しい顔のまま、テーブルに紅茶ポットを運んでくれるのです。

 朝食はバイキングスタイルで、ハム類のプレート、スライスチーズのプレート、ナツメグが山のように入ったボール、プレーンヨーグルト、ジャム各種、シリアル、オレンジジュース、アップルジュース、ミルク、そして大きなバゲットにパン色々がのっています。
 お皿を取って、早速マッシュルーム入りハムを取ります。これがいつもの定番チョイス。スライスチーズ、ヨーグルトにナツメグ、アプリコットジャムを入れ、オレンジジュースもグラスに注ぎ、オーストリアではこのパンが一番おいしいと信じているカイザーゼンメルを一つとって自分たちのテーブルへ。

 オーストリアはとにかくシャンデリヤ好き。朝食用の部屋にまで、キラキラゴージャス風(風がミソ)なシャンデリヤが2、3個ぶら下がっています。それを眺めながら、落ちついたピンク(このペンションのテーマカラー)色の布貼りの椅子に腰掛けます。そういえばマリアヒルファー通りではマクドナルドまでシャンデリヤ付きだったなぁと思いながら。

 胃が絶対に悪くならないほど薄い紅茶を飲み、今日の予定を話しながら食べ進みます。それにしても、相変わらず、ここの何の変哲もないアプリコットジャムは何故かおいしい。実は、ヨーグルトに入れた大きめのナツメグも兆度いい甘さで、柔らかく炊けています。絶品とはいいませんが、どれもそれなりにおいしい朝食です。

 大きなボールになみなみとヨーグルトをよそっている白人のおじいさんを見つけ、『凄いなぁ、あれ全部一人で食べるのかぁ。日本のブルガリアヨーグルト1パック分ぐらいだなぁ』と驚きながら朝食終了。
 ここで、謎のヒーティングについてフロントに座っている、ここの女主人と私が思っているおばさんに聞いてみる事に。
「あの、昨日ちょっと寒くって。ヒーティングがちゃんと動いているのかどうか、分からないんですけど。使い方を教えてくれませんか?」
「あら。寒かったの?ちょっとまってね」
と、急にドイツ語に切り替わり、ベッドメーキングスタッフに私の質問の内容を伝えはじめました。
「じゃあ、これから彼女が一緒に部屋に行くから」
「ありがとう」
という事で、3人で我々の部屋に。まさか一緒に人がついてくるとは思ってなかったので、ちょっと散らかってる部屋にドキドキしてしまいました。

 さて、ここで昨日何度も触った壁から出ているヒーティング用と思われる白いプラスチックのダイヤルの前に全員が集合。
「これが、ヒーティングの調節になってて、今が4だから寒かったんじゃないの?」
とポニーテールのお姉さんがスパっと切ってくれました。
「6がマックスね。寒かったら、6にして。これでいいわね?」
と言われると、うーん。。。やっぱりこれしかないのかと思いながらも
「ありがとう」
と答えてしまいました。ヒーティング。エアコンでなく、ヒーティング。白い金属の柱がいくつもつらなっていて、それが部屋をあたためるヒーティング。風が出てくる訳じゃないから、動いてるのか、動いてないのか全く分からないヒーティング。まあ、仕方ない。今夜は6にしてみようという事で一応納得した事に。

いよいよウィーンの街の散策が始ります。

 まずは、これから毎日使う事になる地下鉄、シュテファンプラッツ駅に向かいます。目的は1週間定期の購入。これがあれば、12.5ユーロで一週間地下鉄、路面電車、バスが乗り放題です。
 紙幣が1枚しか入らない自動券売機に、イケてないと怒る友人(笑)。私に言わせれば、週間パス購入時、写真付き証明書の発行(又は保有の確認)が必要で長蛇の列に並ばされるロンドン地下鉄より、よほどイケてます。

 次はオペラ&バレエチケットの受取りに国立歌劇場と王宮エリアの間にある、 ブンデステアターチケット売り場へ。ここは王宮の温室横あたりに位置し、とても寂れた雰囲気。初めて行った時には本当にこんな所でチケットのピックアップが出来るのか、不安になったものです。
 外壁に各劇場の舞台写真が貼られている以外はかなり殺風景で、奥まった所にあり、関係者以外は立ち入ってはいけないような雰囲気なのです。
 入り口は門があるでもなく、車道の延長のような感じだし、入ったら入ったで楽器の音がしてたりする学校のような飾りのない建物に囲まれる格好になるのです。そして、左手奥のチケット売り場は、市役所の延長のような横に広がった窓口、活気の無い静けさに包まれ、「国立」の雰囲気が漂っていました。

 今日は祝日なので、午前中で営業は終わってしまうはず。何としてでも今夜のチケットは手に入れておきたいところです。という訳で、いつもの舞台写真が貼られた外壁を見ながら車道の入り口を通り足早に中に入って行きました。ところが・・・

「これって・・・」
「どうみても、閉鎖されてるよね」
硝子の扉は全て閉められていて、中は空き家状態。これにはちょっと愕然としてしまいました。
「引っ越し?」
「引っ越しだね。地図が書いてある」
硝子のドアには地図付きの貼紙が。現在地が赤でかかれていて、引っ越し先まで矢印がのびています。どうやら、ここを出て、右に進み、角を右に折れる。右折まではかなりあるような図です。
「うーん。とにかく、そっちに行ってみよう」
図によると右折までは結構な距離。道を渡るようです。と言う事は、オペラ座という事?

 チケット販売所のあるブロックの前の小さな道を渡ると、そこは国立歌劇場(オペラ座)。地図からすると、歌劇場のカラヤン広場近くのチケットブースに行くようにという事のようです。オペラ座内にある音楽専門店、アルカディアの前まで来ると、チケット売り場らしきものが現れました。しかし、ここは休み。しかも、またまたここじゃなくて、こっちに行ってねという地図が・・・祝日だからここは休みなのか、ここではないのか。そこにモーツァルトオーケストラのチケット販売員が登場。彼等はモーツァルトの時代風マントが目印です。
「モーツァルトのコンサートはいかが?」
「私達、チケットの予約があって受け取りに来たのだけど、開いてないの」
「ああ、それならここを右に行って、右に行くとチケット販売所があるよ」
「ありがとう」
という訳で、オペラ座正面を通ってオペラ座に沿ってチケット売り場を探していきます。ところが・・・どこも開いてない〜っ!!!気付くとまた例のモーツァルトコンサートのお兄さんの場所に戻って来てしまいました。おかしいっ!!
「何処なの、何処なんだっ!!」
「もう一周する?」
そしてまたカラヤン広場を通ってオペラ座正面に。すると、4、50代ぐらいの東洋系の女性が開かないオペラ座のドアに手をかけて、揺すっていました。懸命に中を覗きながら。

我々がそばにいくと、こちらに振り向きました。
「あの・・・おはようございます」
日本語で語りかけてみたところ、
「ああ、おはようございます」
やはり、日本人でした。
「私ね。今夜のオペラのチケットをね、交換したいのよ。なのに、どこも開いてないの!」
「私達も予約しているチケットを引き取りに来たんですけど」
「どうしたらいいのかしら。あなた達は何を見るわけ?今夜?今夜のチケットなの。そう」
 おお。饒舌&マイペースなテンションの高さ。声をかけたのは吉と出るか凶と出るか!(笑)

 とりあえず、仕方がないので我々もそのおばさんと同じようにドアの隙間から中をのぞいてみます。見えたのは裏方スタッフの男性一人。果敢に硝子越しでは聞こえないのに、中のスタッフに声をかけてみるおばさん。
「エントシュルディグング!すみませーん!あー、駄目ね〜」
朝から全快、ハイテンションな方です。
「あの、さっき事務所の入り口があったんですけど、そこに行ってみます?」
という訳で、今度は3人でオペラ座を一周。

 途中、彼女が何をどうしたいのかを語ってくれました。それによると、明日のフォルクスオーパの『椿姫』のチケットを買っていたそうなのですが、小澤が振るので『フィデリオ』を見たい!と思い、ホテルのコンシェルジュに言って手配をしてもらったそうです。
 それで、何をしに来たかというと、椿姫のチケットをキャンセル、払い戻しにしたいらしいのですが、
「フィデリオ、高かったのよ。27000円ぐらいかしら。高いわよね。それぐらいするものなの?」
「席にもよりますけど。コンシェルジュを通してだと、手数料は入ってますからね。でも、日本だと、有名な引っ越し公演は演目によっては5万、6万はいい席だとしますね。ウィーン国立歌劇場だと、それぐらいはすると思います。」
「そう。ところで、フィデリオの筋書き知らない?私全然知らないのよ」
「劇場でパンフレットを買えば、日本語で筋書きが書いてるはずですよ」
うーん。「とりあえず小澤」な日本人って多いんでしょうね。

 さて、オペラ座の周囲ぐるぐるツアーの目的地、事務局の入り口に到着。スタッフ出入り口のようなところに思いきって入ってみました。受付に座っているのは、50代ぐらいのおじさんです。
「すみません」
と入って行くと、ちょっと迷惑そう。
「チケットの引き取りをしたいのですが、開いてなくて」
「いや、開いてるよ。ここじゃなくて」
と説明が始まります。でも、どう考えても、その説明では開いてる場所に辿り着けるとは思えない。えーい、仕方ない、閉鎖された所に一度戻るかという事に。
 迷った時には最初からやりなおす。という事で、三人でブンデステアター「跡地」を目指します。何でこんなに苦労してるのか訳がわからず。

 この道を渡って行くと、昔のチケット販売所があって、と信号待ちをしていた時、何度か目に入っていた建物をまじまじと見ました。
「あれ?あれかな?あれだな。バンクって書いてたから違うと思ってたけど、あれなんじゃない?」
「ああ、あれだ!カッセン!!」
見ると、昔の販売所と同じブロックに、とってもきれいなチケット販売所が。
「だって、銀行って書いてたから、違う違うと思ってた〜」
「以前の汚い、古いチケット売り場と余りにもかけ離れてる〜きれい過ぎっ!!」
と騒ぐ私達。
「見つかりました。あれです。あそこ!」
とフィデリオなおばさんに指差して教えます。
「あったの?あれなの?」
という事で、無事三人で自動扉の中へ。ここに辿り着くまで、1時間近く?うろうろしてしまいました。情けない…

◇ ブンデステアターチケット販売所 ◇

 中に入ると、もうそれはそれは美しく(以前に比べて)見違えるほどモダンなチケット販売所。複数あるブース(といっても、デスクとパソコンぐらいで開放的)で受付がされていて、スタッフもセーターなどのラフな格好で、昔の市役所的雰囲気は全くありません。
 予約しているオペラのチケット3演目の予約番号を渡し、スムーズに発券。その上、いよいよドキドキの瞬間です。
「11月4日の、ドン・カルロのチケットはありますか?」
実はこのチケット、予約時に売り切れという返事が来ていたものです。
「11月4日・・・」
とPCで検索。そして、その答えは、
「今残っているのは、157ユーロの席だけ。ここと、ここ」
年配のスキンヘッドに近いスタッフが指差したのは、土間席の端と、舞台に向かって右側の舞台側から3つめのボックス席最前列でした。
「ここしかないね。人気がある演目だから」
そこで友人と二人で相談。どうする?約22000円かぁ。せっかくここまで来たんだから、買っちゃえ!という結論に。
「えっと、ここだと視界はどうなんでしょう。舞台に近いから、舞台の左右が見えないとかは?」
「良く見えるよ。土間席よりボックスの方が絶対いい。前に背の高い人が来たら、見えないよ。絶対こっちだね!」
という事で、舞台から3つめの箱の最前列を購入。後で本当にこの時チケットが残っていた事と、おじさんのアドバイスに感謝する事になります。

 さて、無事チケットの購入と受け取りが終わった我々の後ろで、英語で激しくやり取りをしているフィデリオなおばさん。通りすがりに、にっこり笑いながらさよならと挨拶をして、お別れしました。

 受け取ったチケットの総額を考え、とりあえず近いし通り道なのでホテルに置きに帰ります。思わぬところで時間をとってしまったと語りながら。

 さて、予定していた用事は全て片付いたのでここからが観光です。まずはグラーベンを通り、ペスト記念碑の横を通ってデーメルに向かいます。
 ディスプレイが話題になるというデーメルのショーウィンドーの中にあったのはお菓子で出来た白馬。そして、もう一つのウィンドーにあったのは、女性の人形。どれも見事です。
 チケット騒動で時間をとってしまったので、朝食から少し時間があいた事もあり、せっかくなのでここでお茶をする事に。

 店内は美しいボックスに入ったチョコレートで美しく飾られています。その奥にはケーキの入ったショーケース。その後ろには、オープンサンドなどのおいしそうな軽食が入ったショーケースが。もう、目移りして目移りして。
挨拶をかわしたスタッフに、中で食べますと伝えケーキを選んで紙に書いてもらいます。私が選んだのは、ヨーグルトムースの上にラズベリーなどのベリー系フルーツがゼリーでよせられているケーキ。友人はチョコレートベースの、エスターハージトルテをセレクト。紙を受け取り奥のテーブルへ。

 ベリーショートが似合っている笑顔がチャーミングな金髪のスタッフに、メランジュ(カプチーノと同じようなものですが、シナモンパウダーは無しです)と紙に書いてもらったケーキを頼みます。ウィーンの店はどこもそうでしたが、老舗カフェのウェイトレスに若い人は少なく、だいたい30代〜40代ぐらい。あるいは50代ぐらいの人が主流でした。

 運ばれて来たケーキを早速賞味。小躍りするほどの感動ではありませんが、やはりおいしいです。職人が作ったケーキという味です。そして、私達が座っている場所の隣のガラス張りの部屋では、大きな大きな大理石のテーブルで若い職人がケーキを作っています。
 メランジュのしっかりしているスチームミルクに砂糖をふりかけ、そっと飲んでそのザラザラっとした舌触りに思わず微笑んでしまいます。口の中で砂糖の粒をジャリジャリっと噛んで、醍醐味〜っと一人満足モードに。その後泡を壊さないように、スプーンでゆっくりメランジュをかき回します。

 お互いのケーキを一口交換などしながら、デーメルを堪能。その後、しっかり友人はチョコの買い物をして、すぐ目の前にある、王宮横のミヒャエル教会に向かいました。

◇ デーメル店内 ◇

 


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