〜ウィーン国立歌劇場ガイドツアー〜
2004年11月02日
そのフロアーには、イタリア語とか日本語とか書かれた札が立っていて、皆それぞれその立て札の近くにたむろしています。そして、時間になると、それぞれの言語のガイドさんがやってきて、行きますよ〜となるのです。
そこで待つ事十数分。漸く日本語ツアーのガイドさんがやってきました。金髪、ボブの体のがっしりした女性です。手には扇子を持っています。
「それでは皆さん、こちらにどうぞ」
と、ドイツ語訛り(?)がある、しかしかなり明瞭な日本語でツアーをスタートしてくれました。
最初に入ったのは、昨夜緑のちくわお化けと遭遇した(詳しくはウィーン旅行記vol.5)客席。舞台では大道具さんが忙しく働いています。ガイドさんに促されてオーケストラピット近くの席に全員腰掛けます。
「今、舞台の上では、今夜の公演小澤さんが指揮するオペラ「フィデリオ」のセットが組まれています。でも、今日は先ほどまで別の公演のリハーサルが行われていました。このオペラハウスは毎日違う演目を上演していますから、舞台美術の人はフル活動なのです。この舞台の奥行きは50m(記憶が間違っていなければ)あり、舞台の場面転換を素早く行う事ができます」
と話す中でも、舞台の上では大工仕事が行われています。何だかわかりませんが、パネルが舞台を横断していて、それをスタッフが押さえています。その奥ではフィデリオのセット、街の風景が作られています。
「ウィーン国立歌劇場の演目は非常に人気があり、毎日ほぼ完売を続けています。とはいうものの、チケット収入だけではこのオペラハウスを運営して行く事は出来ません。現在の一番のスポンサーは、トヨタです」
なるほど。パリオペでもチケット収入では、確か予算の2割しかカバー出来ないと聞きました。どこも財政は苦しいのですよね。しかし、一番のスポンサーがトヨタだったとは、ちょっと驚き。これが日本やアメリカだったら、劇場の中のどこか目立つ所に「トヨタ」のロゴがあるはずですが、私が見る限りではどこにもそれはありません。小澤と共にトヨタの資金提供がくっついて来たのか、それ以前からトヨタはスポンサーだったのか、ちょっと気になるところです。
「この中は好きに写真を撮ってくださって結構です。少し時間を置いて、次の部屋にご案内します」
という事で、早速皆写真撮影を開始。私も天井のシャンデリアや客席をデジカメで撮ります。以前と比べて、絶対に写真の規制が緩くなっています。
2階へ移動する途中、正面階段をのぼった所でまず説明を受けます。正面階段をのぼった所にある壁の彫刻は、この劇場を作った男2人のもの。建設当時、実はこの劇場、とても評判が悪かったそうです。さんざんに言われて、失意のまま建築家は亡くなったとか。現在、世界中の人が訪れている劇場の建築家が、そんなにかわいそうな目にあっていたとは。
その上にある壁画は、オペラとバレエを表している女性の絵画。オープン当時からこの劇場は、オペラとバレエを二本柱にしてきたのです。
さて、次に向かったのは2階、ロージェです。まず向かったのは、ロイヤルボックスの後ろにある、王室の為の控えの間。部屋の中に入れて貰えず、ドアの位置から見学します。
「この部屋はエリザベートもオペラを見る時には訪れた、王室の為の控え室です。現在では、記者会見などを行う時に使ったりもします。小澤さんの就任の記者会見はここで行われました。この部屋は貸し出しをしていますが、その金額は1時間・・・」
この部屋が1時間いくらだったのか、忘れてしまいましたが、確か6万円?いえ、10万円以上だったかしら。とにかく、休憩する為に庶民が借りようと思わない金額でした。
次にロイヤルボックスを窓越しに見て、2階のフロアーの説明に移ります。
移動先は、オペラの時には皆がグラス片手に談笑しているエリアです。当たり前の事ですが、人がいないこのロビーはがらっとしていて、夜とは全く違う顔です。天井画はモーツァルトの魔笛。そして、壁際には、歴代の芸術監督の胸像が飾られています。言う迄もなく、マーラーもカラヤンもちゃんと居ます。
そこからバルコニーに出ると、今の時期は寒いので屋根がつき、窓が付きと、しっかり室内のように覆われていました。見下ろした先にあるのは、リングです。ここも夜はドレスとタキシードで溢れているエリアです。
再び部屋に戻り、アルカディア(CDやグッズを売っている店)の売店を通り過ぎ、これまた幕間に人が溢れている広間へ移動。当たり前の事ながら、今はがらっとしています。
「これは、マーラーが旅行用に使っていた携帯用ピアノです。そして、この壁のゴブラン織りもモーツァルトの魔笛をモチーフにしています。ウィーンの人たちにとって、魔笛は非常に大切な演目なのです」
言われてみれば、古くなって色が随分落ち着いている壁の絵は、夜の女王だったりパミーナだったりしています。これほどまでにこの劇場が魔笛で覆われていたとは!本当にオーストリアの人たちにとって、モーツァルトは特別な存在なのだと実感させられます。
さて、この部屋。実は今企画展をしています。昨夜既に見て回っていたのですが、このガイドさんの話しで漸く謎が解決。
「この劇場では、新しい試みを色々行っています。このシーズンのプロダクションで一番話題になっているのは、ドン・カルロです。新演出で、最初は色々批判も出ましたが、今はもうだいたい良い評がほとんどです。その演出家の過去の作品を現在この部屋で紹介しています。パネル展だけでなく、オペラのある日には、セミナーも行われているのです。オペラ座のチケットは取りにくいと言われていますが、今一番人気があるのはドン・カルロです」
な、なんと!ドン・カルロが?!もしかして、凄いチケットを入手した?ラッキーだったのかも!と思わず喜んでしまいます。
「フランス語版での上演で、上演時間は5時間と、とても長いのです。」
それは、嬉しい!!!実は私、フランス語バージョンのドンカルロが好きなのです。あの響き、好きです!!しかも、5時間ということは、例のカットされがちな本当の1幕が付いている!ワクワクしてきました。(何も知らずに買ってたというのも笑えますが)
と、ここでガイドが終了。英国ロイヤルオペラハウスのように、バレエのレッスン室を見せてくれたり、大道具さんの部屋に入れてくれたりはありませんが、なかなか面白いツアーでした。
最後の最後、出口を案内され、何でこんなに狭い所を?と思って抜けるとそこは音楽ショップ、アルカディア。良く出来てます。ここでお土産買ってってね、という事ですね。抜かりない(笑)
我々は勝手知ったるこのお店を通り抜け、カラヤン広場に出ました。
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