〜カフェ『ハヴェルカ』〜
2004年11月05日
ライトアップされたシュテファン寺院は、下から仰ぎ見ると正に聳え立っていま す。荘厳だけど親しみを感じます。この見なれた風景を背に、目的地に進むべく、グラーベンを歩き出しました。次なる目的地へ。夜の10時を回ってからの目的地といえば!カフェです。晩御飯です。そして、今向かっているのは、かなりマニアックなカフェです(笑)というか、地元の人しか行かないようなカフェなのです。
グラーベンをユリウスマインル方面に少し歩き、2つめか3つめの角を左に曲がると、カフェ「ハヴェルカ」があります。あるはずです・・・ある・・・こっちのはず・・・・・・・あれ??
私の好きなオープンサンドの店のすぐ側だから、こっちのはずなんだけど。あれれ?狭い道は適度に薄暗く、でも左手の店のネオンはけばけばしく、呼びこみらしい男性が・・・あれ?これってさっき舞台でフランツ=ヨーゼフが母親たちの思惑で連れて来られたいかがわしい店の延長線上にあるような店じゃない・・・よね?
と、少々心細くなりつつも、えいっ!と歩き出して数歩。目的のカフェ『ハヴェルカ』がやっぱりありました。ここは日付が変わるまでやっている店ですから、閉店ですと断られることは無いはず。という訳で、薄暗い小道にあるちょっと隠れ家的なカフェの扉を思いきって押してみました。
ドアの中にあったのは。所狭しと並べられた丸テーブルを囲み、ひたすら語っている人、人、人。間接照明しかない、雰囲気たっぷりの部屋。そして、スモーク。何というか、ボヘミヤンの集まり?(笑)
もしかして、エリザベートのプログラムを抱えて入ってきたアジア系の私達って、物凄く場違い?浮いてる??とにかく、めったに味わえない雰囲気です。
ちょっと圧倒されながら、でも面白い!と思って立っていると、燕尾服を着た80歳ぐらいに見えるおじいさんがやってきました。
「レィディース」
と声をかけられます。
「お二人かな?」
「ええ。二人です」
どうやらここの主のようです。そういえば、ガイドブックに確か家族経営のカフェとあったはず。奥さんと思われるおばあさんも狭い店内を行き来しています。かなーり高齢のご夫婦です。
「ちょっと待って」
と言われて見まわした店内に空いてるテーブルは見当たりません。何だか相席は当たり前な雰囲気が漂っているだけに、これからの展開が読めず、どうなるんだろう、どうなるんだろうってちょっとドキドキ。丸テーブルの論争中なグループにポーンと入れられたらどうしようっと少々心細く待っていると、どこをどうやって生み出したのか、全く謎ですが、壁際に二人がけの小さなテーブルが私達を待っていました。今度は若い男性にこっちこっち、と案内されます。。。もしかして息子さん?それともお孫さん?
人と人の間をどうにか刷り抜け、小さな四角い二人がけのテーブルに着きます。私の席のすぐ後ろには、所狭しとかけられたコート用スタンドが立っていました。場所を見つけて我々のコートもそこにかけます。そしてどうにかこうにかこしかけたテーブルは、納まってしまえば非常に居心地が良い。何というか、小さな穴にスポッとはまってそこから顔をだして周りを見まわしてるみたいな感じがします。
と、そこでまだおじいさんが登場。
「ご注文は?」
「あの・・・何か食べるものはありますか?」
「いやぁ。うちは飲むだけだね。食べるんだったら、この道を少し行ったところにまだ開いてるイタリアンがあるよ。そっちに行ったら?」
と、ここで忙しいからかまってられないとおじいさんは退却。と、今度はさっきにお兄さんが登場。
「さー。お嬢さん方何にします?」
「えっと。メランジュと、ブフテル、ありますよね?」
この「ブフテル」というのはですね。このお店で夜10時から出してくれる特別メニューらしいのです。
「ブフテルね。一つ?二つ?」
「あー。量がわからないんですけど」
「了解!」
と言ってにこにこっと笑い彼もまた忙しいので風のように去って行きました。
まあ、一応オーダーは済んだので再び店内ウォッチング。さっき入ってきたドアの上には、古めかしいポスターが貼られています。そして、隣り同士の声が聞こえにくいぐらいざわめく店内。これぞカオスって感じです。ああ、面白い!映画で見るヨーロッパの都市の夜を体験してる気分です。そこで思わずこの雰囲気が上手く記録できますように!と祈りながらデジカメをビデオモードにして撮影。
そうこうしているうちに、銀の小さなお盆にのせたメランジュが出てきました。白いカップにメランジュ。そして小さなガラスのコップには水。そして小さなティースプーンに砂糖。嬉しくなるぐらい定番スタイルです。そして、例のお兄さんがにこやかに届けてくれたのは、二人に丁度良いぐらいの量のブフテルでした。彼は終始にこにこしながら私達に話しかけます。
「〇△□×〇△□×〇△□×〇△□×?」
一瞬何語?と頭が真っ白になった後、耳に残った「ヤーパン」とか「ヤパーニッシュ?」でドイツ語だと漸く認識。
それでもめげずに、彼はにこにこ笑いながら質問を繰り返してくれます。
「日本人なの?」(予想翻訳中。。。笑)
こくこくと頷きながら「ヤー、ヤー」騒ぐ私達。
「旅行なの?」(予想翻訳中。。。笑)
再びこくこくと頷きながら「ヤー、ヤー」騒ぐ私達。あの・・・二人とも大学でドイツ語選択してたんですけど。。。我々が悪いのか、ドイツ語教師が悪いのか。そして彼はにっこり笑ってじゃあねっと去って行きました。
ま、とにかく!目の前のブフテルを撮影、撮影。この10時以降しか出されない特別メニューのブフテルは、湯豆腐のお豆腐ぐらいの大きさで、粉砂糖がかけられた焼き菓子です。フォークを持って早速食べてみると・・・
「あ、甘い!」
「でも、面白いね。何だろう。ドーナッツというか、ホットケーキというか、甘いパンっていうか」
中皿にほどよい量がのせられたブフテルをつつきながらメランジュを飲むことしば
し。
「・・・でも、これじゃあ晩御飯の量では」
「ないよね・・・やっぱり最後の最後まで」
「マクドナルド・・・ですか?(笑)」
我々にとってはカオスでディープなウィーンを垣間見たカフェ「ハヴェルカ」を堪能し、この雰囲気をしっかりと記憶に留めてから席を立ちます。後でガイドブックを読み返してみたら、このカフェは詩人や芸術家、音楽家たちの溜り場的な名物カフェでした。
支払いはやっぱりおじいさんが全てとりしきってるようで。大きな長財布を手にテーブルまで来てくれます。ああ、全てがオーソドックスで楽しい!
まだまだ人々の語らいは終わりを知らず、夜はいつまででも続くと信じているような人達の姿に何とも言えない魅力を感じながら、再びグラーベンへ。
シュテファンプラッツを再び仰ぎ見て、ますますこの旅行が終わる寂しさを感じながら一歩一歩大切に歩いていくと、ケルントナー通りとグラーベンが交差する辺りで楽しげに遊んでいる犬に出会いました。
ドーベルマンのように体の大が大きくスマートな犬が、飼い主の近くでスキップするようにはねながら遊んでいます。何をしているのかと思ったら、ビルの上から石畳に投影された動くロゴマークを追いかけて遊んでいるのでした。か、かわいい!っていうか面白そう!と、またまたデジカメで撮影。動く光を追いかけながら飼い主とじゃれあっています。
旅が終わるのは寂しいですが、そろそろ我が家の犬、ナナが恋しくなってきたのも事実。ナナに会いたいな〜と思いながら、飼い主と犬の微笑ましい姿に思わず顔をほころばせながら眺め、我々は次なる目的地、シュテファンプラッツを通り過ぎたところにあるマクドナルドに向かいました。
ウィーン旅行準備号を読む
HOMEに戻る