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DORAMA・花より男子/DORAMA・野ブタ。をプロデュース


◆12月17日◆DORAMA◆野ブタ。をプロデュース◆

 2005年のドラマ。私が見た中で一番の作品を挙げよと言われたら、「タイガー&ドラゴン」とどっちにしようか本当に迷うのが、この「野ブタ。をプロデュース」です。

 初回、個性的な脇役も多いしとにかく見てみようとただ見てみたら、何とこれが面白い!主役二人がジャニーズの亀梨和也(桐谷修二役)と山下智久(草野彰役)なので、ただのアイドルドラマと思われがちですが、さにあらず!この二人も役にぴったりでいい味出してます。
 それに野ブタこと小谷信子役の堀北真希 ちゃん。彼女、何だか不思議な子です。暗いのか、明るいのか、さえないのか、きれいなのか、かわいいのか、わからないっ!!って、つまりは演技派って事なんでしょうけど。
 この3人のチームワークが良くて、どんどん彼らが好きになってしまいました。とにかく、ピュアでかわいい!本当にかわいい子達です。自分が学生だった頃のノスタルジーと供に、3人とも抱きしめてあげたくなっちゃうぐらい、かわいいです。

 このドラマの主題歌、修二と彰が歌う「青春アミーゴ」が爆発的に売れたにもかかわらず、ドラマの視聴率は案外平凡(?)だったので、ここでざっとあらすじを。

 クラスの人気者で世渡り上手な修二(亀梨和也)。誰とでも仲良くつきあえるこの男に一人だけ苦手な奴が居た。それが彰(山下智久)。彰は修二を友達だと思っているが、修二は友達じゃない!と主張している。
 そんなある日、彼らのクラスに転校生がやってくる。暗〜い暗い転校生、信子は登場した瞬間からいじめられっ子に。ところが、修二にはクラスメイトになる前に、信子とのちょっとした繋がりがあった。
 それは彼の通学時の儀式「柳にタッチ」が引き合わせた不思議な縁。自分が大切に思っていた、毎日の勇気をくれる柳の木が抜かれて突然消えてしまった時に、その跡地で修二は信子に会った。彼のメンタル的な支えであった柳の木が抜かれてしまった事実を教えてくれた信子を修二は助けたいと思い・・・という事で、修二と彰の二人が、信子の脱いじめられっこ、更にもっと上を狙い、クラスの人気者にしようプロジェクトを企画。そのプロジェクトの中で、信子は修二がくれたブタのかわいいアップリケにちなんで「野ブタ」と呼ばれることを自ら希望。そして「野ブタ。をプロデュース」が今始る!!

 という話しです。いじめられっ子の話しは多多あるものの、いじめられっ子を男の子二人がプロデュースして人気者にするっていうのが、まず斬新!
同時期に放送されていた「花より男子」もいじめが一つのテーマでしたが、これは定番の一人で立ち向かうパターン。いじめの話しって大体1人対大勢の話しになりますよね。
それが、ここでは一人のいじめられてる女の子を二人の男の子で、ただかばうのではなく、人気者にすべくプロデュースしちゃうって、その前向きな発想が既にいいと思いませんか?原作は2004年に文藝賞を貰った小説で、そこには「彰」というキャラクターはそもそも存在していなくて、修二が一人で奮闘するそうです。が、この「彰」の存在が実にいい!彰の居ない「野ブタ。」は考えられないです。本当に。(原作とドラマは、設定がかなり違うそうです)

 それではまず修二から。この子はですね。見た目も今風で人当たりが良く、ノリも良くて、調子も良くて、完全なるクラスの人気者。そういう自分を結構一生懸命演じてて、八方美人に時々自分で泣きを見てる、そんな子です。
 心の中ではクラスの皆を子供(ガキ)だって思ってるし、うわべだけ上手くやってれば人生は上手く回ってくって思ってる。でも、実は実はなかなか直視は出来ないけど、「自分に足りないもの」にもちゃんと気付いてるし、自分のことより他の人の事を先に考えちゃうような優しいところもある子なのです。
 そんなうわべと中味を亀梨和也は凄く自然に演じていました。何でしょうかね。この人。物凄く!本当物凄く自然なんです。演技とは思えないぐらい自然です。基本的に頭がいい子なんでしょうね。トーク番組に出てるのを聞いてても、しっかりしゃべってるし、なかなかスマート。前向きでまじめなのに、軽やかさもあって、間もいいです。って書いたら、何か物凄い人みたいですね(笑)でも、本当賢いな〜と思いますよ。勉強が出来るとかじゃなくてね(笑)如才ないというか。勉強が出来るか出来ないかは、私の知るところではございません。

 そんな亀演じる修二の二面性を上手く表現しているのは弟の書いた作文「僕のお兄ちゃん」でしょうね。やっぱり。
 僕のお兄ちゃんは学校と家では全く別人!って内容の作文を、お兄ちゃんが盗み読みするんですが、これが笑えます。やっぱり子供の目は確かですね(笑)家では長い前髪をゴムでくくり、海外で仕事をする母親替わりに家事もこなす、キュートで家庭的なお兄ちゃんですが、案外せこいと弟は語ります。外面がいいばっかで、ろくな人間にはならないとも指摘します。
 この弟役でジャニーズJrの中島裕翔 君。この子がまたかわいい。亀梨にめちゃくちゃなついてます。お揃いで前髪ゴムくくりもかわいいかったです。本当の兄弟みたいに見えます。小6らしいですが、それにしては小柄で声替わり中なのかハスキーな声も何だかキュート。頑張って牛乳飲んで、良く眠って、背をのばしてください(笑)

 さて、そんな人目を気にして世の中を上手く渡っている修二とは対称的な存在なのが山下智久演じる彰。登場シーンからもう、笑えました。両手をひらひら〜ってさせながらふらふら階段を下りてきて、いきなり修二に「神さま、死んじゃったんだって」ですよ。修二が「誰が言った?!」と聞くと「ニーチェだっちゃ」その間体はずっと脱力歩き中。。。登場で既に強烈にキャラクターを主張。恐るべし、山ピー。
 この彰、いきなり哲学者ニーチェとか言ってるので、実は賢い?!と思いきや、「豆乳」をマジで「まめちち」とか読んでて案外バカだし、ふらふら〜ふらふら〜ってしてるから弱いのかと思いきや、いきなり瓦10枚割りとかして空手やっててかなり腕に覚えありだし、豆腐屋のおいちゃんの家にチープに下宿してるから家族が居ないのかと思ったら、家族は近くに住んでるし、お金ないのかと思ったら、父親が社長でカードが結構自由に使えるし、大金持ちかと思ったら、結構お父さん苦労してるし・・・ってこのギャップが面白いのですが、今書いてて気付きました。脚本、撮影ぎりぎりまで出来てなくて、演じてる山ピー自身「彰」がどんなキャラなのか良くわからないって語ってたんです。原作にも出てこない登場人物だしと。
 これはまさしく、演じてる彼を見ながら出来ていったキャラだったんでしょうね。ま〜悪く言えば、行き当たりばったりも一部ありだったのかも(笑)かなり自由に演じさせてもらったそうですしね。コンコンっ!山ピーの前髪ゴムくくりも似合ってました。しかし、彼って何でああ顔も唇も体も柔らかそうなんでしょうかね。ふっくらしてる・・・って、ただ単に太っただけ?(笑)

 次に野ブタこと信子役の堀北真希 ちゃん。初めて見たと思ってましたが、電車男の妹だったり、富士カラーの宣伝に出てたり、案外目にしてる子なのに、野ブタと印象が違いすぎて気付きませんでした。あのボソボソっとしたしゃべり方も板についてて素なのかと思うほど。歩き方、しゃべり方、全てが信子になってます。上手いです。さり気無く上手いです。上手いでしょ!って大声で言うタイプの演技じゃなくて、え?これ演技なの?全部コントロールされた動きだったの?びっくり〜的な上手さです 。
 このドラマで、特筆すべきは信子の心の美しさなのですが、そのナイーブさと強さ、そして案外大胆なところを、自然な説得力を持って演じています。それにしても、放送部に入ってからお弁当突撃レポーターをしている時、信子の発した「ま、まずい・・・」私も学校の皆と同じく、時々聞きたくなります。そして、やっぱりこれ。彰発案の、信子が元気とか勇気とかが無くなってきた時に行うプチ儀式(?)「野ブタパワー、注入!」。
 左手は腰で、右手を前下から上に振り上げ、「野ブタパワー」で、右目辺りで横V字をつくって「注入!」。この「勇気」を出すプチ儀式「野ブタパワー。注入!」は本当見ているこちらも元気が貰える気がします。何というか、彼らの心の温かさが注入される感じでしょうか。あ、これぞ「野ブタパワー」ですね(笑)

 さて、今度は彼らを取り巻く人々の話しに戻りましょう。このドラマ、何がいいって、脇がまたいい。高橋克実(彰の下宿、豆腐屋のおいちゃん)、夏木マリ(教頭先生)、忌野清志郎 (書店の主)、そしておじさんになりすぎてて、最初誰だかわからなかった岡田義徳(主人公達の担任。木更津キャッツアイのうっちーと言えばわかりますか?)、そして宇梶剛士 (修二の父)。
 一言で言うのなら、皆いい距離感の大人です。ちゃんと子供達を理解しているけど、「自分は君の事わかってるよ」という押しつけがましさが全くない。まあ、言ってみればどこにも金八先生は居ないという事ですね。ふふふ。うっとおしい人が居ないって事です。あはは。大事な物を大人になっても失わないでいる人達って事です。うふふ。

 そんな大人と子供、両方の視点が見えるバランスのとれた脚本を書いたのは、「やっぱり猫が好き」「すいか」などを手掛けた木皿泉さん。この二人(一つのPNを持つ男女二人組。ご夫婦で書かれてます)の感覚ってやっぱり凄いなと思います。今の学生の感覚を持つ50代って凄いですよね。そして、大人サイドも同時にきちんと描いています。大人が言いたい事がちゃんと語られてるというか。
 大人って型に嵌ってて何だかつまんない人生送ってるなと思っている学生視点に対して、大人だってそれぞれ事情があって、面白くないって思うかもしれないけど、色んな物背負いながら頑張って生きてるんだよというのが、至極自然に描かれているのです。そして、学生達もそんな大人の事情をだんだんわかってくる。理解していくのです。物語全体から感じるのは、木皿さんの人間に対するあたたかな眼差し。この人たち、人間が好きなんだな〜って思います。
 おばけ屋敷の回で、おばけ屋敷の最後に書かれたメッセージ。原作にあるのか木皿さんが書いたのかわかりませんが、人と人との出会いって、改めて凄い事なんだとちょっと感動させられました。

   というように、毎回放送が楽しみで仕方ないドラマだった訳ですが、最終回の最後はびっくりでしたね。この作品の主題歌はもう知らない人は居ないんじゃないかというぐらいヒットした「青春アミーゴ」で、それを歌うのが、修二と彰。ドラマに合わせて10月にリリースしたのに、あっという間に100万枚を売上、2005年一番売れたシングルになり、未だに売れてるお化けな歌ですが、その歌詞に「俺達はいつでも2人で一つだった」というのがあるのです。と、ここまで長い前振りをしたところで、最終回ですよ。

 もうドラマが終わったので、ネタバレ関係なく書きますが、転校が決まった修二が新しい高校「網五高校」そう、言うまでもなく、アミーゴとかけてます。その高校に転校したら、何と!彰が先駆けて転校してたっていうオチ。これを見た途端、「えーっ!!!そこ?そこなの?!この子なの?!二人で一つってこの二人なのっ!!」って声出してツッコミ入れてましたよ。「歌のまんまなのっ?!」ってね。  普通どう考えても友達が転校したからって、追っかけて転校しないでしょう。しかも、ラストシーン、海岸で戯れる二人。キャッキャしながら冬の海に二人飛び込んで遊んでましたけど、おい。君ら恋人たちかいっ!ってまたツッコミを入れてしまう勢いでした。
うーん。何だか最後、違うテーストにいっちゃった感じもしつつ、意外性と笑いは取ってくれましたが、必死につじつま合わせと理由探しをしている自分が居たのも事実です(笑)原作の結末ってどうなんでしょうね。だいたい、原作には彰が居ないし。

 しかし、普通の撮影でも寒い季節。冬の海に飛び込み、泳がされた二人。本当にお疲れ様でした!君達の勇気と努力、そして若さに拍手を贈ります(笑)

PS
 顔良し、性格良し、運動神経良しの何でも出来る、修二のガールフレンドだったまり子 ちゃんに幸あれ!


◆12月16日◆DORAMA◆花より男子◆

 昨今、原作がマンガの映画、ドラマは数知れず。そして、この「花より男子」も人気少女マンガが原作で、その昔内田有紀で映画化され、台湾ではドラマになり、その花の4人組と言われる男子グループF4の名前そのままのアイドルグループまで存在しているという、とにかく超ヒット&話題の物語が、遂に日本でドラマ化されました。というのが、この「花より男子」なのですが、実は私、全く原作を知りませんでした。

 リアルタイムで読んでてもおかしくない年代なのですが、いかんせん。私は結構マンガ読みでもあるのですが、マーガレットの方ではなく、当時LaLaとかいわゆる白泉社から出ているものを読んでいて…という訳で、正統派?少女マンガからは道が反れていたのです(笑)
 という事で、原作は全く知らずにドラマだけを見る事に。目的は松本潤と小栗旬だったりしたのですが、ここで思わぬ出会いが。
 F4の一人、故松田優作の次男、松田翔太。何とも言えない上品さとかわいらしさのある子です。180cmを超える長身、英国の高校に留学していただけに英語に強く、でもどうも、不器用・・・(笑)まだデビューして本作が2作目ですが、芝居の中では、なかなかいい間を持っていて、松本潤演じる道明寺司の、良きツッコミ役になっていました。
 余談ですが、長男松田龍平と松本潤は実際に高校のクラスメイトで親友。その親友の弟のせいか、この人の生まれもったかわいらしさのせいか、番宣などではとにかく松本潤が翔太をかまう、かまう。更に、その他のメンバー、残りのF2とつくし役の井上真央ちゃんの4人にもいじられる、いじられる(笑)
 まだまだトーク番組ゲストへの道のりは遠く・・・ぼそっ、ぼそっていうしゃべりが、今のところ彼の特徴です(笑)
 お母さんの松田美由紀さんが、龍平、翔太は先日兄弟で演技をめぐって家で大喧嘩をして、最後は父さん(松田優作)の遺志を継ごうという結論に達した熱い子達と、テレビで話していましたが、翔太を見る限り、どこにそんな熱さが?!というぐらい、見た目はちょっと天然で物静かな人です。英語をどうしても習得したかったのは、故松田優作の活躍の舞台を世界に、という遺志を継ぐものなのでしょうか。頑張って欲しい注目の若手俳優です。

 さて、もう一人のF4阿部力も、演技ではなく番宣の時に感じたのですが、独特の間と反応が非常に面白い人です。中国人と日本人のクォーターだそうですが、彼の時間の流れ方はちょっと日本人とは違って、本当にマイペースでいい味出てます。一番印象的だったのは、生放送で時間が押して、周りは皆あせってても、彼だけは全然気にせずマイペースだった時。いっそ気持ち良かったです(笑)

 と、ここまでドラマの内容に全く!(?)関係ない感じで随分書いてしまいましたが、「花男」。はっきり言って、脚本はグループで書いていたので、バラバラしてます。道明寺の日本語弱い系ギャグも、笑えるのもあれば、やりすぎで辛いのも正直ありました。
ヒロインのつくしがバイトをしている「千石屋」のおかみの恋の思い出話しも、毎回の恒例になってましたが、恒例にするほど面白いパターンは無かったし、つくしの家の貧乏話しも笑えるほどの突き抜け方はなく、微妙な感じ。

 でしたが!主役の二人、井上真央と松本潤は本当に頑張ってたし、なかなか良かったです。私は原作を知らないので、ドラマ単体で見ての話しになりますが、二人ともちゃんと自分たちなりのキャラクターが出来ていて、どの台詞もちゃんと一度消化されてその時の演じているキャラクターの心理状態を自分なりに良く分析した上で、必要な情報をプラスしてから演じていました。
 時々脚本のまずさが可愛そうになるぐらい集中力を持ち、いい間で、必要とされる表現を的確にしながら演じています。
 これだけ人気のあるキャラクターを演じるというのは、非常に強いプレッシャーもあって、どうあがいても万人のイメージに合うわけはなく、かなり難しい役所だと思うのですが、しっかりとしたスタンスで最後まで演技者はテーストを変える事なくやりぬきました。評価されてしかるべきなのではないでしょうか。

 超セレブな学校で一人庶民の牧野つくしは、気持ちがいいぐらい真っ直ぐで強い女の子。井上真央ちゃんのさっぱりキャラはこれから結構人気が出そうです。ファイティングポーズも決まってるし、イキのいいかわいさがあります。どんな逆境にも立ち向かうつくしにぴったりあってました。

 一方のわがまま王子、道明寺財閥の御曹司の道明寺司。1、2話ぐらいまで、弱いものイジメはするし、暴力はふるうし、何って奴なんだってびっくりモードでしたが (笑)意外にも中味はとってもピュアで一途。自分のコントロールが苦手で、精神的に不安定なのかと思うと、つくしと出会って成長したのか、案外男らしいところがあって、包容力もあり、なんだ、実は素敵な男の子じゃない!というのを、松本潤がしっかり演じてくれました。
 何でも手に入るのが当たり前な司ですが、姉椿の助言が効いたのか、つくしの心をとても大事するところなんか、かなりポイント高いです!つくしの憧れの人で司の幼馴染の「花沢類」が、いつも司の中で微妙な存在として位置付けられているのですが 、彼は類との友情はちゃんと大切にし、つくしの心も尊重する。つくしが類を好きなら、自分は諦めると断言する男らしさ。でもやっぱりやきもちはやいてますが(笑)

 自分が暫くつくしと離れる事が決まった時には、類につくしを頼むと言いながら、もしつくしが類を選んじゃったらどうしようって、マジで凹むこのかわいさ!高飛車な物言いが、もうこの子は〜とかわいく思えてしまったら、もうあなたは司にやられています。つくしと司の最後の夕日のシーンでキュンときてしまったら、完全にあなたは、司にやられています(笑)

 さて、F4のメンバーにして、道明寺司と人気を二分しているか、もしかするとそれ以上?!という人気キャラクターが「花沢類」。演じるのは小栗旬。
本人曰く、類は原作でいつも花しょって出てくるので、正直「ありえないだろう〜」って思ったと言ってましたが、それなりの王子様っぷりでした。微妙に庶民的(笑。だって、「司のかーちゃん」とか言うし)なセレブで良かったんではないでしょうか。たとえ原作ファンの花沢類からは遠かったとしても!そして、脚本のせいで、ちょっと類のキャラが揺らぎがありすぎて捉え所がないとしても!まあ、小栗旬自体は良かったと思います。
 どこかおっとりした生まれながらのお坊ちゃん気質は(確か小栗旬のお父さんはオペラ演出家)役にも活かされてたと思います。あの、ちょっと天然なしゃべりも、独特な間も、小栗旬の花沢類テーストになってました。すりりんごの入ったお皿を落とす姿を見て、か、かわいいっと思ったら!あなたはもう類に「も」やられています(笑)

 さて、F4の残り二人はまず冒頭で語ってしまったので、ここではあえて書きませんが、松田翔太演じる西門の司へのツッコミは、なかなか愛情に溢れていたという事だけは、書いておきましょう。皆、本当はいい子たちです!(笑)

 さて、今頃?と言われそうですが、今回初めて上手いなと思ったのは、道明寺司の姉、椿役の松嶋菜々子でした。椿はとっても「間」が大切な役所でしたが、彼女が出てくると芝居にテンポが出てきます。ちゃんと芝居が締まるんですね。
 司との掛け合いなんか非常に自然で思わず笑ってしまうものになっていて、なるほど。彼女が珍重されるのが今頃良くわかりました。遅いと言われても。ふふ。

 道明寺の母、楓を演じた加賀まりこは、最初何でこの人こんなに眉が段違いなの?って全然演技とは別のところに気をとられてましたが(余りに不思議なので、こういうメークなの?って思いましたが、加賀さんの顔のクセだったみたいです。笑)最終的に息子に甘い母親な面が見られてなかなか良かったです。特に最終回!あ〜あ。あの小娘に取られちゃったわって表情が、母親しててなかなかGood!でした。

 最後は、やっぱり三条桜子ですか。つくしの友人かと思ったら、悪の権化?だった(笑)思いっきり自覚した2重人格?!な怖い女の子。でも、頑張ってましたよ。目の演技もなかなか良かったし。自分の悪事がばれた後でも、びっくりマイペースなところも、まあ、かわいいといえば、かわいい・・・かな。

 福井まで行ってロケして撮った道明寺の超セレブなお屋敷の居間は、何であんなに天井が低いの?とか、プライベートジェットってこんなに狭いの?とか、彼らが通う高校は授業をやってないの?とか、セレブな御曹司達の言葉にしては、結構庶民的な言葉遣いが多いとか、司もそこまでバカじゃないだろう!って台詞とか、まあ色々ありますが、ぜーんぶ見なかった事、疑問を持たなかった事にして、とりあえず目を瞑る気になるぐらい、結果的には面白いドラマでした。

 平均視聴率20%を超え、TBS久々のヒット!というより、今年一番数字がとれた連ドラだったようです。皆それだけ見てたんですね。凄い!続編の声も既にあがっていますしね。出演者の皆さん。頑張って良かったですね。寝ないで頑張って良かったですね。おめでとうございます。
そして私はキャストがこのままなら、続編も絶対に見ます!(あ、明かに物語ではなく人で見てたのが今、明かに。。。笑)


<September>

MOVIE・メゾン・ド・ヒミコ/MOVIE・チャーリーとチョコレート工場


◆9月17日◆MOVIE◆チャーリーとチョコレート工場◆

 そのニュースが飛び込んで来たのは数年前のある日。『チョコレート工場の秘密』が映画化されるらしい。しかも、制作を呼びかけたのはブラピ夫妻(当時)で監督はティム・バートン、主演はジョニー・デップ。
 それを聞いて以来、私がどれだけ心待ちにしていた事か!!途中ブラピ夫妻の離婚のニュースに、でも映画は出来るよね?と映画だけ心配したりなんかしながら(結局出来上がる頃にはブラピ夫妻の名前はどっか行ってしまったようですが。笑)心の中にいつも「楽しみ!」を抱えながら待っていると、「えっ?もう出来たの?もう上映しちゃうの?!」とあっという間にその日はやってきました。

 原作『チョコレート工場の秘密』を読んだのは、大人になってからの事。恩田陸の小説でその名前を見つけ、何だか気になって「児童書」であるこの本を購入。ところが!どこが児童書?!な内容にびっくり。面白いっ!!!と読み進み、この作品が既に71年に映画化されているのを知り、どうやって映像にしたのか観てみたいような観てみたくないような不思議な気持ちになったものです。一体どうやってウンパルンパを映像にしているのか。何だか変な映画になってるんじゃないのかしら、と。
 でも、私の好きなティムとデップ二人がこの映画を作ってくれるとなれば話しは別。ウォンカ役にデップはかっこ良すぎると思いつつも、どんな作品になるのかワクワクして待ってました。  と、そんな風に心待ちにしていた人が多分大勢いたのでしょうね。映画は大ヒット。映画館に早速足を運んだものの、一回目は立ち見しかなく諦めて、二回目にして漸くこの映画を座って観る事が出来ました。しかも予約券を購入するのに長蛇の列(全員がチョコレート工場の予約の為に列んでいたのではないですが)に列びました。凄い混雑ぶりです。今回ほど苦労して映画を観たのは初めてですよ。本当に。

 さて、本編に移りましょう。この物語を知らない人の為に、あらすじはざっとこんな感じ。天才ショコラティエのウィリー・ウォンカの作るウォンカチョコレートは世界中で人気のチョコレート。でも彼の巨大な工場には従業員の出入りがない。一体どうやってこのチョコは作られているのか?皆が疑問に思っていたある日、彼は子供5人を自分の工場に招待すると宣言。世界中に流通しているウォンカチョコレートに金色の招待状を5枚入れた。それを引き当てた子供はチョコレート工場の中を見せてあげましょう。さあ、世界は大騒ぎ。見つかる度、世界のニュースにその映像は流され、マスコミが当選者の家に大挙して押し寄せてくる。そんな大騒ぎの末、5人の子供が決まります。チョコの食べ過ぎで太っている男の子。金持ちのわがまま娘。野心家の女の子。ゲーム浸けでこまっしゃくれた男の子。そしてとっても貧乏で心優しい家族思いの、ウォンカチョコ工場のすぐそばに住む男の子チャーリー。
 彼等5人と保護者5人が指定された日に工場の前に揃い、遂にウォンカ氏に招き入れられます。そこで待っていたものは・・・

 と、ここからは完全にネタバレになるので、読みたくない人はStopして下さい。

 扉の向こうにあったのは、プチ「イッツ・ア・スモール・ワールド」。歓迎してくれているのでしょう。歌に合わせて人形たちがぐるぐる回っています。しかし!いきなり人形の顔がちょっと変。何だかやけどが治ったみたいな顔?と思っていると、フィナーレで花火が始まり、人形が燃える燃える!しかもグロテスクです。バーっと顔が溶けて、目がごろんと出てきたりなんかして(笑)もう、最初に一発お見舞いって感じ。ブラックだ〜っ!
そこに、おかっぱ頭に帽子をかぶり、70年代グロムロック風な衣装のデップ演じるウォンカさんが登場。燃える人形の後にこの人ですよ、この人。世界中の人が興味を持ってるチョコレート工場に招待されて、ラッキーだと思われてる5人はアンラッキーな5人だったんじゃないかと思う空気が既にここでもう漂ってます。もう最高(笑)

 ウォンカは笑顔を作っているものの、自信がないのか、皆にしゃべる事は用意して来たカードに書いて持ち歩いてます。しかも、予定外の質問が来たらカードを慌ててくって、探す探す!
 見た目は色白、おかっぱ頭で年齢不祥。きらきら光る目を持っていて、かわいいんだけど、目の下のしわが歳を表してて、大人子供でバランスの悪い感じがその目の下のしわに良く出てて、この役にぴったり!目の下のしわが最高!って変な話しですけれども(笑)
 作り物のような真っ白できれいに並んだ歯(実際これは入歯を使っていたそうです)をチャーミングに見せながら笑っていますが、本当はこの人、人間が苦手なんだろうなっていうのが、彼の落ちつかなさ、その行動と言動全てから溢れて出てます。そんなに辛いんだったら、招待しなきゃ良かったのにってぐらい。ふふふ。
皆に楽しんでもらうべく、一生懸命彼なりに努力してる風ですが、土台常人とはズレてるウォンカの事。変な「間」がゲストと彼の間には生まれてきます。

 子供のような心を持っていて、天才なんだけど思いっきり人間的に偏っていて、人とコミュニケーションが上手くとれず、チョコレート工場という温室に閉じこもったバランスの悪い人。そして、ある意味限りなくピュアで美しい心の持ち主かと思いきや、気に入らない人間への仕返しは思いっきり!するという、かなり怖い男。しかもそのこらしめてやろうという気持ちが大人のそれとはちょっと違ってて、子供に限りなく近いのに、大人で天才なだけに、それが大胆に実現してしまうかなり怖い男。それがウォンカ。
というのが、デップによって見事に表現されていました。揺れ動いているけど、結局自分の好きなようにしかやらない彼の心が顔の表情から読み取れます。この一筋縄ではいかない、かなりクレイジーな男ウォンカを魅力的に演じるデップを、ティムの作り出した独特の映像美を持つ世界の中で観る醍醐味。ああ、面白い!

 しかし、何なんでしょうか。このハリウッド予算でB級テイストを失わないティムワールドは。豪華絢爛B級極上映画!って感じが随所で感じられるんですよね。
 もう、それはティムの趣味の世界!ティムとデップの遊び心満載の世界!でも、それが一人突っ走った物になるのではなく、皆に受け入れられている。この特異な存在ティム・バートン。幸せな男です。絶妙な匙加減を知っているという事ですよね。

 今回特筆すべきはやっぱり「ウンパ・ルンパ」の歌(計4曲)でしょう。言葉は原作そのままですが、音楽担当のダニー・エルフマンが素晴らしい。CD欲しくなっちゃうぐらいインパクトのあるナンバーが次々に繰り広げられました。まさかあんな展開でやってくるとは。もう、そこだけ抜き出したらMTVで流せるプロモーションビデオになってます。しかも、絶対に流行る(笑)
 身長75cmだそうなウンパ・ルンパ族は皆同じ顔をしているのですが、それを見ながら、コピー、ペースト、コピー、ペーストか〜。あはは〜。と思いながらも、ちょっと無気味かわいい容姿とキュートな動きに手作りっぽさを感じてしまう。これ見たさにDVD買っちゃうなと、かなりしびれてしまった自分に笑ってしまいました。

 かわいいといえば、りす!りすです。も〜これも怖い怖い。怖かわいいりす。何でこう、ティムのものって見た目と中味の乖離が激しいんでしょう。そこがブラックテイストを生み出してるんですけど。

 と、ここまで全く無視してしまっていた(笑)題名にもなってる主人公の「チャーリー」ですが、演じているのは映画「ネバーランド」でも素晴らしかったはフレディー・ハイモア君。今回も良かったです。原作を読んで思い描いていたチャーリーにぴったりでした。ぴったりといえば、チャーリーのおじいちゃんの、ジョーおじいちゃんもぴったり!で、キャスティングも全体に非常に良かったと思います。

 原作には無いウォンカの父親が歯科医だった説とか、チャーリーの靴磨きシーンから後ろの物語の細かい展開とか、原作にはない部分の是非はもう、問いません。とにかく、ティムとデップによる「チャーリーとチョコレート工場」は失敗しがちな原作物にしては珍しい、非常に幸せな作品です。ダールの書いた物語を大切にしながらも、創造する事を楽しみ、彼等なりの解釈で、こだわりで、ウォンカ氏の世界を生み出しています。

 カラフルでブラックで、キッチュでヒューマンで、マニアックで一般ウケしてる不思議な映画「チャーリーとチョコレート工場」。ティムとデップからのご招待を、あなたも受けてみてはいかがでしょうか?


◆9月17日◆MOVIE◆メゾン・ド・ヒミコ◆

 メゾン・ド・ヒミコの時間は坦々と━しかし巻き戻すことは出来ない時間というものの至極当たり前な、自然のベクトルを持って━表面的には穏やかに、しかし確実に変化を伴って過ぎて行く。

 メゾン・ド・ヒミコ。ゲイバーのママだった卑弥呼が作ったゲイの為の老人ホーム。それはかつて、海沿いの美しいホテルだった場所。そこにカリスマティックなヒミコとその若い恋人春彦、そしてリタイアした6人(ルヴィ、山崎、政木、高尾、木嶋、キクエ)+お世話係(チャービー)のゲイ達が住んでいる。

 物語は卑弥呼がガンの末期にあり、恋人の春彦が卑弥呼の娘である沙織を卑弥呼に会わせようとするところから始る。かつて母と自分を捨てた父を拒絶する沙織。そんな彼女を卑弥呼の為にどうにかして連れて行こうとする春彦。
 この卑弥呼、春彦、沙織の3人の関係と心理を軸にしながら、メゾン・ド・ヒミコという一つのコミュニティーと沙織の働く塗装会社という一つの社会、そして同性愛者というマイノリティーを外から見つめる一般的な社会を映しながら物語は進んで行きます。

 美しく若い男、春彦。卑弥呼が病床についている今、彼はメゾン・ド・ヒミコの事実上の管理人。何故彼がココにいるのか。その理由を無理無くこちらに説得させる存在感が、卑弥呼を演じる田中泯にはありました。
 初めての登場シーン。沙織と自室で対面する場面で、彼は花を手に持ち、ターバン状に巻いたスカーフとローブ姿で現れます。ただ立っているだけでも、ダンサーとしての田中泯のストイックな日常を垣間見る気分になれるほど、体の全てが彼自身によってコントロールされていました。そしてその顔の表情。年を重ねた人の象徴である顔に刻まれたしわさえも味わいになり、本当にいい顔をしている、と思わされます。
卑弥呼の今までの生き方、精神のあり様を物語る顔です。厳かな雰囲気をたたえ彼はそこにいました。
 それを正面から受け止めるのが沙織役の柴咲コウ。メイクダウンして冴えない女性、沙織を好演しています。でも彼女が演じているだけに、沙織は気丈ではありますが、べそっかき顔が似合いそうな、なかなかチャーミングな女性です。

 春彦にとっての卑弥呼の存在。それは精神的なものでもあり、でもそれだけかというとそうではなく、肉体を伴うものでもあり、親子ほど年が離れていますが、父や母という位置付けでは決して無く、愛する人というのが一番しっくりくる存在。彼は深く彼を愛し、尊敬し、憧れているが故に、目の前でその存在が刻々と弱り、自分に別れを告げて行く事に絶えられなくなっています。
「死」を見つめる毎日の中で彼は表面的にはそうは見えませんが、自分自身の精神的な死を恐れ、「生」を感じる状況に自分を置きたいと感じ、欲望を切望するようになっています。
 そんな春彦の心の揺れと、若さ、そして愛情をオダギリジョーは実に魅力的に演じていました。全く無駄の無い体のラインからは(撮影当時NHK大河ドラマ『新選組 !』斎藤一の終盤の撮影と重なっていて、仕事のしすぎが逆にこの作品に丁度良いやつれ具合を生み出してくれたそうです)若さと美しさが、その目からは春彦の人との距離のとり方と優しさが表れています。

 そして、我々は次第に春彦にとってのメゾン・ド・ヒミコという場所についても考えさせられる事になります。彼が卑弥呼のパトロンである70代の老人と寝てまで守ろうとしたメゾン・ド・ヒミコ。そこまでしても守りたい場所。ここは、春彦が存在して居られる場所、母屋的な存在である事がわかってきます。

 実に美しい映像でありながら非現実的になることは無く、メゾンが夢のような存在でありながら夢物語で終わるのではなく、運転資金という現実的な問題が浮上する。そして「老い」という誰にでも訪れる現象が、入居者の一人ルヴィを通して描かれ、そして卑弥呼と沙織の母、卑弥呼と春彦、春彦と沙織を通して色んな愛のあり方も描かれます。
 心と肉体を伴った愛の成立の難しさを感じさせる春彦と沙織。こんなに近くにいるのに、手の届かないもどかしさがこちらにも伝わってきます。しかしその手はどこまで行っても、いつになっても永遠に届くことは無いという事が、本人達にこそはっきりとわかっている。改めて、人間の欲望って不思議ですね。

 死と老いの匂いが漂いつつも美しい空間であるが故に影は落ちていないメゾン・ド・ヒミコの対極にあるのが、沙織の会社です。
 女癖の悪い専務、細川。彼を巡る女子事務員の取り合いもあり、非常に生命力に満ち溢れています。そして塗装会社だけに、事務所は雑然としていて美しくなく、人間関係もひっくるめてある種の影が落ちています。そして、ここでは心を伴わない肉体だけの欲望が描かれます。

 心と体、老い、死。そして生。『メゾン・ド・ヒミコ』は多くの事を我々に語りかけてきます。

 愛する人の死に立ち会う時、見送る人も強くなくてはいけない。老いというものに人は抗うことが出来ない。時は止まることなく過ぎて行く。
 それを脚本の渡辺さんと犬童監督は、ハリウッド映画ならクライマックスを作り、確実に泣ける話しにしてしまうであろうこの話しを、そんな安っぽいものにする事なく、たんたんと静かに、独特のテンポで描いています。

 実に後味の良い、そして充実感のある作品『メゾン・ド・ヒミコ』。夏の終わりにぴったりな物語。そして、魅力的な俳優陣に出会える作品でもあります。ぜひスクリーンでギフトを持った人達の姿を、確かな眼差しを持った人達が作ったこの作品を見てみて下さい。


<June>

DRAMA・タイガー&ドラゴン


◆6月24日◆MOVIE◆タイガー&ドラゴン◆

 クドカンに注目し始めてから、初めて放送時リアルタイムで観ることになったドラマ。それが、「タイガー&ドラゴン」です。
 思い起こせば、2005年のお正月。着物を着た長瀬君が「タイガータイガーじれっタイガー!」と叫ぶ、訳のわからないCMを、何なんだ?何なの?変なの!と思ってみていた1月。その数日後には「木更津キャッツアイ」でクドカンにすっかりやられてしまい、もちろん連続ドラマが始る頃にはもう、気分はすっかりお祭り気分。楽しみで楽しみでしょうがない状態になっていました。
 だって、脚本宮藤官九郎、演出金子文紀(木更津キャッツアイもこの人です)、それにプロデューサーは磯山晶(クドカン作品の定番プロデューサー。略して磯P)、そしてそして、主演が木更津キャッツアイの岡田准一とIWGP(池袋ウェストゲートパーク)の長瀬智也とくれば、面白くないわけがない!
 クドカンの代表作2つの主役をここでまとめて使っちゃっていいわけ?大丈夫なの?という程の贅沢さ。そして、脇には塚本高史、阿部サダヲ、猫背椿と定番の人達が。

 さて、そんなファンの多くが多分浮かれ調子の中始ったドラマは、今まで以上に完成度の高い作品で、クドカンはやっぱり天才なんだなぁと思わされるものでした。この人はどこまで新しい引出しを持っているのでしょう。話しの骨格を作る天才でもありますよね。木更津では野球の表と裏、タイガー&ドラゴンでは落語と現実のリンクです。

 まず、落語と現実の世界の行き来が素晴らしい。知らない人のために物凄くおおざっぱに物語を紹介すると、西田敏行が演じる落語家林屋亭どん兵衛が、落語の天才と言われた勘当気味(気味・・・でしょうね。親の家に時々現れる微妙な感じ)の次男竜二(岡田准一)が落語を辞めて裏原宿で自分のデザインした服を店を開いて売りたいというので、知り合いのヤクザから400万円の借金をします。その取りたてに来たのが、長瀬智也演じるヤクザの虎児。
 見た目は怖い男なのですが、この男自身借金が原因で子供の頃に親が無理心中。一人生き残り、生きて行く為にヤクザになったという可愛そうな生立ちを持っています。そんな訳で、今まで笑ったことが無い。しかし、借金の取り立てに行った先でどんちゃん(どん兵衛)の落語を聞き、思いっきり笑った時、そうだ、落語家になろう!と思ってしまったのです。
 嫌がるどん兵衛に、自分に教えてくれる落語の授業料を借金の返済にあてろとくどきはじめる虎児。そして、晴れて彼は弟子入り、「小虎」という名前をもらうのですが・・・
という物語。毎回虎が習う古典落語がベースにあって、その上で実際に起る日々の出来事がその落語と実に巧妙にミックス、リンクさせられて、虎の噺(はなし)になるのです。
 見ている方が、落語とは別に実際に起っている事件なり物語の顛末はどうなったの?と思っていると、虎の高座が始って、ちゃんとオチがついてきれいに話しが完結していくのです。毎回色んなパターンで繰り出される同時進行の二つの話しがきれいにリンクして、一つのオチにきれいに終わる。もうお見事!としか言い様がありません。

 また、この落語の話しは江戸時代のキャラ設定、実際の話しは現代のキャラ設定になっているのが良いのです。そしてその融合がまた、不思議なほどにスムーズ!寄席で落語を聞いている客席に、いきなりマゲを結った着物姿の男が出てくるんだけど、違和感が全然ない!というのは凄いです。江戸な人達が普通に出現しちゃうのは、話しに引き込まれている虎児ビジョンだという事になっているのですが、これが実に面白い!

 というように、思わずうなってしまうしかけがあって、素晴らしいの一言に尽きるのですが、この物語のテーマは家族、そして親子愛。元来落語は人情物が多いわけで、当たり前といえば当たり前ですが、クドカンでは馴染みのテーマ。ですが、ここまでストレートに、家族を熱く語った作品は、今までなかったのではないでしょうか。

 まず、彼の作品に出てくる親子は、片親と息子が多いのですが、今回は落語家の話しだけに、血の繋がってない弟子まで含めると本当大家族。どん兵衛とその長男どん太の2世代家族プラスお弟子さんがいて、皆で食卓を囲むシーンが毎回出てきます。クドカン自身が父親になった事も影響しているのでしょうか。両親が揃っているというのは、今までになかったパターンですし、こんなに食卓を囲むシーンって今までありませんでした。

   天涯孤独の虎と自ら家を出ていった竜二。竜と虎で「タイガー&ドラゴン」。 この二人、物語の中でも対称的なのですが、岡田君と長瀬君自体も対称的です。神経質そうで色々考えて演技しているんだろうなというストイックさがあり、時折見せるせつなげで、追い詰められたような表情やしぐさに、マダム達(笑)はドキドキ、ヨロヨロしてしまう岡田君。
 一方、天然色が強く、豪快でのびのび、でもほれぼれする凄さとほろりとくる一途さを持っている長瀬君。そこに絶妙に絡んでくる竜二の父で二人の師匠でもある西田敏行演じるどん兵衛。はっきり言って、西田敏行は余り好きじゃなかったのですが、この作品でやっぱり只者ではないと思わされました。何しろ、かわいらしい!そして、上手い!間が素晴らしい。そして、そんな彼にがっぷり四つに組める自然児長瀬も凄いです。ホント。

 さて、そんな中成長株として注目すべきは塚本高史でしょう。「木更津キャッツアイ」のアニで出てきた頃には、まだ今ほどのインパクトはありませんでしたが、クドカン作品の常連になり、「マンハッタン・ラブストーリー」の忍ちゃんではすっかり美しく、そして今回のヤクザの息子「銀次郎」こと「ギンギン」では、すっかり演技派(?!)の道を歩み始めていました。何せ、決め台詞がアップでバシっと決まるようにまでなる成長ぶりです!!しかも、物語全体の重要な台詞も見事決めてくれるのです。役者としての厚みが出てきましたし、銀次郎の彼はそう、光ってます。オーラーが出てます。彼への評価の高さは、ひっきりなしの仕事のオファーを見てもわかりますよね。本当いい役者になってきました。

 そして、今回大注目だったのは、蒼井優ちゃん。竜二のブティックで働く店員「リサ」を演じているのですが、見た瞬間「何、この子、めちゃくちゃかわいいっ!!」とそのチャーミングさにすっかりやられてしまいました。思わず彼女の履歴をネットで探したぐらい。見れば、岩井俊二の映画「花とアリス」に出ていて、やっぱり見る人はしっかり目をつけているのね、という感じ。しかし、ミュージカル「アニー」もバカに出来ませんね。蒼井優ちゃんのデビューがアニーだと知ってちょっとびっくりしました。
 もう一人の注目は、当時本当にまだメジャーではなかったと思われる伊東美咲演じるメグちゃん。天然っぷりとスタイルの良さ。そして何といっても、きらきらのかわいらしさがGood!私のBest of 伊東美咲は多分これからもずっと、このメグちゃんです。

 その器用さと「猫の皿」の猫役で見せたかわいさに、ぎょっとさせられたのは(笑)どん太を演じる阿部サダヲ。まあ、何でも出来る人です、この人。本当に。落語以外は(笑)いや、どん太でない本当の阿部さんは、落語だって出来ちゃうかもしません。グループ魂ではボーカルもしてますが、この人本当に幅広い!そして、舞台で見るとめちゃくちゃかわいい人です。実にチャーミング。
 そして、そのどん太の妻、鶴子を演じる猫背椿も芸達者!まさか演歌歌手な姿を見ることになるとは思いませんでした。この阿部&猫背の大人計画コンビはとにかく、やってくれます。また、その二人に対する美術さんの遊びも凄い。一度観たぐらいじゃわからない。要リピート!な遊びが小道具にも色々入っているのです。特に、ドン太のシーンには。マニアックすぎて、ぼーっとしてては見つかりませんが、一度見つけてしまったら、今度は探さずにはいられなくなるのです!

 気になるといえば、虎児の所属するヤクザの組長、笑福亭鶴瓶の演技もやっぱり気になります。本当この役にぴったりというか、いい味出てます。そして、落語は言うまでもなく、上手い!(笑)しかも、この組長、元オチ研だし(笑)学生時代はどんちゃんのライバルだし!脚本がオーダーメードなので当然とも言えるのですが、本当に別の人では考えられないはまり役です。

 さて、ここからは盛りだくさんに色々出てくるので、ざっと行きましょう。  まず、尾美としのり。「マンハッタン・ラブストーリー」を見てなかったら、誰これってぐらいおじさんになってます(笑)。映画「転校生」の頃の彼はいずこへ。

 次はおでんや半蔵こと半海一晃。この人ね〜。ドラマ「ハンドク」でも長瀬演じるインターンのバカイチに手を焼いて、でもかわいがってましたけど、今回も長瀬いや、虎に何回屋台ひっくり返されたか(笑)でも可愛がってる。物凄く、長瀬も虎も可愛がってる!!
長瀬の漢字が読めないのは一部で有名ですが、「あいつ、台本持って、何て読むのって聞きにくるんだよ。で、教えた後、しばらくして、意味を教えろってまた来るんだよ!」ってインタビューで語ってました。絶対愛情たっぷりにバカだな〜って言ってますよ。きっと。

 次はどんちゃんがいつも食べてる喫茶店、よしこのママ。名前が松本じゅんで、結構そこがツボだったりしますが(笑)、この人ね〜。エキストラかってぐらいしゃべらないけど存在感あるんですよ。しかもクドカン作品の常連でもあります。何が凄いって、落語協会の重要な会議をインベーダーゲームがテーブルになってる「よしこ」でやっちゃうのが凄い!これね。よしこのママが凄いんじゃないのがミソですね(笑)

 そして、この人!どんちゃんの奥さん、皆のおかみさん、さゆりちゃんこと銀粉蝶。上手いです。いい味です。素敵です。そして、何だか最近やたら目につきます。あちこちに出演してます。そして、出身は「ブリキの自発団」だと聞いてびっくりしました。人に歴史あり!

 次に虎のヤクザ業のアニキ日向役の宅間孝行。なかなかいい男っぷりを発揮してくれましたが、何といっても印象に残っているのは、ウルフ商会の橋本じゅんとガンのつけあいをした顔のドアップ(笑)迫力ありすぎです。

 そして、ウルフ商会のボス、橋本じゅん。もうねぇ。この人おかしすぎです。いつもながらめちゃくちゃインパクトありすぎ!しばらく私の周りで「ごきげんさん!」と「かしこまりっ!」が流行るぐらいに(笑)劇団☆新感線、やっぱり凄いです!

 とこう来ると、出てくるのはやはり同じ劇団の古田新太。漫才師まるおで出てましたが、本物のアル中かと思うキレキレな演技。この人、本当に怖いです(笑)清水ミチコ演じるまりもとの夫婦ドツキ漫才師で登場しましたが、あらためて、ドツキ漫才の難しさを感じた次第でございました(笑)かなりのテクニックがあってこその笑いですね。あれは。

 ちょっと1回限りのゲストに話しがそれてきましたが、定番のキャラに戻して竜二の友達で同居人の、中古レコードショップ屋のチビT演じる桐谷健太。なかなか濃いキャラです。本当にチビTばかり着てて、最終回の彼は何故かお腹が・・・目立ち気味(笑)

 竜二の同居人その2は次長課長の次長?(太ってる方が次長?)演じる中国人、リュウさん。最初見た時は本当に中国人かと思うぐらいナチュラルでした(笑) それにしても、チビT、リュウさん、竜二の家・・・いや、部屋は凄いです。初回、大笑いでした。

 レギュラーメンバーで言うと、この人は忘れてはいけません。林屋亭メンバーで唯一の本物の落語家さん。林屋亭どん吉こと、春風亭昇太。彼は落語指導もしていましたが、演技も上手いです。というか、元々落語は一人芝居とも言えますから、上手くて当たり前なのかもしれませんが、ナチュラルで、いい味です。本当に。

 そんな彼と「明烏」の回で縁が出来たのは薬師丸ひろ子演じる克子。借金にま みれでも、借金から逃げ回っている時でも、ブログを書き続ける今ドキなOL克子 。薬師丸ひろ子とクドカンといえば、木更津キャッツアイの「美礼先生」ですが、今回もなかなか妙な間が良かったです。

 では、ゲストだけど定番な人で今度はこの人。組長とどん兵衛がかつて取り合ったマドンナは小春を演じる森下愛子。IWGPのマコっちゃんの母、木更津のローズ姉さん、マンハッタンの千倉先生、と本当に定番なこの人!いつみても、かわいらしいんですよね、この人。ああ、男の人がほっとけない人だな〜と思います。しっかりしてるのに、ほっとけない!

 逆にほっておきたい、むしろ、かってにやってて欲しいのは、ジャンプ亭ジャンプの荒川良々(笑)この人もクドカン所属の劇団、大人計画の人ですが、最近クドカン作品の定番になってます。しかも、売れてきたのか、良く出てる!さわやかという言葉からはほど遠い、独特キャラでつっぱしってます(笑)

 独特キャラといえば、ヤスオ役の北村一輝も独特です。ま〜いいかげんな男ったらない!あの嫌らしい目つきも凄いし(笑)しかも、鶴子ちゃんとおかみさんのさゆりさん、メロメロになっちゃってるし!マダムキラーっていうか、ホスト系?(笑)この人もアクが強い印象に残る役者ですね。しかも、このヤスオってキャラクター。結構抜けてて笑えます。身の危険を感じる天然です。。。

 それとは真逆のさわやか、かわいいキャラなのは、林屋亭うどん演じる、浅利陽介。NHK大河ドラマ「新選組!」では近藤さんの養子になってましたが、この子何でこんなにほっぺが赤いんでしょう。かわいいです。ほのぼの、さわやか系で。

 またその真逆に行きましょう。嫌味で粘着質?な落語協会の会長、柳亭小しん演じる小日向文世さん!木更津のぶっさん(岡田准一)のお父さんは、今回同じ岡田准一演じる竜二をいじめます。というか、竜二が落語を辞めるきっかけになったのがこの小しんなのです。いや〜つれっとした嫌味、上手いです!本当に。木更津で「この鐘を鳴らすのはあなた」を絶唱してたのと同じ人とは思えません(笑)

   と、まだまだキャラはたくさん出てくるので、書き始めたら限りなく!書くことになるので(既に充分長いし)この辺りでやめようと思いますが、盛りだくさんなのに皆キャラがたってて面白いのです。木更津と同じく、本当にそういう人達が浅草界隈に住んでる気がしてきます。

 連ドラらしく、毎回引きのある小ネタ、「さゆりちゃんが泣いてるよ!」とか、借金返済時の封筒ネタとか(これが西田さんと長瀬君のアドリブだったとは凄い!)お決まりのお楽しみもありつつ、あっという間に終わってしまった「タイガー&ドラゴン」
 クドカンの連ドラにはいつもやられてしまうのですが、今回も最終回、どん兵衛の 「なんで今、ここに虎がいないの?!」に号泣・・・更に、ラストのどん兵衛の「タイガー、タイガー、ありがタイガー」にも涙(笑)

 血のつながりがなくったって、心が繋がってれば家族なんだ。その事が、メッセージなんて押しつけがましいものではなく、するっと心の中に入ってくる虎児とどん兵衛、虎児とさゆりちゃん(おかみさん)の関係。
 家族とは?人と人との繋がりとは?をテーマとして突き付けてくるのではなく、気付くと考えさせられている作品。それが「タイガー&ドラゴン」でした。

 それにしても、ラストは長瀬君に全部もってかれた感があって、やっぱ天然は凄い!!ともう、心の中は大絶賛!
 一緒に「タイガータイガー!」とテレビに向かって一緒に掛け声と猫手をしながら(かなりバカ。笑)私は感動してしまいました。岡田君も良かったけど、やっぱり長瀬君のスケールの大きさに、今回は軍配があがっちゃったかなぁ。でも、「岡田の目力」にやられた女性は多かったと思いますよ(笑)

 さて、クドカンと磯P。今度はどこに進むのか?!今から非常に楽しみです。


<April>

MOVIE・真夜中の弥次さん喜多さん


◆4月16日◆MOVIE◆真夜中の弥次さん喜多さん◆

 しりあがり寿との出会いは青土社の雑誌「ユリイカ」での短編漫画。一度見たら忘れられない絵と何とも言えない読後の心的ざらつき。今にして思えばかなりハードな出会いをしてしまったのですが、とにかく私の「初しりあがり体験」は、「Meet the ダーク しりあがり」(笑)でした。何せよりによって「ユリイカ」でしたから。

 さて、そんな彼の作品『真夜中の弥次さん喜多さん』を宮藤官九郎が脚本を書いて、監督までやってしまう!の情報を入手した時には、えっ?クドカン初監督作品と言われたらこれってやっぱり見にいかないといけないの?えっ?しりあがり寿?えっ?誰と行くの?!えっ?って一人だよっ!だって多分コアすぎて一緒に行ける友達居ないもん!と思っていた矢先、『しりあがり寿展』に行った事があるもっとコアな友達が居たことが発覚(笑)
 世の中やっぱり類友というか、何だか微妙に繋がってるものですね。という訳で、大阪公開初日に二人揃って劇場に行って参りました。
 初日って言うと何だか力入りまくりみたいですが、予想通り劇場内はコアなファンっぽい人が多かったです。何か、笑いのどっと来方がコアでした!!

 さて、弥次喜多。クドカンが雑誌で、案外自分は暗くって、人に依頼された作品の明るい部分と暗い部分が8対2ぐらいだとすると、今度の映画では全部自分が作っているので、その比率が逆転すると語っていたのを読んだ時から、ああ、この映画は結構辛いというか、痛いところもやっぱりあるんだと妙に納得してしまいました。笑うばかりじゃないんだよ、という心構えといいましょうか。そんなものを持ちながらいざ劇場へ。

 まあ、クドカン作品は笑ってみてることが多いので、案外気付いてない人も多いのかもしれませんが、死の影はつきまとっているし、登場人物達は人生ままならない事が実に多く、陽か陰かというと、実は陰。
 また物語は場面も台詞もどんどん進んでいくのでそのスピードにやられてついつい見落としがちですが、クドカン作品って人情物なんですよね。本当に。と、ここで思う訳です。時代の最先端を行ってるって思って皆が(皆というより、万人受けするものではないので一部の人だという話しもありますが。笑)夢中(これまた一部のマニアだけという話もありますが。笑)になってる物って、根っこのところは昔からの「物語の王道」、人情モノだったんだ〜!!と。言葉に出して言うのは野暮かもしれませんが、今ってやっぱり「心の時代」だったんだって。ただその物語の持つスピードは、従来の「王道」と思われるドラマの「速度」からは台詞も場面展開も激しく逸脱していますけれども。

 クドカン作品の持つ場面展開のスピード。これについて行けない「大人」は案外多いはず。そのノンストップで変わる場面展開の激しさは、今のところこの「弥次喜多」がぶっちぎりのトップなのではないでしょうか。今回は並の飛び方ではありません。時間、場所のワープだけではなく、時代のワープに喜多さんの薬物中毒によるトリップも入るのですから。3次元の世界が4次元になったぐらいの違いがあります。とはいうものの、トリップの来方は案外マトモというか、毒は無い。出演者の一人が脚本を読んで、クドカンは薬物でトリップした事が無いな〜と思ったと、ちょっと危ない発言をしてましたが、確かに『トレインスポッティング』などとは全く違うトリップに仕上がってます(笑)

 細かい事に気を取られる、もしくはちょっとでもつじつまが合わない事は許せない人がこの映画見るのはちょっと大変です。どんな具合かというと、例えば!英語のヒアリングで一つの分からない単語にひっかかり、それを頭の中であーだこーだ考えてるうちに問題はどんどん流され行き、結局何を聞いたのだかさっぱり分からなくなってしまって何も答えられないような状況と同じ状態に陥ると思われます。そう、あっという間に振り落とされてしまう、というか、置いて行かれてしまうというか(笑)。

※ここからはネタバレもありですので読みたくない方はここでストップしてください

 まず映画の冒頭で、我々はこの映画の「方向性」というか「あり方」を認識させられます。物語は白黒の画面、弥次さん(長瀬)が一人川で釣りをしている場面で始ります。時は江戸時代。弥次さんはもちろん町人姿。川の向こうから戸板が流れてきて、目の前でそれが引っくり返ると女房のお初が横たわっている。死んでいる女房に驚いていると、また戸板が流れてきて、引っくり返ると今度は喜多さんが死んで横たわっている。
これにまたびっくりしていると、次々に、どんどん戸板が流れてきて、3枚揃うと戸板が消えるようになる!!のです。(もう場内爆笑・・・オチゲーかよって皆心の中でツッコミ入れてました。完全に)叫ぶ弥次さんと笑う観客はここで、一気に映画内の「今」に移動。白黒から今度は一変してカラーに。

 後で考えると、ここで一気に、この映画のスタイルが「語られた」なぁと実感。あえてその「語り」の中味を「語る」なら!
 ビジュアルは基本的に江戸。設定も江戸。でも、そこで引き起る現象、アイテムに時代考証は、ありません。言葉だって、基本的には現代の言葉だし、登場人物の中味も現代。そして出てくる映像は、誰かが見てる夢だってありですし、現実もありです。これから現実と幻覚、夢と空想の間を我々は漂いますよと最初からちょこっと語られる訳です。そして、この3つ揃うと消えてく戸板に横たわった、弥次さんが愛する人達映像を見て笑えた人は、準備はOK!みたいな感じになっちゃうのです。

 さて、ディープな愛で愛し合う弥次さん、喜多さんはぺらっぺらな紙みてーな江戸を出て、お伊勢さんにリヤル探しの旅に出ます。そう、リヤルは自分探しと読みかえ可能。お伊勢さんに行けば、リヤル(自分)が手に入るから行こう!とこういう事なんですが、ここでフと思う事が。
 あれあれ?こういう人、どこかで見た事あるかも。そう言えば、私の周囲で25歳ぐらいの頃、ワーキングホリデービザを使って「自分探しの旅」に出た友達、結構居たよね〜。ちょっとあれっぽい?と。
 その人達が何かを見つけて自分が見つかって帰って来たかどうかは追跡調査してないので分かりませんが(笑)、この感覚。正に現代。そして、IWGP(池袋ウェストゲートパーク)も木更津もマンハッタンも、その場所にこだわり、そこで生きてる人達の物語を書いて来たクドカンにしては珍しいく、ロードムービーになっている事が明かにされるのです。

 さて、ここからは大づかみに行きましょう。愛する恋人のヤク中を治し、共に生きる為に弥次さんは、ほろりとさせられる一途さで喜多さんをお伊勢さんに誘います。この弥次さんを演じる長瀬智也の懐の深さと包容力、そして大雑把に見えて実は繊細!という味が何ともいい。「おいらはおめえが好きだ〜っ!!」ってどんな場所でも、どんな時でも絶叫出来る熱さと潔さ、誰にも止められない勢いを持っていながら、喜多さんが他の人に心惹かれていると察知すると、ぱっと身を引いてしまう、そっと見守ってしまう優しさと大きな愛情が何とも心に染みてきます。

 一方喜多さんはこんなに愛されているのに、気付いていながらでも、やっぱり一番は他人ではなく「自分」。そんな喜多さんを演じるのは中村七之助。七之助といえば、TVの密着取材などで小さい頃から見てきただけに、まあ、こんなに大きくなってと、ちょっと知り合いの子みたいな感覚がこっちにあったりなんかしちゃう訳ですが、ところどころで、大人な長瀬君に、ガバっと来られては、素の部分で恥じらい照れて、許してくださいって顔を赤らめながら長瀬君を阻止してる、みたいな所がとっても笑えて、まだまだ子供だな〜と思わず微笑んでしまいました。リアル恥じらい、みたいな(笑)

 そんな二人を軸に、物凄く個性的、というより濃いキャラクターが続々登場。クドカン作品の定番、古田新太、山口智充、阿部サダヲ、荒川良々、などのほか、松尾スズキに中村勘九郎(当時・現、勘三郎)まで!!そして、やっぱりクドカン作品では妻夫君は悪人でした(笑)いつも彼悪役なんですよね。ふふ。

 今回いつにも増して凄かったな〜と思うのは、お茶屋の「おちん」こと山口智充。そう、ぐっさん!強烈キャラですよ。どれぐらいのインパクトかっていうと、有名なカルトムービー『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリーの登場シーンぐらい。っていうか、それをパロッテると思うんですけど。名前のインパクトも去ることながら、かんざし投げまくりで編みタイツ見せびらかして絶唱してました。。。

 一方、思ったよりインパクトが薄かった(いや、あのヒゲずらの花魁だけでも十二分にインパクトはあるのだけれど!笑)のは、松尾スズキの「ヒゲの花魁」。
だって、プロモーションビデオ仕様なんだもん。歌ってるだけなんだもん。てな訳で、こっちはちょっと台詞が欲しかったです。

 古田さんは髪型というか、はげ具合がりゃんりゃんのお父さん(少年アシベ)の髪がびちゃったよ〜みたいな感じで、バカみたいな話しなんですけど、何故か?!見てる間は古田さんだって気付きませんでした。びっくりですよ。どれだけあの人の映像今まで見てるのか分からないぐらいなのに!喜び組で金髪のちょんまげにお花をつけて、女子高生ルックではしゃぐ七之助に気をとられていたのかしら(笑)

 そして、語らざるを得ないのが荒川良々(タイガー&ドラゴンのジャンプ亭ジャンプ)。あんなに増殖しちゃうなんて。「良々が増殖」は嫌だっ!違う人がいい!(笑) 何とも不気味な世界を生み出していました。

 そして、この人!映画『ピンポン』を見た時から気になる俳優、ARATA。ちょっと歳とったかな〜と思いましたが、やっぱりクールなバーテンダー。相変わらず良かったです。耽美系不思議ワールドBarは美形なバーテンダーでないと務まりませんよね。

 意外にもと言っては失礼ですが、いい女優になってきたなぁと思ったのは小池栄子でした。弥次さんの妻役ですが、丁度いい厚みのある演じ方でとても良かったです。

 最後になりましたが、アーサー王こと勘九郎さん。あの姿は、笑えました。記念すべき息子と共演映画ですね。インパクト強いはずなのに、他も並じゃないので、そこそこ目立つ程度でした。

 さて、全体を見て思ったのは、やっぱりクドカンって人間が好きなんだなぁという事。人を想う心の怖さも描いていますが、基本的に彼の恋愛感もまっすぐで優しい。そしてこの人は人を「恋しい」とちゃんと思える人なんだなぁといつも感じさせられます。
「せつない」と「恋しい」がちゃんと物語りを通してこっちに伝わって来ます。あんなに強烈キャラが次々出てくるのに、これは長瀬君の力技かもしれませんが、しっかりせつなく恋しい思いが最後に残ってくれるのです。
 そしてやっぱりクドカンは、基本的にまじめというか、まともだなぁと思わされるのです。面白いんだけど、松尾スズキのようなぶっ飛び方はしないというか。トリップシーンにしても、病んでない。ノイズの入った揺らぎとか、毒とか、そういうのがないんですよね。登場人物がどうしようっ!!って悩むっていうのはありますが、結構健全に悩んでるし。物語の中で起る出来事も、案外普通のことから大きくは外れない。
そのちょっとミニマムなのも今の時代だなぁというか、我々世代だと思わされるところです。

 役者、脚本家、ギタリストにして遂に監督にまでなってしまった男、宮藤官九郎。演技、本、音楽において何がしたいかしっかりとしたビジョンを持ち、何が出来るかも知っている。何でもこなせる、恐ろしくキャパシティの広い男。そんな男が作った一風かわったロードムービーという形をとった「人を愛すること」な映画。
 ZAZENBOYSの独特なサウンドと、インパクトのある衣裳、美術を、そして何といっても個性豊な役者たちの作り上げた、全員マイペースな恐るべき人々を楽しみながら、クドカンワールドをちょっと垣間見るのって、リヤルじゃないけど面白いんじゃないでしょうか。


<March>

DVD・マンハッタン・ラブストーリー/南くんの恋人/末っ子長男姉三人
MOVIE・いぬのえいが


◆3月8日◆MOVIE◆いぬのえいが◆

 その名の通り「いぬ」をめぐる11の小品から成る「いぬのえいが」。犬好きならちょっと気になるタイトルの試写会に招待してもらいました。

 さて、ミュージカルあり、アニメあり、クレイアニメもあり、ショートで微妙に連作になってる実写ありと内容はバラエティー豊か。でも品質にばらつきあり(笑)
 面白かったのは「バウリンガル誕生秘話」で、やられたなぁ〜と思ったのは最後をしめくくる「まりも」の話し。その他にも、犬との絆、捨てられてしまった犬の悲しい話など、色々盛りだくさんに詰めこまれています。
 しょっぱな渡辺えり子と佐野史郎が「剣の舞」にのって、公園で犬自慢ミュージカルを繰り広げた時には、豪華な配役とその内容のギャップに戸惑いすら覚えましたが(笑)とにかく泣ける「まりも」で締めくくったところは、心得てます!という感じ。最後にあれをやられては、今までの事もみんな、水ならぬ涙に流しちゃうってなものです。

 そのまりもの話しは実にシンプル。まりもが家に来てから死ぬまでの話しを、飼い主である高校生の美香ちゃんがまりもへ語りかけていく形式でフィルムがまわります。まりもが赤ちゃんの時からフィルムは始まり、大人になり子犬を産んで、家族の一員として美香ちゃんの家で生活するまりも。そして、まりもの死が訪れた後、今度はまりもから美香ちゃんへ語りかけるフィルムに切り替わるのです。既に美香ちゃんからまりもへの言葉で会場中の涙腺が緩んでいたのに、まりもの語りが登場した時には、もう全員号泣!真っ暗な会場の中、あちこちから聞こえる泣き声、鼻をすする音・・・
 自分の犬のガンの告知があった後で見ただけに、私も「まいった、やられた〜」と涙をいっぱい目に溜めて見てましたが、全員が号泣している現状が、ふとだんだんおかしく感じられるようになってきて、不謹慎ながら滑稽になってしまい、涙腺ならぬ笑いのツボを刺激されはじめ、最後には泣き笑いしていました。余りにも製 作者側の思惑とおりに泣かされてる観客と自分に思わず笑ってしまった訳です。

 明るくなった時、後ろに座ってた男の子が「俺、泣きすぎて顔ぐちゃぐちゃや〜。顔洗わな帰られへんわ〜」(大阪の試写会です)と言い、女の子が泣きながら、「あんなにまりもが大事なんやったら、家の中で飼ったり〜や〜!まりも外で死んでたやん。かわいそすぎやん!」という言葉には、思わず笑ってしまいました。ああ、映画館で見る醍醐味(笑)

 それにしても、まりもの話しは一度犬を飼ったことのある人は絶対泣いてしまう話しです。何故なら、皆まりもに泣いてるのではなく、本当は自分の犬を思い出して泣いているのですから。まりもがきっかけになり、自分の犬に泣く。それ故、計算された泣きの映画だとしても、ずるいとか、やられたとか製作者側に躍らされたとか(笑)余り思わない。腹が立たないのです。これまた、上手い!
 それにしても、いぬのえいがは、家族の一員である犬の存在の大きさを感じる作品でありました。みんないぬを愛してますね。

 犬。それはかけがいの無い人生のパートナー。この映画がきっかけとなり、一匹でも不幸な犬生を歩まないですむ犬が増える事を祈ります。


◆3月24日◆DVD◆末っ子長男姉三人(ドラマ)◆

 私の周囲の反応を見ていても、今やこの言葉が一番似合うとしか思えない男「マダム・キラー 岡田准一」(笑)。映画『東京タワー』は未見ですが、かなりの数の世の中のマダム(私はさほどクラクラ来てないんです。まだマダムじゃないつもりだし。笑)がドキドキ、クラクラしたに違いありません。
 でも、私の中の岡田君は「木更津キャッツアイ」の「ぶっさん」!てな訳で、ぶっさんの他の作品を見てみようとレンタルして来たのが「末っ子長男姉三人」でした。今迄ドラマを全然見なかったのの仇をとってるようにドラマづいてます。怖いぐらいに。TSUTAYAに通いすぎです(苦笑)

 さて、岡田君の役柄は、3人の姉を持つ長男で末っ子の一郎君。彼は5歳サバをよんで合コンに参加していた深津絵里演じる春子と結婚します。プロポーズをした時に一郎君が出した条件は、母子家庭で育った自分は長男だから母親(岸恵子)と同居して欲しいという事。そして春ちゃんの方からは告白が。この時初めて自分は25ではなく、30歳だと打ち明けたのです。この後、一旦一郎君は春ちゃんから逃げて行っちゃうんですけど、その5歳の差ってそんなに大変な事?って女心は傷付いちゃいますよね(笑)まあ、最初に嘘をついてたのが一番の問題なんですけど。そう、皆さん歳は最初に正直に言っちゃうに限りますね。そして、そんな歳が問題になるのなら考え直した方がいですっていう私の見解はおいておいて(笑)結局二人は結婚する事になりました。

 母との同居を了承し、いざ新婚生活スタートとなった時、結婚している長女(賀来千香子)が夫の浮気騒動で、海外でキャリアウーマンとしてばりばり働いていた次女(原田知世)が左遷され帰国して、三女(小雪)は売れない役者でアパートの家賃滞納で追い出されて、何と全員が実家に帰って来てしまうのです。さて、姑に小姑3人合計4人と春子は上手くやっていけるのか?!というのがこの物語の本題。

 ま〜この人たちが面白い。一郎君演じる岡田君は実際お姉さんが居るそうですが、本当姉が居る弟っていうのが良く出てるし、姑&小姑と奥さんの間で漂ってる雰囲気が良く出ています。優柔不断っていうか、嵐が過ぎ去るのをじっと待ってるのに慣れてるというか、何というか。
 そして、妻の春子ちゃん。ラジオ局で働き、仕事と結婚を両立させて行こうと彼女なりに頑張ってる姿がなかなかキュート。夢と現実のギャップにもくじけず、めげず、前向きに頑張ってるのです。そのラジオ局で一緒に働く春子の親友を演じる鈴木砂羽がまた秀逸!今思い出しても、あの味、あの間に笑っちゃいます。いい友達です。本当に。
 一郎君も春ちゃんも、背丈だけでなく(言う迄もなく、二人共本当に小柄。笑)性格も本当かわいい人たち。そして、この二人がなかなかちゃんと夫婦に見えるんですよね。役者って凄いですね。いい雰囲気が出ています。
 一郎君の家族の事が原因だったり、元カノが原因だったり色々仲違いしては仲直りする所なんか、結構胸がきゅんとしたりしちゃう訳です。岡田君にぎゅって抱きしめられていいなぁとか、こんなかわいいだんなさんが居て、春ちゃんは幸せだなぁとか思っちゃう訳です。この私ですら(笑)。スワロフスキーのくまちゃん私も欲しいとかね。まあ本当に物が欲しいのではなく、その気持ちが欲しいって意味ですけどね。色々ね、思っちゃう訳ですよ。あ〜岡田めっ!(笑)

 さてさて、「姉三人」です。姉三人!もう、皆さん個性的でおかしいったらありゃしない。このドラマを見るまで、小雪以外あまり馴染みのない人たちで、さほど好きでも無かったのですが、脚本もいいからでしょう。出てくる度に、このお騒がせな人たちに思わず笑ってしまいました。専業主婦、キャリアウーマン、フリーターと役割はちゃんと別れてて、見ていて飽きません。そこに、さだまさし命のお母さんが居て、またこのお母さんが天然でおかしい。

   家族に振り回される若夫婦を見守っているうちに、女性の生き方を考えさせられ、家族って何だろうというのも気付けば考えている。そんなドラマがこの『末っ子長男、姉三人』。岡田君ファンなら、またそうでない人も見て損はしない物語だと思います。とにかく私は毎回笑って見てました。そうそう。『新選組!』の明里ファンは見てみて下さい。鈴木砂羽、本当にいいですよ。
それにしても、さだまさし。何であんなにフューチャーされてるんだろう(笑)


◆3月11日◆DVD◆南くんの恋人(ドラマ)◆

 「きみはペット」(松本潤@嵐)に端を発し、「木更津キャッツアイ」(櫻井翔@ 嵐)で更に気になり、急激に私の注目度が高まったアイドルグループ「嵐」。
 その中でも特に演技派と言われる二宮和也が深田恭子と演じたドラマが、「南くんの恋人」です。

 この作品の前に蜷川さんの映画作品「青の炎」を見てニノ(二宮)の演技の実力の程は知っていたのですが、あのやりきれない心の痛い映画とは違い、南君を演じる彼はとっても優しくのびのびしていて、見ているだけで何だか心があたたまってきます。
 ちょっと優柔不断なところもあるけど、彼女(ちよみ)の事を心の底から大切に思っている、優しくて包容力のある南君。この物語を見ていくうちに、南君がとても好きになりました。

 内田春菊原作の「南くんの恋人」は、ちよみちゃんと南君という高校生カップルの話しです。ドラマのあらすじをざっと書くとこうなります。
 書道部のちよみと駅伝部の南はつきあい始めて数ヶ月。学校の帰り道、ある中華料理店に入り、フォーチュンクッキーを食べたところから二人の人生は一変します。ちょっとした仲違いの後、フォーチュンクッキーのお告げが現実のものとなり、何とちよみは身長16cmの小さな小さな女の子になってしまうのです。
 ちよみは両親を早くに亡くし、寿司屋を営むおじいちゃんとの二人暮らし。でも小人になってしまった自分が帰ったら、心臓の悪いおじいちゃんはびっくりしすぎて死んでしまうかもしれない。帰るに帰れない・・・という訳で、3人兄弟の長男で両親含めて5人家族の南君に身を寄せることになります。もちろん南君の家族には内緒のちょっと変わった同棲生活の始りです。

 ちよみの日中の定番の居場所は南君の胸ポケットの中。ちよみを隠す為、南君は夏になっても学ランを脱ぎません。ポケットの中のちよみに話しかけたりもするので、傍目には一人言を言ってるようにしか見えず、変な目で見られることもしばしば。でも南君はさほど文句も言わず、自分に出きる限りの事を彼女にしてあげるのです。小さかったら生きていくのにこんなに不便!という事が次々に起こり、その度にちよみちゃんと南君は二人の絆でそれを乗り越えていくのです。

 実際にはニノと深キョンはサイズの都合上、別々に演技しているのですが、この二人のやりとりが実に自然。目線もしっかり合ってますし、二人の会話や表情からは相手を思う気持ちがとても良く伝わってきます。本当はそれぞれに一人芝居をしているのだとはちょっと思えません。
 今まで映画「阿修羅のごとく」でしか深キョンの演技を見たことが無かったのですが、随分上手くなったなぁと驚きました。「下妻物語」も見てませんが、日本アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされていたぐらいですから、それなりの演技だったのでしょうね。

 とは言うものの、やっぱり一番の注目は南君演じる二宮和也。舞台「理由なき反抗」のインタビュー(@シアターガイド)で「僕ここ8年間ぐらい17歳を演じ続けてるんですけど(笑)」と話していましたが、撮影当時21歳だとは思えない高校生ぶりです。でも見た目は高校生だけどちよみにかける愛情の深さは、もうしっかり大人。人間としての大きさを感じさせます。物語とはいえ、こんな大切に、こんなに深く愛されてるちよみちゃんて、何て幸せなのかしらって羨ましくなるぐらいです。と同時に、それを演技で見せる事が出来るニノの人間としての大きさ、優しさ、懐の深さが感じられて、彼自身にも魅力を感じました。

   原作ファンにはこのドラマに関して言いたいこともあるかと思いますが、原作を知らない私がドラマを単体で見た限りでは、次はどうなるの?この二人はどうなるの?とノンストップで見てしまう勢いがあり、時にせつなく、時にはおかしく、とても楽しめる作品です。南君の家族、特にお母さんの名取裕子が良き理解者で温か味があり良い感じ。南君がこんなに深く人を愛する事が出来るように育った家庭、という雰囲気が非常に良く出てました。

 とにかく、ニノのこれからは注目です。間違いなく彼はギフトを持ってます。演技だけでなく、ギターを弾き、作詞作曲もこなし、噂によると小説も書いて、歌って踊る5人グループ「嵐」の一人としてツアーもこなしてます。本人はそれなりに大変なのでしょうが、彼の軽やかさとしなやかさは見ていてちょっとわくわくしてしまいます。その小さな体(170cmにちょっと届かないぐらいだそうですが、猫背のせいかとても小さく見えます。笑)と少年のような顔の中にある彼は色々な可能性を秘めています。ゆくゆくは舞台演出もしたいと言ってますが、クリエーターの側に立つ日が本当に来るかもしれません。
 ただ、8年間17歳の役が来ているという発言からも分かるように、これからどう大人になっていくかが彼の課題だろうなぁという気がしているのも事実です。見ていませんでしたが、ドラマ「優しい時間」では大人の役だったのでしょうか?私が心配する事ではないのですが(笑)

 余談ですが、田辺誠一って「きみはペット」といい「南くんの恋人」といい、ドラマで嵐のメンバーにあうと、いつも振り回されてますね(笑)ちょっと損な役回りに見えてしまいます。2枚目のはずが2.5ぐらいになってる感じ。

 それにしても、なかなかせつないドラマでした。最後の最後で、え?そう?そうなの?そんな終わり方なの!あー、そう。やっぱり内田春菊だから??それともドラマと原作は別のラストなの?!どうなの?!と思ったのは私だけではないはず。
 せつない愛。ある意味、究極の愛。そして、幸せ論まで行くかもしれない「南くんの恋人」でした。


◆3月5日◆DVD◆マンハッタン・ラブストーリー(ドラマ)◆

 やっぱり見たいクドカンワールド。という事で、木更津キャッツアイの後、何のためらいも迷いもなく、レンタルしてきたのがこの「マンハッタンラブストーリー」です。
 一番の注目は、私が好きな木更津の「アニ」役塚本高史君が出演していること! というのは置いといて(笑)クドカン初(?)のラブストーリーは、マンハッタンという名のコーヒー専門喫茶店、つまり「純喫茶」を舞台に繰り広げられました。

 池袋ウェストゲートパークの時はイチゴの回、にんじんの回、みかんの回、しいたけの回、つまり「1、2、3」という遊びをしてて、木更津では1回表裏、2回表裏・・・と回を重ねて物語は進み、じゃあ今度のドラマでは何をするの?と思っていたら、登場人物の名前がアルファベット順という決まりを持っていました。
 「A」赤羽根、「B」ベッシー、「C」千倉先生、「D」土井垣、「E」えもやん、「F」船越、「G」は・・・と、あんまり書いたらネタバレなのでやめておきますが、何しろ、マンハッタンの店長(主人公)が黒板に書く相関図をわかりやすく するため(?)なのか、登場人物はきれいにアルファベット順に並べることが出来るのです。

 さて、今回の主役はTOKIOの松岡昌宏。おもいっきりこだわりのある、恋人はコーヒーというバリスタな店長。テレビ局の近くにあるマンハッタンというお店をこよなく愛し、表向きは非常に寡黙。でも心の中では常におしゃべりな店長を好演しています。とにかく彼は対外的にはしゃべらなのです。モノローグでずーっと話しは展開して行くのです。

 そのお店でアルバイトとして働くのが塚本君演じる忍君。君・・・いや、忍ちゃん。いえ、忍さん?彼にはちょっとした秘密があるのです。いえ、本人は秘密にしてなかったかもしれないけど、皆は勘違い?してたというか何というか。この設 定、笑えます。えーい、ネタバレです!知りたくない人はここから読まないでください。

 とっても良く気がつく出来るバイトの忍ちゃんは、すらりと背が高くきれいな男の子、だと思ったら実は女の子!なのです。塚本君演じる木更津のアニはどっから見ても男の子でしたが、忍ちゃんは確かにフェミニン。最初、トランスジェンダーでいこうかとか色々案があったらしいのですが、結局女の子なのにバイトの条件が男性だったので偽って働いていたという設定で落ちついたそうです。
 物語の主流からは外れますが、私的にはこの忍ちゃんがかなりツボでした。塚本君演じる忍ちゃん。本当スマートに動いてます。常にその動きは的確で無駄がなく、しかも所作が丁寧。木更津のアニのようながさつさが全くない!同じ人が演じてるのに(笑)
 とっても自然にいつも画面の後ろに映ってたりして、忍君チェックはかなり楽しめました。テレビクルーで訪れた高校時代の友達(これ、大人計画の紙ちゃんが演じてます。木更津でうっちーの彼女だった子です)が持ってた忍ちゃんの写真を見て、船越が「ギャルだ、ギャルだよ〜」って言うシーンはかなり笑えます。だって写真、「ギャルになりかけ」ぐらいでギャルじゃないし(笑)ちょっと無理あり!です。
 もうちょっと語らせて頂きますと、忍っち。店長に告白した後、逃亡した店長を追いかけて栃木に行き、雨の中傘を差し掛けるシーンの静かな優しさがかわいい!(って細かいっ!私。笑)しかも、店長をあきらめてふっきれてからのサバサバもいい!
一途かと思ったらドライっていうか、今の子らしいっていうか。しかも店長なんだか後追いしてるし(笑)
しかし、ウェイトレス姿、つまりスカートで登場した時には、その足の細さに「おおっ!」とオヤジのように声をあげてしまいました(笑)胴の長さはちと気になったりもしましたが、基本的に塚本君スタイルいいですからね。
 土井垣がわざと床に物を落として拾わせて、スカート姿を楽しもうとするのも分かる気がします。って、違う違う(笑)土井垣のその行動、松尾スズキ説得力ありすぎ!
 最後の方でギターを弾きながら「店長虫のサンバ」(てんとう虫のサンバの替え歌)を熱唱する忍君もキュート!って、塚本君だったら何でもいいんでしょうがって突っ込みが入るような・・・まあ、普通彼が好きでなければ、忍君は影が薄いほうかもしれません。なぜならば。他が濃すぎるドラマなのです!!

 不思議な髪型、すれてるようで時に乙女モードのタクシードライバー赤羽ちゃん演じるキョンキョン。よーく見ると、年輪を重ねた顔が印象的(笑。ファンの方すみません)。
 ミッチー演じるダンサーのベッシー。この浮き方が凄い!(笑)何踊ってても基本はミッチーなのも凄いです。驚愕です。しかも歌謡曲への振り付け。驚愕です。ドラマに出ててもブラウン管の先のベイベーにキラキラ光線放ってるし。
 でもこの二人、妙〜に、微妙〜に、クドカン作品の中で浮き気味な気が(笑)テーストが違うとこが良さでもあるのですが、今後登場する定番な人にはなり得ないと予想出来てしまいます。

 さて、ここからは定番な人々。プレイボーイという言葉が全然似合わないのに何故か女性にもててる土井垣。松尾スズキ、このいい加減でだらしな〜い、ダメな大人の見本なキャラにぴったりです!っていうか、クドカンがあて書きしてるから当然なんですが。最後の最後で赤いトレーナーの女で落ちついたのもとってつけたようで笑えます。
 そして、土井垣妻のYOUも笑える〜。ああ、果てしなく続くゆるキャラというか、脱力キャラの世界〜。
 ゆるいといえば、これまだクドカン定番女優、酒井若菜演じるえもやんも味が出てます。彼女のテンションの高低、本当に凄いです。父親がきたろうだってのも、あ〜また出てきちゃったよ、きたろう、って感じで笑えました。

 そこに強烈キャラで一石を投じる?ヴォイストレーナーのロベルト。出ました。出ちゃいましたよ、山口智光!(笑)ロベルト、驚愕です。「山口さん、あんた何してんすか〜!」ってぶっさん(@木更津)の声が聞こえてきそうな勢いで、長髪カーリーヘアーのロベルト山口、飛ばしてます。「ロベルトソラシド〜♪」ってどんな発声練習なんですかっ!
 どこから見ても日本人なのに「ロベルト」だし、ロベルト茶、ロベルト飴、とにかくロベルトグッズ売ってるし!挙句詐欺で捕まってるし!!

   さて、この人も定番キャラ、森下愛子演じる人気脚本家千倉先生。今回は恋多き女で美しい(笑)彼女が書いてる「軽井沢まで迎えにいらっしゃい」濃いです。見るからに濃いです。
 昼ドラって全く見たことないのではっきりは分かりませんが、ノリは多分「愛の嵐 」(古っ!)「薔薇と牡丹」「真珠夫人」じゃないかと勝手にイメージ。一言でいうなら、軽井沢にあるお屋敷を舞台にした"めくるめく"愛憎劇!ですね。(多分)
 船越英一郎がお屋敷の主人「小暮様」。その召使?愛人?何なの?!が軽井沢夫人(だと思う)、遠山景子。思い出すと何故か再現される台詞が、遠山景子の声で「小暮様、ラブ・イズ・オーバーを歌って」。出てくる曲、出てくる曲、微妙〜に古い!(笑)

 軽井沢の主役、船越と遠山のツーショットは、これから他の番組で見ても笑いなくして見る事が出来ませんっ!船越は思わず「小暮さま〜」って呼びそうになるぐらいに強烈キャラです。もう私の中では「この泥棒猫!」という言葉は「この泥棒蛇!!」になっちゃいましたよ(笑)
 番外編で「軽井沢〜」のダイジェスト版作って欲しいくらいです。

 と、ここで単発ゲストについても一つ。忌野清志郎 が唐突に「マンハッタン店 長の兄と名乗る男」で出てきます。「弟の名はハッタン・マンジロー」と告げるだけの役で。しかも自転車持参(笑)しかも登場はその一回だけだし。しかもしかも、それ嘘だし!

 相当長くなってしまいました。では、ここらへんでって、主役の店長についてまだ全く語ってませんでした(笑)松岡君。前から好きでも嫌いでもなかったけど、最終的にこの役あっててなかなか良かったです。ハッタン・マンジローだし。違う違う。H担当の彼はハッタンじゃなくて、ハロルド。って、えっ?!ハロルド山田って、あんたナニ人なんだよっ!っていうか、家族ナニ人なのっ!?って最終話でつっこみ入れた人は数知れず(多分)。とにかく、最後の最後でクドカン遊んでましたね。あっちこっちでえっ?!ってカップルが誕生してましたからね。

 さて、そんなマンハッタンですが、かわいそうに。放送当時は8%?とにかく超低視聴率だったそうです。現に私もTVでみかけて辞めてたぐらいですから。クドカン作品はDVDでが合い言葉のようになってますが、とにかく!クドカンが一度好きになった人は必ず見てみちゃう作品です。そして、時々、あー、あの人たちどうしてるんだろうって、木更津みたいに思ってしまうのです。

 それにしても、このドラマ見終わったらナポリタン食べたくなるんですよね。そして、気付いたら作ってました(笑)


<February>

DVD・きみはペット/DVD・木更津キャッツアイ/PLAY・なにわバタフライ


◆2月12日◆PLAY◆なにわバタフライ@シアタードラマシティ◆

 「戸田恵子」という人を知ったのはアニメ「キャッツアイ」の瞳。その後、アンパンマンの声も彼女だと知り、キャラのギャップに少々衝撃を受けたりしてたのですが、彼女は声優専門ではなく役者だと知ったのは、舞台「アパートの鍵貸します」でした。といっても、舞台を見たわけでなく、NHKBSの情報番組でちらっと見ただけなのですが。
 その後、役者として活躍しているのは知っていましたが、ドラマを見ない私にとって彼女はいつまでたっても、声優の比重が大きかったのです。

 さて、そんな認識を一変させたのが「新撰組!」京都の旅館寺田屋のおかみ、お登勢。彼女は何があっても動揺しない、凛としたとても素敵な女性を見事に演じていました。そのきっぷの良さに魅力を感じてる中、入ってきたのが「戸田恵子一人芝居なにわバタフライ 三谷幸喜作」でした。

 ミヤコ蝶々。そこそこの年齢に達している大阪人にとっては、昔から知っている実在の人物。私もドキュメントなどで蝶々さんのことはそこそこ知っていましたが、あのとっても大阪な人の生涯を、全く大阪とは遠い所にある三谷さんがどう料理するのか。何だか面白そうな設定です。三谷&戸田コンビで、"ベタ"な大阪にはならないだろうという予測のもと劇場に。

 客席はびっくりするぐらい年齢層が幅広く、男性率も非常に高い。いつも私が行くバレエやミュージカルとは違う客層に、なるほどな〜となんだか納得。開演前には三谷&生瀬コンビによる場内放送が入り、一気に笑いのベースが出来あがります。三谷さんの嘘っぽい関西弁と方言指導の生瀬さん、おかしすぎ!かけあい漫才のような放送の後、本当に場内放送が入り、そこでもまた笑いが。ただ普通に放送してるだけなのに、前フリのせいでギャグになってしまうんですよね(笑)
さて、いよいよ戸田さん一人大奮闘(ご本人は奮闘とか言われたくないでしょうが。笑)の舞台の始りです。

 実は今まで一人舞台を見たことが無いので、どういう展開になるのかとても興味がありました。約2時間という時間、自分の集中力を途切れさせる事なく保ち続け、台詞も噛まず忘れず、観客の興味を引き続ける。想像するだけでも大変だというのがわかります。
 舞台のセットは蝶々さんの楽屋。彼女の一生をある記者が取材に来るという設定で進んで行きます。
 どんな構成にするのかと思っていたら、しっかり子供の頃から今に至るまで自分の人生をユーモアたっぷりに、でも時にはほろりと悲しく、でもあくまでも前向きに、程よくさらっと風通し良く語ってくれました。蝶々という女性のかわいさがしっかり伝わって来る戸田さんの演技に、彼女の役者としての充実度を感じさせられます。テクニックと体力のバランスが丁度いいと言いましょうか。いい具合の円熟度といいましょうか。とにかく、いい役者さんだなぁと思わされる演技です。

 さて、一人芝居で注目すべきは、小道具力と演出力。カレンダーや青いガムテープが帯になったり、人形がリボンになったり、小さなスポットライトや座布団が「お父ちゃん」になったり。きっと稽古していくうちに、色々アイデアが浮かんできて増えていったんでしょうね。これいい!とか、おおーっとか言いながら。一人でありながら、観客にまでしゃべってる相手がちゃんと見えてました。流石です、戸田恵子さん!

 ミヤコ蝶々といえば、人情ものと辛口の辻説法で知られた人。イメージはとっても大阪で、芝居はいつも人情物で思いっきりウェット。まあ、大阪弁で言う所の「ベタな」キャラクター。
 それを今を生きる三谷幸喜が描くと、いい具合にさらっと口あたり良く、しかしちゃんと人間味あふれるミヤコ蝶々になっていました。
ミヤコ蝶々であって蝶々でない。そう、言うなれば「蝶々さんの人生を歩んだある女の物語」

 これからも恐らく再演されると思います。「なにわバタフライ」といえば「戸田恵子」というぐらい、ライフワークに近い形で続いていく予感もしながら、「役者」というちょっと凄い人を見ちゃったよと、ちょっといいもの見ちゃったわと、何だか幸せになって帰路につきました。


◆2月10日◆DVD◆木更津キャッツアイ ドラマDVD+映画日本シリーズ◆

 もー、やられた。もー、参った。木更津最高!ってなわけで、非常に遅まきながらクドカンワールドにすっかりはまってしまったのが、この「木更津キャッツアイ」。
 放送当時低視聴率を記録し、放送後DVDで人気に火がついた、という伝説(?)のドラマです。何せ、映画にまでなっちゃいましたからね。しかも興行収益も良かったそうです。そして、未だ私みたいにレンタルで借りて、夢中で見ちゃう輩もいるドラマなのです。

 まず、脚本。クドカンは天才ですね。映画「ピンポン」しか今まで見たことが無かったので、世間で騒がれている事は知っていても、さほどピンと来ていませんでした。しかし!本当凄い人でした。

 一番、おーっと思ったのは、話しが野球みたいに「1回表」「1回裏」となっていて、普通に見てると、急に巻き戻しが始り(映像で見せてくれます)バッティング音が鳴ると「1回裏」が始るのです。この発想がとっても面白い!
 1回表で、え?何でこうなったの?という事が起こって、そこから遡り、その裏(そこに至った経過)をちゃんと見せてくれるんです。それが、おかしいっ!!  最初見た時には、急に巻き戻しが始ったので、間違ってビデオの巻き戻しボタン押しちゃったかと思っちゃいましたが(DVDを見ているにもかかわらず)、この形式、本当に良く出きてます。巻き戻すっていう手法が斬新です。そして、その裏がまた笑える笑える。

 彼の作品は情報量が多く慣れるまでそのスピードについていくのはちょっと大変かもしれませんが、慣れてしまえばそのリズムは心地よく、会話も笑わずにはいられない!
 それぞれの台詞が洒落ているというとはちょっと違っていて、言い得て妙という か、あー、こういう反応しそうだよね〜とか、そう来るの?そう来るのかっ!!みたいなので笑ってしまうのです。

 といっても「主人公が死ぬまでの数ヶ月間の話し」という設定なので笑いばかりでなくシリアスな部分もちゃんとあって、ほろりとさせられる所もあり、最終回なんか気づいたら笑いながら泣かされてました。悔しい〜っ!やられた〜っ!クドカンに泣かされた〜っと思う頃には、もうどっぷり漬かってて手遅れでした。同じシーンを2回目見た時には、大笑いしてましたが。本当、やられたニャ〜(木更津調で読んで下さい)って感じ。

 さて、そんなクドカンワールドを支える役者陣がまた個性的。
まず主役は余命半年と言われ21歳にしてガンを患っているのに、とっても元気なぶっさん(岡田准一)。最後まで何ガンだかとんと分かりません(笑)
 その親友で同じ高校の野球部出身の、バンビ(桜井翔@嵐)、マスター(佐藤隆太)、アニ(塚本高史)、そして1つ学年が上のウッチー(岡田義徳)。この5人が木更津キャッツアイなのですが、もう、本当にいいチームワークです!
 そのキャッツメンバーの脇を固めるのは、彼らと同じ学年で、ぶっさんが好きなんだけど相手にされず、バンビに思われているモー子(酒井若菜)、皆が卒業した高校の古文の美礼先生(薬師丸ひろ子)、ぶっさんのお父さん(小日向文世)、ストリッパーのローズ姉さん(森下愛子)、ものまねヤクザ山口(山口智充)、野球の監督猫田(阿部サダヲ)そして、木更津の守り神?オジー(古田新太)。
 もう皆キャラがたっています。というか、物凄く皆個性的で主張が激しいのに、ちゃんと全員が成立していて、調和がとれているのです。どれぐらい調和がとれているかというと、本当に全員木更津で生活しているような錯覚に陥ってしまうほどに。しばらく見ないでいると、あー、皆に会いたい〜って本当に思ってしまうのです。人、これを中毒と言う・・・(笑)

 このドラマのいいところは、その構造とキャラクター、会話の面白さ、ポンポン出てくる台詞と場面展開のテンポの良さと、何といっても皆の心のあったかさ。ばかっ正直で不器用なとことかとても笑えます。そして偶然が重なってこんなことに?!な展開もGood!!

 主人公は余命半年、半年って言われてて、本当かよって自分も周りも思ってて、時々ブルーも入るけど、基本的にはカラッとしてて。製作者側は、最初からしめっぽくなく人が死ぬ物語を目指していたというだけあって、私はちょっと泣かされちゃったけど、見終わった後、あー、楽しかったなぁという心地よさが残ります。9回終わって、それじゃあ、1回表からまた見ますかって感じです。

 ところでこの一度聞いたら忘れられないインパクトのあるタイトル名について少し。
 「木更津」は木更津を舞台にした話しという事で分かりますが、「キャッツアイ 」って何の意味?と思ったら、本当にあの、コミックの「キャッツアイ」だって分かった時には「こっちもそのまんまかいっ!」と思わず突っ込んでしまいました。  メインメンバーの5人はキャッツという野球チームを組んでいるのですが、泥棒もしてるのです。初回、泥棒を始める時、なに流で行くかって事になって、皆で決めたのがルパン流ではなく、「キャッツアイ」だったのです。
 という訳で泥棒決行の初日、「キャッツアイ」の格好で待ち合わせと皆で決めて 、うっちー一人が瞳(キャッツアイ)の格好(レオタード+腰にスカーフ)で来て、他のメンバーは全員シティハンターの冴羽りょう(ジャケット+Tシャツ+パンツ)っていうのには笑えました。しかもうっちー、モヒカンになってるし。しかもマスター、息子のミスター背負ってるし!子守りしながら泥棒ですよ、泥棒!

 そして、忘れてならないのが、物語中何度も出てくる木更津の踊り「やっさいもっさい」。これって本当に木更津で踊られてるみたいなんですが・・・耳に残るこの歌。目に焼き付くこの踊り(笑)
 初め見た時は、何だこの踊りと歌は!!と全然好きじゃなかったのですが、何度も見聞きしているうちに、だんだん馴染んできてしまい、時々やっさいもっさいを踊るバンビが見たいなぁとか思っている自分に、おっと危ない!おっといけねぇ!(笑)って思ってしまうのです。
 因みに、この音楽が鳴ると思わず体が動くようになってしまったら(私のことではありません。念の為)、それは相当重症です。木更津に住んじゃえば?ってぐらい(笑)

 映画「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」に至っては、この「やっさいもっさい」が物凄い!鍵を握るんです。こうやって書いてるだけで、頭の中に「それそれー、それそれー、やっさいもっさい、やっさいもっさい、それそれー」が聞こえてくる〜っ。おそるべし、やっさいもっさい!

 DVD5枚と映画1本を見てちょっと経つと、また彼らに会いたくなっちゃう困ったドラマ「木更津キャッツアイ」。今のところクドカン作品では一番好きなこのシリーズ。ありえないだろうけど、続編求む!!


◆2月02日◆DVD◆きみはペット◆

 放送当時、タイトルだけは雑誌で見ていて、人間がペットって何なのこれ?ありえない・・・と思った記憶があるのですが、今ごろ「きみはペット」にはまってしまいました!かなり出遅れてます・・・自覚してます。

 何がきっかけだったのかというと、テレビの再放送。途中から見たので、何でモモ(松本潤@嵐)がスミレちゃん(小雪)の家でペットとして飼われるようになったのか、いまいち分からず見ていましたが、あっという間にモモとスミレの関係にすっかりやられてしまいました。というか、正確に言うと、モモにやられてしまいました。男の人には理解しがたい話しかもしれませんが、スミレちゃんの心もモモとの関係も、モモの存在も、20代後半以上(?)の女性にはこたえられない(笑)話しだと思います。

 それにしても、松潤のペットっぶりは最高です。見ていると、あー、髪に触ってみたいとか思っちゃうぐらい柔らかそうで本当に犬みたい。そして彼はスミレよりよっぽど大人で良く出来たわんちゃんなのです。しかも実は結構有名なダンサーという設定だし。
 ローザンヌで賞を取るぐらいの将来が期待されているダンサーなのに、背がのびなくてモダンにうつったっていう設定もツボです。そして、彼のしぐさとか、心の動きがとってもキュートで見ているだけで顔がほころんでる自分に気付きます(笑)スミレちゃんだけでなく、私たちまで癒してくれちゃうなんて。もー。モモったらぁって感じ。

 結局DVDをレンタルして全貌が明らかになりましたが、モモがスミレのうちに来ることになったところ、ペットになるって決まったところが最高に笑えます。
「ペットとしてなら置いてあげていいわよ。でも人権ないわよ」「人権ないの?」「ないわよ、だってペットだもの。ね?無理でしょ?だったら出てって」というスミレの言葉に一瞬考えた後、「ワン!」って答える松潤いえ、モモ。その瞬間のスミレの動揺が、もう最高〜っ。スミレが予想する反応を、全てひっくりかえしてくれるモモは本当に笑えます。

 服従のポーズもかわいいし、ペットだから名前を自由につけてという申し出の後、スミレがかつて自分が飼っていた犬の名前に決定した時、「ちぇっ、犬かよ〜」と一度は文句を言ったものの、すぐに気を変えて「おれはモモか〜」とご機嫌そうなのもおかいっ!
 すねてしゃべらなくなった時、ご飯を取り上げられて「クーン」って犬泣きするところもかわいすぎ。しかもスミレに(根負けではなく!)根勝ちしてるし。とにかく頭の回転と切り換えが早く、忍耐力もあり、包容力もある恐るべきペットモモ!すねても、甘えても、怒っても、もう何してもかわいいです。
 スミレもそうですが、見ている私もすっかりモモにやられちゃいました(笑)モモという名のDVDペットが欲しくなるぐらい。

 そんなモモのせいで、スミレちゃんの恋人蓮見先輩の影が薄いというか、かすんでるというか(笑)田辺誠一、お気の毒様です。。。東大出で仕事も出きる蓮見さんより、モモの方がよっぽど繊細でクレバーに見えちゃいます。かわいそうに。

 それにしても、スミレちゃんって木更津キャッツアイのモー子とマスターと一緒に仕事してたんですねって、違う違う(笑)


<January>

PLAY・ROMEO AND JULIET/DVD・ビギナー/MOVIE・ネバーランド


◆1月22日◆MOVIE◆ネバーランド◆

 ジョニー・デップがピーターパンの原作者、ジェームズ・バリの役を演じる。そう聞いた時から 、絶対に見ようと思う事数ヶ月。デップもピーターパンも好きな私が見に行かない訳がない。なにせ、我が家の犬は賢くなるようにと、ウェンディーの乳母犬ナナにあやかって、ナナと命名したぐらいですから。

 ニューズウィークの評も上々、前売りも購入し、後は観に行くだけという状態で向かえたその日。友達との約束の前、腫瘍摘出手術を受けたナナ(犬)の抜糸をしに行った獣医科病院で、ガンの告知を受けました。
 14歳と1ヶ月。人間にすれば90歳近い高齢の犬ですが、毎日同じ空間で暮らす家族が、後8ヶ月で別れが来ると思ってくださいと言われた事は、余りにも衝撃的でした。という訳で、映画を見にいく状態ではない中での『ネバーランド』となりました。

 映画の中に犬が出てきただけで涙ぐみ、何が悲しくて、何が感動的で、何がどう心に響いているのか分からない。今悲しいのは、物語のせいなのか、余命宣告のせいなのか。心の中のバランスが崩れていて、心が鈍っているような、いつもより敏感になっているような、ぐちゃぐちゃな状態で見た『ネバーランド』。
 という訳で、平常心ではない状態で観たのですが、それでもこれは良い作品だと確信できるものでした。

 まず、ジョニー・デップ。彼以外にこの役は演じられません。子供と同じ目を持ち、同時に父親の目も持っている。純粋、繊細、それでいて包容力があって、ちゃんと大人なのです。人との距離のとり方も実にエレガント。子供達とのやりとりは心に深く残ります。
 デップの過去の映画『ドンファン』も彼以外には演じられない役でしたが、このバリも彼以外に考えられません。恐らく、他の役者では悪い噂を打ち破るような、バリとデイヴィス家の人々の関係を構築することは出来なかったでしょう。デップが役者として、父親として実に充実している時期にある、というのがダイレクトに伝わってきます。

 そして、デイヴィス家の4兄弟。皆それぞれに光るものを持っています。
 公園でバリと最初に出会ったのは末っ子マイケル。バリの座るベンチの下に横たわり、牢屋に入れられているんだと語る洒落たやり取りを見た瞬間、嬉しくなってしまうほど、この作品に引きつけられました。
 長男は「少年が今、大人になった」とバリが言うところの場面が秀逸。少々印象が薄いのは次男ですが、彼もいい演技をしています。
 そして、何といってもピーターパンのモデルになった、三男ピーター。その演技力は目を見張るものがあり、だからといって上手い子役にありがちな計算された演技ではなく、実にナチュラル。少年が持つピュアさ、センシティブな心が痛いほど伝わってきます。細い少年特有の体の中に、複雑な心を抱えるピーター。
 ジョニー・デップとの関係は映画の中だけではなく、「撮影最終日、互いに目を見ないようにしてたんだ。何故って、目があったらお互い泣いてしまうから。」とデップがインタビューで語っているほど、二人の絆は実際に深まっていたそうですが、その二人の心の交流がスクリーンからも強く感じられました。

 母親役のケイト・ウィンスレットも、実生活で母親になり、演技に幅が出てきていい女優になったなぁと思わされます。ダスティン・ホフマンは控えめな演技で好演。お疲れ様なのは、ナナ役でぬいぐるみを着せられた俳優でしょう(笑)

 さて、脚本です。この映画は本当に台詞がいいのです。実に洒落ていて、心に響きます。子供達とのごっこ遊びの入り方も実にいい。劇中劇が非常に上手く入っていて、ネバーランドのシーンも美しく、全体を通して絶妙なバランスを持っています。そう。監督、脚本、美術、編集、そして役者。『ネバーランド』は全てが揃った幸せな作品なのです。

 世界中の人が知っている、大人にならない少年が主人公の物語、ピーターパン。その物語がどうやって出来たのか。どんな人が書いたのか。子供の心と人の心のあたたかさを忘れかけたら、この『ネバーランド』に少し旅に出るのをお薦めします。今度は平常心の時に、もう一度ゆっくり観なおしたい映画でした。

余談ですが・・・
 映画のパンフレットにある映画評論家が、ピーターパンの初演の時、バリが孤児院の子供達を劇場に招待するシーンについて「演劇人としてのバリって結構抜け目がなかったんだ」と、子供達を演出効果のために使った、というようなことを書いていましたが、バリにそんな計算があったとは思えません。子供達と一緒に観ることによって、大人が忘れかけていたものを思い出す、子供に戻って楽しめるという効果は絶対にあると思いますが、バリは純粋に子供達を招待したかったのだと思います。子供を上手く利用した、というような発言は、一目おいている評論家の発言だっただけに、何だか残念です。それこそ、若い言い方をさせて貰えば、「世俗にまみれた大人の見方」に思えました。

   さて、ジョニー・デップとピーター役のフレディ・ハイモア君。次は私の好きな映画監督ティム・バートンが撮る、私の好きな物語、『チョコレート工場の秘密』で共演です!


◆1月18日◆DVD◆ビギナー◆

 基本的にドラマは見ない私が、2004年NHK大河ドラマ『新撰組!』を観たばっかりに、急に気になる俳優が増え、過去の作品を見始めた・・・の最初のドラマがこの 『ビギナー』。
 当初の目当てはオダギリジョーで、彼が出てるという事以外は、さほど期待はしていませんでした。ところが、これが面白い!という訳で、BSフジで偶然8話目を見た後、すぐにレンタルして全部見てしまいました。

 これは、元OL、元不良、元ヤクザの内縁の妻、失脚した元官僚、主婦、新卒、リストラにあいかけた会社員、アルバイトをしながら16年チャレンジしてやっと司法試験に合格した男性の計8人の司法修習生の入学から卒業までのドラマです。この8人がそれぞれにキャラクターが立っていて実に面白い!

 基本的には司法修習で出される課題、つまり色々な訴訟、事件の有罪、無罪をこの8人で話し合い、結論を出していくのですが、このやり取りが舞台のようで面白いのです。また、その事件の説明に使われるイラストも独特でおかしい!それ以上に8人がおかしい!!あほや〜んずってチーム名も持ってるし。

 まず、元官僚桐原役の堤真一。もう、この人おかしすぎです。冷たい人かと思いきや、泣き虫さんで、神戸出身の一人っ子の寂しがりやさん。愛すべき男、桐原!
 この桐原とオダギリ演じる羽佐間、桐原と我修院達也演じる(16年チャレンジした男)武さん、この組み合わせの会話はおかしすぎる!!思い出しただけでも、笑えます ・・・

 一番の怪演は武さんを演じる我修院。彼の声を聞いた途端、堤さんは笑いすぎで死ぬかと思ったらしいですが、NG集を見ると、キャストの皆は彼の台詞を笑わずに聞くのに相当苦労したようです。最近、インディーズ系の映画に出演の多い彼ですが、本当得がたい俳優ですね。過去の彼からは想像、出来ませんっ!(ビギナーを知ってる方は、武さん風に出来ませんっ!を読んで下さい。笑)

 おかしいといえば、元ヤクザの内縁の妻役、森乃を演じる松雪泰子。桐原との大人な関係はとっても素敵でしたが、何といっても、焼き鳥事件で財布をかじったシーンは名場面でしょう!キャラ壊れすぎ、おかしすぎ。もう女優魂って感じです。

 恐るべき新人、ミムラ演じる元OLの楓ちゃんは、丁度良いかわいさ、誠実さと落ちつきがあって、GOOD。オダギリ演じる羽佐間との関係もいい雰囲気で、微笑ましい。新人とは思えない落ち着きぶりを見せています。

 大学卒業したての気の強い小娘、奥菜恵演じる松永と、北村総一朗演じるリストラ会社員崎田さんとのやり取りが笑えます。「ほっとけ!」とか「おやじっ!」とか年上を全く敬ってない言葉が、何故かかわいくて笑えるのです。

 そして、オダギリ演じる元不良、羽佐間君。この髪型、微妙〜です。衣裳も微妙〜(笑)でも終盤にかけて段々格好良くなってきましたが。
 それはともかく、何でも「無罪です!無罪!かわいそうな○○さんは、そんな人じゃありませんっ!」と弁護する相手への感情移入はもう、ギャグです。かわいい、そう、とってもかわいい奴なのです。本人曰く、明るく、まっすぐで自分とは真逆な役だそうですが(笑)

 とにかく、8人の絶妙なコンビネーションに声を出して笑えて、何だか法律って面白いと思えるかもしれないドラマ、ビギナー。疲れた時にぜひどうぞ。適度な笑いで心があったまるかもしれません。
「この表現は?」「妥当です!」(笑)←分かる人だけ笑ってください


◆1月16日◆PLAY◆ROMEO AND JULIET ◆藤原竜也&鈴木杏@シアタードラマシティ◆

 劇場へ入ると、真っ先に目に入ったのは舞台から客席に向けられたライト。その光は舞台上にあるセットを隠す役割を果たしていて、辺りは闇に包まれています。

 開演と同時に我々の前に現れたのは、無数の顔写真。それは白黒で、人種、性別を問わず、人間のアップが床から天井まで組まれているのです。その左右には階段。そして人の顔に埋め尽くされた壁は時には扉へ、時には家具へ、窓に、バルコニーへと姿を変えて行くのです。この壁は3層に分かれていて、どの層も次の層に移るのは容易ではない高さになっています。

 ロミオとジュリエットの物語は今更言うまでもなく、モンタギューとキャピレットの争いの中、両家の一人娘と一人息子が一瞬にして恋に落ち、命を絶ってしまうまでのたった5日間の物語。
 ジュリエットは14歳、ロミオは18歳。今回の主役、鈴木杏は17歳、藤原竜也は22歳と、通常演じられる中ではかなり実年齢に近いキャスティングです。

 さて、私の注目は藤原竜也演じるロミオ。物語の始まり、ロミオはある人に恋焦がれていますが、どうやら失恋した様子。壁にもたれかかって右足のかかとを、軸足にしている左足のかかとに打ちつけたり、女は彼女だけではないと慰められても、他の人に会っても彼女の美しさを再認識するだけだと全てを拒絶してみたり、とにかく傷心の様子。
 最初、シェイクスピアのセリフの量と彼がしゃべる早い口調に慣れるまで少しかかったことも影響してか、特に「ああ」とため息のように言葉を発し、少し長いセリフを言うというのを繰り返す場面など、まだ開始早々でウォーミングアップが出来てないというか、演技がちょっと固いかな?と思いましたが、ジュリエットに会った途端それは一変しました。

 仮面をつけたロミオはジュリエットを見た途端、雷に打たれたように恋に落ちてしまいます。先ほどまで失恋を嘆く言葉しか生み出さなかった口が、喜びに溢れ生命の息吹を持った言葉を次々に生み出して行く様は、さっき泣いたカラスがもう笑ったという感じで、もうニコニコ、ニコニコしています。その変わり様に思わず笑ってしまうほどです。でも、それは「舌の根もかわかぬうちにコロっと変わっちゃって」ではなく「恋の魔法ってこうなのよね」とこちらに思わせる、非常に微笑ましい説得力!

 ジュリエットに何とか近づきたい、彼女に自分を見て欲しい。彼女の手に触ってみたい。自分をアピールする為に、敵陣にもかかわらず、仮面をつけたりはずしたり忙しいロミオ。彼は踊りの輪に加わり、どうにかジュリエットに辿りつく事が出来ました。

 恋の衝撃を受けたのはジュリエットも同じ。鈴木杏は流石舞台を数多くこなしてきているだけあって、舞台という空間にいい意味で慣れています。しかしそれはいい「慣れ」で、ジュリエットの初々しさと情熱はしっかりこちらに伝わって来ます。恐るべき17歳。
 お互いそっと口付けをした後、舞踏会の終わりに彼らはお互い「誰」を好きになってしまったのかを知る。でも、彼等はその事実にさほど打ちのめされた様には見えない。他の作品に比べ、この舞台の解釈、演出上のロミオとジュリエットは「若い」のでしょう。そして、この物語で一番有名なバルコニーのシーンに物語は進みます。

 恋の熱に浮かされたロミオはジュリエットの部屋の下だとは恐らく知らずに、敵の庭に忍び込みます。ここでの独白が何とも、恋に落ちちゃった少年で、本当にせつなげでかわいい!そこに、ジュリエットがまた恋の矢がトスっとささった状態でバルコニーから出てきます。
 そして、あの有名な「おお、ロミオ、ロミオ。あなたは何故ロミオなの」
このセリフを聞いた時のロミオがもう、もう、もうもう!!
「ねえ、今の聞いた?信じられないよ。僕の名前を彼女が口にしている。彼女も僕が好きなんだ。こんな幸運、こんな幸せ、あると思う?信じられないよ!幸せすぎて死んじゃいそうだ!」
というのを、藤原君は体で表現してくれました。その顔に浮かんだ最高の笑顔と、わが身を両手で抱きしめながら地面に転がる姿で。
 その瞬間客席では、ストレートな感情表現とあまりの可愛さに笑いが起りました。彼本来のかわいさがもう、炸裂って感じ(笑)
 トーク番組なんかで話してる彼を知ってる人はご存じだと思いますが、彼は本当にかわいい人なのです。その表情も仕草も。話しながらクッション抱えてても、その甘ったれな感じが絵になっちゃう人なんです(笑)

 もう、こうなったら彼の恋の翼は両翼とも広がってしまいました。バルコニーに居るジュリエットに、この舞台では天井近くの一番高い位置に居るジュリエットに何が何でも会いに行かなくては。下から声をかけ、自分はここに居るとアピール。ジュリエットも驚きはしたものの、彼がそこにいるという事実に素直に喜び彼に答えます。

 とてもではないけれど、登って行けないように見えている壁。そこをロミオは駆けあがっていきます。何故なら恋の翼があるから。
 白黒の写真の壁には、こちらからは見えませんが足掛けがついていて、それを使ってロミオは壁をよじ登って行きます。一段目は見事クリアー。後もう一段登ればジュリエットまで辿り着きます。彼は再び壁をよじのぼりはじめ・・・もうすぐそこにジュリエットという時、バルコニーの渕に手をかけながらもがく右足の動きがおかしい!!駆け寄ったジュリエットが彼の指先に触れた瞬間の、喜びの身悶え(笑)の右足がおかしいっ!!必死で上がろうともがきつつ、喜びが溢れてるその右足!そのしぐさがキュート!何なんでしょう。壁を蹴ってるだけの足なのに!またまた会場から笑いが起ります。

 そして、漸く辿り着いたバルコニーで、互いを抱きしめあう、恋に浮かされた恋人達。あー良かった。無事辿り着いた。この微笑ましい、まっすぐでかわいいカップルを見ては、もう観客は応援するしかありません。この熱と自分たちしか世界に存在しないかのように突っ走っていく若さが、さっき出会ったばっかりで明日結婚の約束をしてしまう二人に説得力を持たせます。

 今まで見てきたロミオとジュリエットのバルコニーのシーンは、お互いに許されない恋に少しは悩んでいるというのが感じられましたが、蜷川版の藤原&鈴木の二人には、その事にほとんど考えが及んでないように見える。そんな余裕はないほど、互いに夢中になっているというのがダイレクトに伝わってきます。そう。この疾走感、このティーンエイジャー特有の二人の世界がこの物語には必要不可欠なのです。なにせ、二人だけで出会った数時間後に結婚式を挙げてしまうのですから。

 館の中からジュリエットを呼ぶ声が聞こえ、二人の逢瀬は中断されます。
「絶対待っててね」といいながら一旦部屋に戻るジュリエット。一人待つ間も、まだこの奇蹟のような出逢いが信じられない様子のロミオ。彼は地面に降りてジュリエットを待ちます。再びジュリエットが登場。今度はロミオの居る地上に向けて手を伸ばすジュリエット。その手に何とかしてハイタッチしたいロミオ。もう、ぴょんぴょん跳んでいます(笑)

 このシーンは藤原君本来の可愛さが蜷川さんによって前面に引き出されています。蜷川さんは絶対に、日々竜也君がかわいくて仕方ないはず。そしてそのかわいさと、今この時にしかない若さと瑞々しさがロミオにぴったりだという確信が彼にはあったはず。つまり、藤原竜也の魅力を知りつくした確信犯蜷川幸雄に我々はすっかりやられてしまった訳です。もう、思うツボとはこの事です。

 明日、教会で会う約束をしてその場を立ち去るロミオ。あっという間に、この有名なバルコニーのシーンは終わってしまいました。

 場面は教会へ。牧師を見つけるやいなや、未だ興奮さめやらぬロミオは子供のように彼の背中に飛び乗り彼の腰に両足を巻きつけて甘えます。ロミオよ、君は小学生か(笑)
 そして会場からはまた笑いが。どうしてこう、かわいいかなぁ。しかもそれが作り物ではなく、本来彼が持ってるものだから余計タチが悪い(笑)彼のかわいさに勝てる大人はいるのかしら。

 ロミオは早速牧師に報告します。自分が今、素晴らしい女の子に出会った事、ここで結婚式を挙げることを。この場面。ロミオははしゃぎ、牧師は祝福する明るい場面ですが、死を暗示する事も忘れてはおらず、この物語で重要な役目を果たす仮死薬への導入がここで行われます。ロミオが牧師の元を立ち去る時に持っていたのは、白い花を咲かせた薬草。牧師が語る薬草の効能は、治療薬だけでなく、死の香りが漂うものも多く・・・死の陰が少しずつ忍び寄ってきます。

 ロミオが街で会ったのは、悪友マキューシュオたち。彼らと話したむろするロミオは高校生のように見え、ジュリエットの乳母からジュリエットの伝言を受け取る姿は、彼女の息子のように見える。ここのシーンで、ロミオは至極普通な男の子に見えます。年齢よりも幼く見えるぐらい。

 そして、約束の結婚式のシーン。ここがまた笑えました。出会った途端、寸分の隙も作りたくない!一瞬一秒も離れて居たくないとばかりに、抱き合い、離れない二人。その密着度は結婚式が始められないほど(笑)

 めでたく結ばれた二人。この後は悲劇が具体化してきます。まずは、モンタギューとキャピレットの小競り合い。ここでは、結婚式後のロミオが大人になったという変化が見てとれます。まずは仲裁に入り、怒りをおさめて互いの仲直りを語りかけるロミオは、もう仲間と戯れていた少年ではなくなっています。しかし、そんな簡単に確執は治まるわけはなく、結果的にマキューシュオとティボルトの死が訪れます。このシーンで藤原君の殺陣を見ながら、沖田総司とはまた殺陣の種類が違うものねと思ったりしながら、怪我をしないで舞台を毎日こなすのは大変だと実感。

 露出度の高い癖のあるキャラクター設定だったマキューシュオが死に、少々アダルトに見えるティボルトも死ぬ。そして、ジュリエットの悲しみが始まりました。

 前半が藤原竜也のものなら、後半は鈴木杏のもの、といっても過言ではありません。ここから俄然鈴木杏が一人で舞台を背負うシーンが増えてきます。

 涙にくれるジュリエット。しかし、彼女は泣きながら膨大なセリフはしゃべり続けなければならない。大変な役所です。見た目に泣いているのは必須ですが、泣き崩れてはいけなく、セリフで泣かなければならない。そして、いとこの死と夫の罪、二つの悲しみを表現しなくてはいけません。

 ロミオとの逢瀬があり、有名な朝のひばりの声のシーン。そこにいるジュリエットは人形で遊ぶ少女から女に変わっていました。ジュリエットを演じる上で必ず演じなければならない変化。それを恐るべきティーンエイジャーは、ちゃんと演じていました。

   この有名な物語の展開はずっと前から知っているのに、蜷川版ロミオとジュリエットは、あちこちで私に新たな発見を与えてくれます。
 仮死薬を手に入れるジュリエット。この展開に私が今まで感じていたのは、人を仮死状態にする薬なんて、奇妙というか、マジカル、ありえない話しだと思いつつも、ロミジュリはそういうもんだという、形式の一部としてしかとらえることがありませんでした。仮死状態という状態の認識はあっても、それに伴う感情はさほど考えたことがなかったのです。なぜなら、そういうものだから。型のようにあるものだから。

 しかし、今回のジュリエットは違いました。彼女は薬を入手してから、当然の事ながらあれこれ考えます。目が覚めてあの人が居なかったらどうしよう。これは簡単に想像がつくジュリエットの不安です。それにプラス、あの寂しい墓地、死者の居る場所で一人眠り続け、死者に囲まれた場所で目覚めることへの恐怖を口にするのです。これは意外にも今まで私が思い描いたことのないジュリエットの感情で、その瞬間、リアルさを感じさせました。
 そう。考えてみればジュリエットは死の渕まで一人で行くのです。墓地で仮死状態になって愛する人を待つ。仮死状態から戻らない可能性もあり、戻ったら戻ったで死者に囲まれているかもしれず、ロミオが来ない可能性もある。ロミオが迎えに きてくれるだろうという不確かな望みだけを頼りに、一人で死と向かい合い、死者に囲まれ彼を待たなければならないのです。

 追放の身でありながら戻ってくるロミオも命がけですが、ジュリエットだって命がけ。しかもたった一つの望みを胸にそれだけを頼りに、ありったけの勇気を振り絞って彼女は行動するのです。
 今まで私の中でのジュリエットは、悲しみにくれ人の提案にのり、言われるがままに薬を飲む、ある種受動的なキャラクターでした。しかし、鈴木杏のジュリエットが、そうではないという事に気づかせてくれました。
 彼女は並々ならぬ強さを要求され、愛のために思いきって勇気を振り絞り、仮死の世界に飛びこむのです。

 目覚めた時、ロミオの亡骸を見つけ、後を追うジュリエット。最後まで緊張の糸は途切れることはなく、舞台は幕を閉じました。

 続くカーテンコールはスタンディングオベーション。補助席まで抽選だった満員の客席から大きな拍手がキャストに贈られました。

 それにしても、出逢い、恋に落ち、結ばれ、引き裂かれ、死に至る。これを毎回約3時間の中で繰り返す。毎日毎日、数カ月に渡って。そして日によっては1日に2回。
 藤原竜也と鈴木杏の演じたロミオとジュリエットを思い返し、毎回あのみずみずしい恋の翼で飛んでいるのかと思うと、役者とは何て特殊な人達なのだろうと驚かされます。特異な才能の持ち主。そして、並々ならぬ体力も持ち合わせた不思議な生物と思ってしまうのでした。

 それにしても、あの若さゆえ疾走していく奇跡的な恋にちょっぴり憧れ(藤原竜也のかわいさにやられたとも言いますが)、大人である私たちがあんな風に突っ走ることは出来ないと分かりながらも羨ましく思い、まあ、これは世界で一番有名な恋物語なのだから現実には有りえないと悟り(?)をひらいてから帰路についたのでした。

最後に・・・
 チケットが取れない公演でしたが、補助席の抽選に見事当選し、今この時期の藤原竜也と鈴木杏のロミオとジュリエットを観られる幸運を運んでくれた友人に感謝します。

※2005年3月WOWOWでこの舞台を放送するそうです。


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