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・ウィーン旅行記 2004 vol.31・

〜ミュージカル『エリザベート』4〜

2004年11月05日


 再び劇場内の明かりが落ち、オーケストラピットに注目が集まります。間奏曲がはじまり、舞台はブダペストへ。

 エリザベートは皇帝とハンガリーの和解を成功させ、人々の歓声に包まれます。前半とは打って変わってエリザベートは自信に満ちて見えます。
 そして狂言回し、この物語のMCであるエリザベートを後に暗殺するルキーニは、このエリザベートの活躍がハンガリー独立運動を押し進める事になり、ハプスブルク帝国没落への道を切り開く事になったと語ります。そこに馬車に乗ったトートが登場。
 政治的な力もあると自覚したエリザベートは、今や死の象徴であるトートにも勝利します。自分の道を見つけたシシィはトートとダンスを踊るのです。

 すっかり自信を持ったエリザベート。そして親権を取り戻したのに、自分に夢中で全く皇太子ルドルフを相手にせず放ったらかしの母、エリザベート。幼いルドルフが歌う『ママどこにいるの』は、後のルドルフ王子の自殺を知ってるだけに不憫でなりません。そして、そんな油断をしているからほら、トート(死)がルドルフの前に登場してしまったではないですか。金髪のかわいらしいルドルフ皇太子と金髪の美しいトートのツーショット。物語と全く関係ない感想を言わせてもらうと、美しいです。ビジュアル的に、少女漫画です(笑)
 かわいそうに、ルドルフ皇太子はこんな幼い頃から死に魅入られてしまったのですね。詳しくはバレエ『マイヤーリンク〜うたかたの恋〜』を御覧ください、という感じですが、とにかくこの美しい死神はルドルフ皇太子を手懐けてしまいました。

 さて、次の場面はウィーン郊外の精神病院。突然訪問するエリザベート。そして、皇后が来たと騒ぎになってしまいます。現在各国のロイヤルファミリーが病院を訪問していますが、そういう活動をしていた、という事なのでしょうか。それとも、他にもっと別の意味がある場面なのでしょうか?
 次に登場するのは、彼女に敗北してしまった義母ソフィーと彼女の取り巻きが、皇帝に対するエリザベートの力をいかに弱めるかを話し合うという、いわゆるダークサイドの場面です。ここで彼等が出した案は、皇帝に浮気をさせるという事。そして彼等は売春宿から愛人を調達してきます。しかも、彼女は感染する病気を持っていたという、ちょっと驚きの展開です。ここで普通の感覚で物を言わせてもらうと、皇帝の愛人に売春婦というのは、オーストリアの不思議というか、良く分からない所なんですけど。随分オープンというか、上下が緩いというか、ちょっと日本人とは感覚が違うと思うんですけど、皆さんどう思われます?

 さて、そんな迷惑な行動に出た義母ソフィー達の一部始終を知っているトートは、エリザベートに皇帝が「特定の病気」に感染している事を暴露します。ショックを受けるものの、逆に彼女は皇后としてのあらゆる義務から逃れる最終的な解放としてむしろ喜んでいる、安堵するのです。彼女はそんなに皇帝が嫌いだったのねと、やっぱりここでも皇帝がちょっとかわいそうに思えます。そしてまたまたトートとエリザベートの最後のダンス。いやぁ、しかし。何回「最後のダンス」を踊ってくれるんだろう(笑)

 さて、ここからは有名なエリザベートの放浪の旅が始まります。皇帝ヨーゼフは母であるソフィーに彼女が自分達の結婚生活を破壊したと非難。しかし、彼女は王朝の為と自己弁護します。といっても、このお母さん凄いですよね。二人の仲を悪化させる為に、病気持ちの愛人を調達してしまった張本人ですからね・・・随分な母親です。
 一方エリザベートはウィーンを離れ、ヨーロッパ各地を旅します。相変わらずエリザベートに憧れ、そして良心の呵責に苛まれる皇帝。そしてそんな皇帝を理解しないエリザベート。彼女の旅は皇帝そしてハプスブルク家から逃れる為に見えますが、それを否定する男が一人。それは、ルキーニです。彼女が旅をするのは、迫り来る老いからの逃走だと彼は断言します。人一倍美容に気を使い、努力し、老いを恐れるエリザベートが、その現実から逃走する為に彼女は旅を続けているのだと。

 さて、エリザベートが全ての物から逃げるように旅を続けている間に、トートは彼女の息子、ルドルフ皇太子へ更に深く入り込んでいきます。完全に彼に魅入られてしまった皇太子は、トートの馬車にのり、権力奪取という危険な野望を吹き込まれます。いつの間にか大人になっている皇太子を見て、うーん。子供の方がかわいかったのに〜と思いつつ、息子がこんなに大人になっているのだもの、エリザベートも歳をとると妙に納得。
 これから先ますます不幸になるこの家族の行く末を考えると気が暗くなってきますが、それをどう描いていくのかと思うと、やはり舞台から目が離せません。


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