〜ミュージカル『エリザベート』 〜
2004年11月05日
さて、エリザベート初心者の私はとりあえず解説書をもらい、ブースをざっと見ただけで後でまた来る事にして、ネットで購入したチケットを片手に階段をどんどん登って行きます。うーん。このちょっとした狭さ、ロンドンを思い出します。
階段をうんしょうんしょと登り、辿り着いた先は、ボックス席!そして最前列!そうなんです。このチケット。凄い勢いで売れててびっくりだったのですが、幸運にも座高負けが起こらない!ボックス席最前列をどうにかキープ出来たのです。良席と思われる場所では、最後の2連番シートぐらいだったので、本当に間一髪でした。
ボックスから見下ろすと、既に土間席は結構人が入っています。そして、上の方の桟敷席もしっかり埋っている盛況ぶり。モーツァルトの頃からある劇場だけに、作りは本当普通のオペラハウスを小ぶりにした感じで、とても歴史を感じさせてくれます。いいなぁ、この雰囲気。この古さ。シートの色もシックだし、装飾もとてもレトロ。そして、ボックス席は普通のオペラハウスと同じく一人一人が自由に動かせる椅子だし。この庶民的、かつ歴史的な建物で、観客がわくわくしながら開演を待っているこの生き生きとした空間は、それだけでもう、既に楽しい!最後の夜にエリザベートを持ってきて良かったな〜と観る前から何だか、私の選択は正しかったモードに突入します(笑)
さて、ボックス席最前列は3人がけ。という事で、どんな人が来るのかと思った
ら、かわいらしいティーンエイジャーの女の子が登場。どうやら一人で来たようで
す。
日本語の説明書にざっと目を通し、その時を待ちます。客席はいうまでも無く超満員。本当凄い人気ですね。そして、オケピの用意が出来、いよいよその時が訪れました。
解説書によると、プロローグは「死者と夢見人たちの夜の世界」。暗殺から100年経った後も、裁判官がエリザベートを暗殺した男、ルキーニを尋問しているところから始まります。このMCを兼ねたルキーニ役が出て来ただけで上手いというのが分かった瞬間、流石ウィーンだと改めてその層の厚さというか、クウォリティーの高さに唸らせられました。役者としての演技力の確かさとこの魅力。もちろんドイツ語なので残念ながら話している内容は解説書に頼るしかありませんが、分からなくても彼が優れた役者でるのは分かります。
黒い帽子と囚人らしくボーダーのシャツ。それに黒のジャケットとパンツ。地味な格好なのにその存在感は凄い。本当に難しい役だと思いますが、これを日本では・・・本当に同じように演じられていたの?なんて、勝手に疑問をしょっぱなから持ってしまいます(笑)
そして、彼はエリザベートはトート(死)を愛していたと主張。ルキーニはエリザベートと同時代に生きた人々死者の世界から呼び出し、没落したハプスブルグ帝国を蘇らせます。アンドリュー・ロイド・ウェバーのような劇的なミュージカルらしいスケールの大きい音楽が鳴り響く中、床が大きく割れ、死者達が蘇ってきます。この舞台の仕掛けがなかなか凄いです。古い劇場ですが、かなり大胆に動くところをみると、かなりオートメーション化に力を入れているような気がします。
と、ここまでで既におおっ!と驚きの連続。 始ると同時に客席のボルテージはぐっと上がっていて、もう、全員が常連客?のような熱さなのですが、更にびっくりな展開はここからでした。もう、凄いです。ウィーンッ子ってこんなに熱い人達だったの?!って本当に驚きました。何がって、それはもう、この人、トートの登場シーンです!!!!!
金髪長髪で見目麗しいトートが登場し、舞台の天井部分から床にかけて斜めにかけられた橋のような板の上を、手すりのように張り巡らされたストリングスを握りながら自由自在に移動して自分はエリザベートを愛していたと歌うその、劇的な登場シーン。もう、これはロックコンサートのノリです。ワーワーキャーキャー本当に凄いノリ(笑)
口笛もあっちこっちから聞えて来て、文字通り黄色い悲鳴が起こり、もう、これ
ねぇ。トートはこの国ではスーパースターですよ。もう。完璧なるスターです。しかも、納得させるぐらい、かっこいいんです。本当に(笑)少女漫画の、陰を持った魅力的な美しい王子様ってところでしょうか。
これを日本では・・・写真しか見た事がないので、私がとやかく言う資格はありません。ふふふ。
歌が終わっても興奮冷め遣らぬ劇場で、この舞台本当は「エリザベート」じゃなく「トート」っていうんじゃないの?なんて思うほどの盛りあがり。
でも大丈夫。エリザベート、通称シシィもこの国の人には深く、深く愛されている王妃。そろそろ彼女の登場です。
ルキーニはエリザベートの生涯を、トートととのラブロマンスとして語りはじめる。という事で、漸く第一幕が始まります。
と、その時、この旅の出発前、ウィーンで『エリザベート』を初演の頃に観た友人から聞かされていた言葉が私の頭を過りました。
「顔が怖い方のエリザは歌が上手いの。顔がかわいらいい方より、絶対!顔が怖い方が歌は上手いのよ!!顔は本当に怖いんだけど、歌は絶対怖い方なのよ!!」
顔が怖いシシィ・・・顔が怖いシシィ?怖い怖いって、そんなに怖いのか?!とも思わないでもないのですが、まあ、彼女がそうまで言うのなら、本当に怖いんでしょう。多分。
でもとにかく!あー、ドキドキする。今日のシシィは一体どっち?怖い顔の方?それともかわいらしい方?見た目を取る?それとも実力?みたいな話しですが、選択権は私にはありません(笑)
運命の時が今、訪れようとしていました。
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