◇ ウィーン国立歌劇場内部 以前と違い、撮影禁止が解除されていました ◇

・ウィーン旅行記 2004 vol.22・

〜 オペラ『ドン・カルロ』その4〜

2004年11月04日


 先日のバッグステージツアーで訪れた時とは打って変わって華やかな雰囲気のロ ビーには、紳士淑女が溢れています。5時間にも渡る上演のインターバルは、何だかゆっくりゆったりムード。思わず、マンウォッチングも兼ねてそぞろ歩いてしまいます。
 部屋から拭き抜けの階段へ向い、魔笛の部屋に移ろうとした時、ブロンドの髪を結い上げ、美しいドレスを着た女性とすれ違いました。少々周りとは雰囲気が違う。と思ったら、何とテレビカメラマン付き。えっ?今日って劇場中継の日だったの?!と驚いていると、早速彼女がマイクを持ち語り始めました。ドイツ語だから分からない・・・(涙)

 と、オペラ座内のモニター、階段エリアに設置されたスクリーンに彼女が大写しになりました。もしかして、生放送でオーストリア全土に放映中?と面白いので中央階段に設置されたスクリーンを見上げて、階段付近に移動。
 すると今度は正面玄関で騒ぎが起こりました。何々?何なの?!と見下ろしていると、囚人らしき男達が手を繋がれて歩かされています。その前には丸い真っ黒なサングラスをかけた黒い装いの牧師姿の男が。どうやら宗教裁判の囚人達とそれを裁く宗教裁判の裁判官のようです。

  いつの間にかスクリーンには囚人達が大写しになり、今やロビーに居た観客たちは舞台の外で繰り広げられている物語に釘付けです。ああっ!こっちに来た!と思ったら曲がった!と何故かほっとしてしまうこの迫力。
 歩け、歩けと促され、乱暴に扱われている囚人たちがぞろぞろと1F土間席。(分かりやすく言うと、アリーナ席の位置づけです)へ追い立てられています。と、ここで劇場内から鳴り響く音に気づきました。
えっ?ええっ!!!ええええええっっ!!!もしかして、もしかして、もう始ってるの?!何の合図もなくもう舞台再開しちゃってるの?!何それ、何なのよっ!そんなの聞いてないよっ!(怒)ルール違反じゃないのっ!
と、私と同じく驚愕しちゃったロビーに屯してた人々が慌てる慌てる(笑)いや、笑い事ではありません!取り残されちゃったんですから。しかも、ほとんどの人が。まあ、8割型は置いてけぼり状態ですか?
 とにかく急げとばかりに小走りで自分のボックス席を目指します。一体何が起こっているのか?!

 漸く辿り着いた自分の席に駆けより、目に飛び込んで来た映像は、出演者達が勢揃いして国立歌劇場の合唱団と歌っている姿でした。主役達は何故か客席を歩いています。イメージとしてはパーティーです。だって、イブニングに蝶ネクタイのスーツ姿という出で立ちですから。しかし、これは今始まったというより、ちょっと時間が経っている。どう見てもかなり事態は進んでいる感じです。

 あ〜もう、歌聞き逃しちゃったじゃないの〜 バカバカバカっ!!オーケストラも何事も無かったかのように勢揃いしてるしっ!
 と、ここにさっきの囚人達が乱入。舞台に追い立てられていきます。はっきり言って、次々に色々なことが起こるので、今となっては一つ一つちゃんと整理がついていますが、リアルタイムでは何が何だかになってきています。と、今度は天井からA4サイズぐらいの紙がばら撒かれました。
 天井から降ってくる紙、紙、紙・・・ひらひら、ひらひらと舞い落ちる紙を一つ手にとってみると、何とそれは白黒の写真のコピーでした。どうも宗教裁判に関係してるらしき写真のようですが、私には何のことやらさっぱりわからない(苦笑)同時進行で、舞台正面の大きなスクリーンにもばら撒かれた写真の映像が映写されています。

 ま〜分かる事といえば、リアルな演出でしょうか?物語に自分も巻き込まれ始めたと観客に感じさせるための演出が繰り広げられたわけですが、これはですね。見逃した!!!って焦る気持ちが真っ先に来て、振り返れば凝った作りなのですが、リアルタイムでは何が何だか分からないザワザワ感があって、残念ながらとっても効果的!とは思えませんでした。

 という事で、何時の間にやら始っていた(過去形が悔しいっ!)舞台に駆け付けた観客が座るのも忘れて、人によっては出演者が客席を歩いてしまったものだから座るに座れない状況に追い込まれて、立ち見しているうちに、宗教裁判はどんどん進んでいきます。そして、漸く舞台も客席も落ちつきを取り戻しました。
 はぁ。こんな風に抜き打ちをされたんじゃ、次の幕間も油断できません!困ったものです。全く(苦笑)

 さて、慌てた人が落ちつきを取り戻し、ゆっくりと椅子にこし掛け舞台に集中した頃、カルロが逮捕されました。
 ここでまたざっとあらすじを書いておきますと・・・この変にリアル演出な宗教裁判は、本当はマドリードの広場で行われていまして、異端者の火刑シーンなのです。そこにカルロがフランドル代表とともに現れ、国王にフランドルの平和を求めますが、フェリペ2世はこれを拒否。カルロは国王にブラバンドとフランドルの総督に任命して欲しいと願い出ますが、国王は意図的に息子を怒らせ剣を抜かせます。そこにポーザ候が登場。二人の間に入り、彼は王により昇格させられ、カルロは逮捕されるのです。

 とまあ、こんな内容ですが、今回の舞台美術は白で統一された無機質なただの白い箱のようなもので、人々の出で立ちも黒の現代風フォーマルといったもの。女性は普通のワンピースですし、男性はスーツ姿。どこから見ても、時代は今でイブニングパーティーという雰囲気です。しかも手にはグラスも持っていますから。

 まあ、こういう舞台もありなのだなぁと、もう何があっても驚かないと思っていた時ら、今度は演出方法でなく、解釈で私を驚かせる事が起こりました。
 何というか、まあ〜この演出家、本当に色々やってくれます(笑)
その場所とは、第4幕の冒頭。えっ?!そうなの?!そうだったの?!な展開が、この後私を待ちうけていたのです。


・この続きは来週更新予定です・


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