◇ ウィーン国立歌劇場内部 以前と違い、撮影禁止が解除されていました ◇

・ウィーン旅行記 2004 vol.20・

〜 オペラ『ドン・カルロ』その2〜

2004年11月04日


 私が聞いた前評判と街中に貼られているポスターからすると、かなり斬新な演出かと思いきや、逆にびっくりするぐらい普通の時代物のコスチュームで登場する主役達。
 ドン・カルロは短髪に口&あごひげ、白のシャツと黒のパンツで全体に丸っちい。(丸いではなく、丸っちい、という言葉がしっくり来る。笑)背丈が余りないのが衣装により強調され、少々ドレッシーなシャツの襟が似合ってないような似合ってるような・・・まあ、とにかく見るからにテナーです。(いや、別にテナーに偏見があるわけではりません。笑)
 青年というにはおじさんに見える彼と、ちょっと肝っ玉母さんが入りかけの顎が丈夫そうなエリザベッタのカップルは、さほど興味の対象となることなく、まあこんな感じだなという認識。歌も目を見張る!というほどではない今、しつこいようですが私の注目はやっぱりポーザ候とエボリ公女です!そしてフェリペ2世。ウィーンのバリトン、低音部担当の人達の何と背の高い事か!と毎回そのすらりとした姿に目を奪われる私の期待は嫌がおうにも高まるのです!って、別にオペラなのでビジュアルばかりを重視している訳ではないのですが、低音部の方々は往々にして声も姿も良いのです。

 その中でもかっこいい役どころ、役得なポーザが遂に登場!金髪を後ろで一つに束ね、黒いマントを翻して颯爽と登場しました。遠目なので顔の表情までははっきり見えませんが、その背の何と高いこと。すらっとした姿に思わず、『かっこいい!あ〜ポーザはこうでなくっちゃ』と少々はしゃぎ気味に。白いシャツに黒のパンツ、それに黒のコートの彼は、かなり現代的。一人今の時代に居てもおかしくないいでたちで何だかスタイリッシュ。そして2mはあるのではないかと思うほどの長身です。しかし、良く見ると、黒ぶちの丸メガネをかけ、新聞記者のように手帳を持って常に何か書き止めようとしている彼は・・・もしかして、いつものポーザ侯とはちょっと違って「正義感溢れる好青年。包容力があって誰からも頼りにされるヒーロー的な男」(これは、あくまでも私のイメージですが)からは逸脱している??ちょっとおたくっぽいというか、おどおどしてるというか、アウトドア派というより、インドア派なような・・・だって、ド近眼系なんですもの(笑)ポーザ候なのに、メガネがなきゃ、何も見えないって・・・これは一体どうした事?(苦笑)

 ですが、歌は合格点!(私にそんな権威は無いのはよーく分かってますが。笑)いや〜ちょっと難ありなキャラ設定ですが、やっと楽しくなってきました。私の大好きなポーザとカルロのデュエットもやはりいい!この曲、いつ聞いてもいいです。フランス語の響きも美しい。

 このオペラの物語が気になる方のために、大変大まかに説明させていただきますと、2幕の舞台はスペイン、マドリードのサン・ジュスト修道院。悩める王子カルロは祖父カルロ5世の墓に来ています。すると、亡き祖父の声で「心の戦いは、天上で静まるだろう」と語る修道僧に出会います。
 そこにポーザ候が登場。カルロは戦地フランドルから帰ってきたばかりの親友ポーザに、王妃となったエリザベッタ(義理の母)を愛していると告げ、ポーザは驚きつつも報われない恋に悩むカルロをここから連れ出すべく、正義の為に、スペインの支配からフランドルを解放する為に、フランドルに闘いに行こう!と訴えます。
初めてこの作品を見た時に、二人で手に手を取って「愛のために死ぬのだ!」と余りに連呼するので、えっ?これってもしかして、危ない歌??っと、勝手にドキドキした思い出があります。大丈夫です。相当バカだな〜と自覚してます(笑)

 と、ここで初めてオペラグラスでポーザの顔を見たら・・・あー!!この人知ってる!!NHKBS2のロイヤルクラッシックシートで放送のあった、パリオペ座の「メリー・ウィドー」のダニロではありませんか!!!(キャスティングをちゃんとチェックしておけという言葉がどこかからか聞えてくるような・・・)と同時に、すっごく歌を歌うとシワが寄る顔だってことも発見。。。ぷっ。サルみたい。っていうか、ゴリラ系??ちょっと怖い〜っ と、ここでこのオペラは基本的に遠目モードで自分にお届けする事に決定(笑)とっても失礼な物言いですね。あはは。でも、歌も姿も、本当に!!いいんです。ご存知の方も多いと思いますが、本当に、いいんです!(しつこい・・・)因に、彼の名前はBo Skovhusと言います。

 さて、デュエットが終わると登場するのが王と王妃。そんな二人を柱の陰から見つめるカルロとポーザ。フェリペ2世演じるAlastair Milesは思ったよりも若く、痩せていて背も高く、髪はかなり薄いですが、なかなかダンディーな人でした。まずは王妃と供に寺院の廊下を歩いて行くに留まっているのでどんな声なのか分かりませんが、後の独唱が楽しみです。

 この幕の見せ場の一つ、いよいよエボリ公女の登場です。寺院の庭で女性たちがたむろしている中心に、エボリが居ます。
 基本的にソプラノよりメゾ・ソプラノの方が好きな私にとって、エボリは好きな キャラクターの一つです。特にこのエボリのソロは好きな曲。
アラビアンナイトを連想させる内容で、男の人が心替わりをしてしまったら、ベールをかぶって美しく見せ、愛を取り戻しなさい。というような歌詞が物語り風に歌われていきます。スペイン風なリズムと音の連なり、短調から長調に変わる部分の軽やかさ。エボリにつきまとう小姓は、やはり女性が演じています。
エボリはこの後、「自分の美貌が疎ましい」というような歌を歌うだけに、はやりここはぜひとも美しい人に演じていただきたいところ。そして、今日のエボリを演じるNadja Michael はスレンダーで、美しく、声の伸びも良く、完全に当りでした!観客からも盛大な拍手が贈られます。

 と、ここで親友カルロのためにひと肌脱ごうと思ったポーザがエボリの元へやってきて、ある手紙を渡します。その内容とは、会って欲しいというカルロからの手紙。手紙には、ポーザ候を信頼して欲しいという事も書かれている。ポーザは彼が悲しみの中にいる事を告げ、彼に会って欲しいと頼みます。
 そんな二人のやり取りを聞きかじったエボリは、何故かカルロが自分を好きで悩んでいると思い違いをしてしまい、すっかり恋愛モードに入ってしまうのです。

 漸く王妃との時間を持つ事が出来たカルロ。彼はポーザ候に誘われたフランドル行きを国王に許可してもらえるよう、口添えを頼みます。王妃と王子の立場で話し始める二人。しかし、互いの感情を押さえる事は出来ず、遂にお互い抱きあってしまいました。その感情を先に断ち切ったのはエリザベッタ。カルロは立ち去り、そして王妃だけが一人残ります。
 そこに国王フェリペ2世が登場。王妃が一人で居る事に不審を抱き、その怒りは王妃付きの女官に向けられました。王は、王妃が頼りにしている、彼女が自分の国から連れてきた唯一の女官を解雇してしまいました。涙にくれる女官を深い悲しみの中にあるエリザベッタが慰めます。この歌は王妃の優しさと深い悲しみが伝わってくる歌です。そしてそれを聞く王の、上手く行かない二人の関係に苦悩する姿が印象的な歌でもあります。

 沈痛な面持ちの人々が去る時、ポーザ候を引き止めるフェリベ2世。この機会を利用して、ポーザはフランドルにおけるスペイン支配の惨状を訴えます。彼の勇気に心動かされた王は、ポーザに信頼をおき、カルロと妃であるエリザベッタの仲を自分は疑っていると告白します。二人をどうか監視して欲しいと告げるフェリペ2世。そして、彼はフランドルの新教徒達の救済を行っているポーザ候に、宗教裁判長を侮るなと忠告します。
 この宗教が絡んでくるところが、日本で生まれ育った私などにすると、この話しを少々分かりにくくしているところなのですが、とにかくドン・カルロと宗教は切っても切れない仲というか、話しなのです。

 さて、すれ違う王と王妃。そして、未だくすぶり続けているカルロとエリザベッタの恋。カルロに愛されていると勘違いをおこしているエボリ。国王とカルロ、双方から信頼されているポーザ候。彼らの運命やいかに?


ウィーン旅行記 2004 vol.21を読む

ウィーン旅行記 2004 vol.19を読む

ウィーン旅行準備号を読む

HOMEに戻る