〜 オペラ『ドン・カルロ』その3〜
2004年11月04日
さて、物語は三幕に。エリザベッタの住む宮廷で仮面舞踏会が行われている夜。エリザベッタは人々から気付かれずその場を離れるため、エボリ公女と仮面を交換します。そしてエボリは王妃の仮面をつけた姿でカルロを深夜の逢い引きに誘いだし・・・
と、ここからがこの『ドン・カルロ』新演出の論争の幕開けといいましょうか、論争ネタになった一番のメインが始まります。
普通ならこの後、エリザベッタだと思っていたのが実はエボリだったとカルロが気付き、自分が想われていると思っていたエボリが彼が本当に好きだったのはエリザベッタだと気付き、激怒し大騒ぎになるのですが、この「新演出」は違います。
「エボリの夢」そう名付けられた劇中劇といいましょうか、寸劇がここで突然始まるのです。
「エボリの夢」と舞台に突如現れたその文字。本当ならオペラの定番、バレエシーンがこの「エボリの夢」に大変身。では、ここからはエボリモードでお届けします。
今日は主人の両親が我が家を訪れる日。ああ、カルロ、早く会社から帰って来ないかしら。お部屋の片づけは済んだし、おもてなしの料理も準備OK。鶏がオーブンで焼き上がるのを待てばこれで完璧よ!
あ、玄関のドアが開いた、私の愛しいカルロが帰って来たんだわ!カルロ、愛しいあなた、お帰りなさい。ご両親はまだ到着してないわよ。さあ、あなた、ガウンに着替えて。お疲れでしょう。えっ?何?何か焦げ臭くないかですって?ああ!!!何てこと!私ったら、オーブンの料理を忘れていたわ。
キャーッ。焦げてしまった、どうしましょう。困ったわ、困ったわ、義母様に何て思われるかしら。あら、カルロどこに電話をかけているの?えっ?ピザ屋?だって仕方ないだろうって・・・それはそうだけど。仕方ないわね。
あ、ベルが鳴った。お父様とお母様だわ!!こんばんは、お父様、お母様。まあ、お腹の子にもうクマのぬいぐるみを下さるの?まだ生まれてもいないのに。とっても嬉しいです。かわいいわ。ありがとう、お母様。さあ、おかけになって。お料理はね、ちょっとした手違いで、あ、ほら。ピザが届きましたから。ね、さあ食べましょう。
と、勝手にエボリになり済ましてお届けしましたが(笑)とにかくここからはエボリの空想、エボリの夢。カルロ王子と結婚したら、こんな幸せな結婚生活を送るのよ〜っ!!!という寸劇ですね、そんな寸劇がいきなり始まるのです。しかも、いきなり時代設定は現代だし。
セットもがらっと変わって、白一色だった舞台セットの前に、花柄のヨーロッパな壁紙の部屋が登場。正面中央寄りの左は玄関から続くドア。そして、そのすぐ隣のドアの奥にはキッチンが見えています。正面右側にはテーブルセット。エボリは黒のワンピース姿でカルロの帰宅を待っています。そこに、トレンチコートにネクタイ、スーツ、鞄をさげた明らかにサラリーマンなカルロが登場。いそいそと上着を受け取るエボリ。新婚家庭の設定です。まあ、この際王子とか王族とか、そういう身分は無視した設定ですね。
そこに、ジャケット姿のフェリベ2世と落ち着いたピンクのワンピースに白いパールをつけたエリザベッタが登場。息子夫婦の家に遊びに来た両親という役割です。セットには水色のベビーベッドも登場しています。そして、極めつけは何と、ピザ屋になったポーザ候!この時ばかりは場内爆笑でした。ドミノピザとかピザハットとか、とにかくそのたぐいのデリバリーの姿、つまりキャップをかぶってつなぎを着てるポーザが、おずおずっとドアの所に立ってる訳です。片手にピザの箱を持ちながら。いやぁ、似合ってましたよ(笑)
とまあ、エボリはカルロ王子とすっごくすっごく、もの凄〜く結婚したいと思ってる訳です。具体的な結婚生活を思い描けるほどに。
それにしても、大胆といえば大胆・・・かな?私としては、とっても分かりやすくて、笑いの要素もあって、目くじら立てて怒るほどの凄い新解釈ではありませんでしたが、繋ぎを云々しはじめると、確かに繋ぎは悪いと言えます。
空想の寸劇の後は、シビアな現実が。先にも述べたように、カルロが好きなのは王妃エリザベッタだとエボリが気付いてしまうのです。その事実の発覚を恐れたポーザ候はエボリを殺そうとするのですが、思いとどまり、必死にカルロを庇おうとしますが、エボリは怒り狂ったまま立ち去ります。そしてポーザ候は、カルロにエリザベッタとの関係が疑われるような手紙を全て自分に預けてくれと申し出て、受け取り立ち去るのです。
さあ、ここで第三幕半ばですが何故かインターバルです。エボリの夢の突然の登場に、友達といや〜、ちょっとびっくりしたねと話しながらボックス席を離れます。
美しい階段の見える場所に移ると、既に手にグラスを持ってる人もあり、すっかり幕間のリラックスモード。そして我々も、オペラ座内、ユリウスマインルのカウンターへとドリンクを求めて移動しました。
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