〜オペラ「ジークフリート」〜
2004年11月01日
タクトが振り下ろされた瞬間出た音は、以前その響きに感動したものとはちょっと違い・・・
あれ?あれあれ?なんだか、こうしっくりこない。ファゴットもたどたどしいように聞こえるし、全体にバラバラしているのは何故?ウィーンフィルはワーグナーが苦手?
期待した音が出てこず、ちょっとがっかり。今日はカテゴリーAではなくBの日(演目はランク付けがあり、チケット代も違うのです)なので、もしかしてウィーンフィルの二軍?心なしか、メンバーが若いような・・・
さて、舞台の上はミーメの家。暗い室内は案外狭い設定で、天井には良くわからないボートのようなものが設定されています。後にアコーディオン状にこのボートのようなものが動いてくれてわかったのですが、これは鍛冶屋が使う巨大な"ふいご"でした。
左奥には暖炉、右奥は玄関のドア。そこに、ジークフリートがこげ茶色の着ぐるみクマちゃんを連れて帰って来ました。ジークの歌詞を読む限り結構我侭、というかミーメが気の毒な歌が始ります。ミーメもジークも流石に声はいい。しっかし!!このジークフリートのイメージ画像は、金髪長髪のコナンザグレート。先ほど買ったプログラムを見ると、とにかくそうなのです。金髪のマッチョな英雄の写真ばかりが出てくる出てくる!シュワルツネッガーにアメコミ。更にターザンも登場。そして次のページには、黒のレザースーツで決め手にはテディベアを持った、マッチョ+ちょっとゲイっぽい写真まで入ってました。
という訳で、イメージフォトにあったテディベアーは、ジークフリートと一緒にミーメの家に来て、しばらく入口の外でもじもじしてから去っていった着ぐるみクマに変化。そして、ジークフリートの姿は金髪ロン毛、両サイドポマード?、シャツに恐らく黒のレザーパンツといういでたちに。それをオペラグラスでのぞいたところ・・・
いくらコナンザグレートイメージでも、演じているのは主役をはれる年齢のテノール歌手。顔のしわもぽっちゃり体型も、気の毒なほどこの衣装に似合わない!!顔のたるみが更に強調され「無理してます」を体現している〜っ。ああ、遠目で見るに留めておくんだった・・・後悔先に立たず。でも、演出家の時代といわれる今日において、歌手に拒否権はありません。お気の毒に。
そこにヴォータンが登場。これがまた、ジークフリートとは対照的に決まってます。どうしてこう、バリトンはすらっと見える人が多いのでしょうか。関係からするとヴォータンにとってジークは孫になりますが、今この目で見る年齢は全く逆転しています。まあ、神様は歳をとらないという事で折り合っておきましょう。
さて、このオペラが始り、会場に鳴り響く音楽を聴きながら多くの人がしている事。それは字幕チェック。ドイツ語圏の人はともかく、外国語圏の人は英語字幕と舞台上へ目線が行ったり来たり。一応のあらすじはわかってますが、やはり字幕があると随分違います。
しかし、次第に時差ボケの影響が・・・ね、眠い・・・客席だけでなく舞台も暗いし、男性ばかりが歌っていて、更に!ワーグナーは音楽が途切れることがないので、アリアが終わって拍手!が無きに等しく。こ、これは困った。やっぱり指輪を選んだのは間違いだったのか?!
室内の暖かさが更に睡魔の援軍になり、それに抵抗して必死に薄着になってみますが、ワーグナーの音楽が更に睡魔に加勢。必死の攻防の末、どうにか最初の1時間ぐらいは抵抗出来ましたが、巨人族のところに指輪を取りに行く段になると、更に地味な地味な舞台、更に暗い暗い森のセットに嫌な予感が。思った通り、眠気が一気に押し寄せてきました。
中央にある巨木を見ながら、どうもこの舞台美術はチープ。このシンプルさは斬新というよりバジェットの問題に見えるなぁ。。。と思い、ぼーっとしていたその時!緑色のチクワお化けが登場!!な、何だこれっ!!!
いえいえ、これはきっと大蛇の「つもり」(笑)でも百歩譲ってこれは、陸ナマズの緑パウダーまぶし(笑)。筒状になった布お化けが、ぱくぱく口を開けて空中にぷかぷか浮いています。
おおっと!ここまでマヌケキャラがウィーン国立歌劇場の舞台にのるとは!!!恐れ入りました。流石ディープな街ウィーン!!
しかし、緑ナマズの衝撃は睡魔の足をちょっと蹴ったぐらいで、またまた私には極度の眠気が襲ってきます。ま、まずい・・・と思った瞬間、次に意識が戻ったら、ジークフリートとヴォータンが舞台中央の橋に立っていました。あれ?あれあれ??これって、テレポーテーションの話し?おいおい!っと自己突っ込みを入れつつ、また意識は宙をさまよい・・・だってほら、壮大な話だし。そして、次に意識が劇場に戻って来た時には大地の女神エルダとヴォータンの歌が始っていました。 おおっと。もうこんなところまで話しが進んでいたのか!まずい。非常にまずいです・・・
しかし、この女神の声余りピンと来ないなぁ。。。などと寝てたくせに急に文句を言ったりして、あんた何様?状態のまま、再び眠気の襲撃を受け、その睡魔との闘いに疲れてまた更に眠気が増量され・・・もう悪循環です。最悪です。
5時間という普通でない上演時間も災っています。そして、拍手というアクションを起こす時が幕の終わりにしかやってこないという極めて受動型鑑賞形態も、つ、辛い・・・そして、こんな有様の自分が情けない・・・
そうこうしているうちに、とうとうブリュンヒルデが登場。ああ、終幕近くなってしまったではないかっ!!ぬあああああああっ!!ウィーンまで来て、何故睡魔に襲われるの??と激しい後悔に襲われながら、またしても疲労が深く深く襲いかかり・・・
とその時、眠っていたブリュンヒルデが目覚めました。その第一声は、目も覚めるような大音響!5時間の長丁場を乗り切るべく恐らくセーブしていた他の歌手とは違い、この幕だけですから全力疾走OKです!な声量で、いきなりMAXモードに。
やっとワーグナーらしくなってきたというか、何というか。好きな声質ではありませんが、この声量は貴重です。
もうこれで大丈夫。絶対に眠くならない!と安堵したのが悪かったのでしょう。ここまできても、まだ眠いか君!と自己突っ込み再びを経て、いよいよ舞台は大詰めに。大音響のソプラノが見事に歌いきり、劇場は盛大な拍手に包まれました。
拍手をしながら、心の中は激しい後悔。私の後ろに座っていた、アメリカから来たという、体格のいいオペラオタクらしき男性(隣の見ず知らずの男性に声をかけ、ずっと何を見たとか、これを見たとかしゃべり続けてました)は、さぞかし腹立たしかったことでしょう。きっと私の頭は微妙な動きをしていたから。何を寝てるんだ!と思っていたに違いありません。
歓声に沸く劇場に明かりがつき、初日のオペラ惨敗の私は激しい後悔を伴ってクロークへ。ここで睡魔との闘いに惨敗していた私の隣に座っていた友達も、激しい睡魔に襲われていたことが発覚。そして、新事実の発見!
やはり友人もジークフリートとヴォータンがいきなり舞台中央橋の上に立っていた!!と証言。これはもう、テレポーテーションに違いない!(笑)という訳で、人が眠くなる部分は同じという結論が出たところで、夕食を求めてウィーンの街にさまよい出ました。
ウィーン旅行準備号を読む
HOMEに戻る