Matthew Bourne's Nutcracker! Report@ Sadler's Wells Vol.3
21&22 November,2002
By Natsumu


 ぎりぎりに入って来た、2階席最前列中央をおさえていた人。それは、マシュー・ボーンその人だったのです!!!(私の騒ぎようからして、マシュー・ボーン、アダム・クーパー、ウィル・ケンプが揃って入って来たのか?!と思ったそこのあなた!世の中、そこまで甘くないです。おほほっ)

 ああ、良かった。さっきスタッフにマシューへの手紙だけは渡してくださいとお願いせず、一縷の望みを託して渡さず私の手の中において本当に良かった!後で何としても、この手紙を手渡ししたい。それには幕間にマシューをキャッチするのみ!!頑張るのよ!と自分を励まし(?)ているうちに会場が暗くなりました。
 いよいよ舞台が始まるという緊張と、マシューが手の届くぐらい近くに座っているという緊張がダブルで私を襲って来た状態で、舞台が始まります。ああ、心臓に悪い。

 その昔、7人しかメンバーが居なかったAMPに初めて来た大きな舞台、大きな作品の依頼。初めて生のオーケストラを使い、初めてバレエ音楽のスコアをそのまま使い、多数の出演者を必要とした舞台。それが1994年の「Nutcracker」でした。マシューは彼の著書の中で「ギャンブルだった」と言っていますが、急激に大きくなっていったAMPにとって一つのターニングポイントになったのはこの作品だったはずです。出演者をそんなに揃えられないという理由から「親子で出てくる親をやめたら少なくてすむ・・・親が居なくて不自然じゃない状況・・・というと、孤児院?」という理由からこの物語の舞台が「孤児院」になったという、嘘みたいな本当の話しがありますが(笑)今回の「Nutcracker!」も初演時と同じく舞台は孤児院から始まりました。

 ロゴ入りカーテンの前に、グレーの洋服を来た子供達(良く見ると、その子供たちは言うまでもなく、お馴染みのメンバー)が、おどおどと出てきます。一人、また一人と出てくる孤児達。個々にふざけたり、笑ったりしていますが、全員に共通した、人目を気にした控えめな雰囲気は、この孤児院は楽しい所では無いらしいという事を観客に予感させます。
 そして、子供達が思いっきり、「Nutcracker!」と書かれたセーフティーカーテンを引っ張ると、一瞬のうちに舞台に孤児院が現れました。

 孤児院の一室の中央に、女王のごとく立っていたのはミセス・ドロスを演じるエミリー・ピアシー。白地に黒のラインの入った、ナースのような大きな帽子を頭にかぶり、白と黒のストライプのブラウスに、黒のタイトなロングスカートという出で立ちです。襟の白と、カフスでとめられているであろう白い袖口。そして黒のネクタイをしめ、黒のヒール付きブーツがロングスカートからちらっと見えています。それが、何ともかっこいいっ!!!すらりと長い体にフィットした衣装。そのくびれたウェストの細い事!Swan Lakeのガールフレンドの時より、さらにすらりとスレンダーになっています。何てスタイリッシュなビジュアルでしょう。ピアシーのスタイルの良さに思わず目を奪われてしまいます。

 今回、舞台を見るにあたり、全体を見ようと決めていましたので2階席と離れた場所にありながら、わざとオペラグラスを持って来ませんでした。それ故、細かいメイクや表情は私の視力の範囲(コンタクトを入れて1.5ぐらいです)でしか確認出来ないのでドロス夫人がどんなメークをしているのか、はっきりは分かりませんが、全体から受ける印象は、クールというより冷淡。そして、夫人というにはとっても若い印象です。

 彼女の指導のもと、孤児達が一生懸命掃除をし、クリスマスの飾り付けを部屋に施していきます。子供達の個々の動きがまた、それぞれにドラマがあってマシューらしい。壁に飾り付けをしようと思って届かない壁に困っている女の子を、男の子がだっこして届くようにしてあげるシーンで、いきなりお互い相手の事を意識しちゃったりとか、相変わらず見ている方は気が抜けません。
 みすぼらしい、ただの枯れ木の植木鉢によるツリーもどきで観客の笑いを取った後、全員整列させられ、Dr.ドロスとその子供たちが入ってきました。

 きゃーん、スコットだ〜っ!!!と思わず身を乗り出してしまいます。黒い革?のロングジャケット(えんび服のように裾が長い)にタイトなパンツ。彼のスレンダーな体が強調されています。
 黒の靴に黒のベスト。白いのは襟が見えるシャツだけで、髪は七三にわけたオールバック風で、手には鞭を持っています。パンフレットのキャライメージイラストからするに、多分メイクは笑えちゃう系なんだろうけど、私の目には幸か不幸か見えません。ああ、参った。かっこいいっ!!

 そして、その子供フリッツ演じるユアン・ウォードロップは、既にわがまま!!!を絵に描いたような子供になっていました。う、上手すぎるっていういか、これが地なんじゃないか?と思うようなナチュラルさ。嫌なガキ道をつっぱしっています。
 その姉シュガーを演じるのはサラーン・カーティン。相変わらずの美しさですが、ラナの時のセクシャルな魅力を全面に出した雰囲気とは一変して、今日は良家の子女という感じ。しかし、ただの良家の子女であるはずはなく・・・大きな黒いリボンに黒のワンピースは一見いい家の子風ですが、人を見下した表情がまた、弟と同じ嫌なガキ道をつっぱしっていて、Nice!

 シュガー、フリッツを中心に子供達のダンスが始まります。舞台端でその様子を見守るドロス夫妻。皆のダンスを見つつ、私の目はスコットチェックも怠りません。忙しい・・・でも、いつの間にか舞台から夫妻は姿を消しました。

 この子供達のダンスシーンは、シアターTVで放送された、シンデレラの時のドキュメント、「サウスバンククショー」でも昔の映像が放送されていた例のシーンです。当時はスコットがフリッツを演じていました。

 例の有名な軽快な音楽にのせて、フリッツとシュガーは手を繋ぎながら、左右の足を交互にスキップするように出しながら前方向にステップを踏んで進んできます。そして、軽くひざを曲げた後、両肩をゆらして立ち上がる。ああ、何ってマシューっぽ動き。そして、気が付いた時には、孤児達にリフトしてもらったフリッツとシュガーが重なっていて・・・息を飲み、硬直する当人達をはじめとする孤児たち。その瞬間の会場の爆笑。
 ああ、映像では見慣れたシーンですが、やってくれます。マシュー。演出されたミステイクに対してくすくす、くすくすと笑いが会場を包んでいます。
 まずいポーズの姉弟が動揺しているシーンに、ドロス夫人が再登場。何してるの!と慌てふためくドロス夫人。そこにドロスが来訪者をつれて再登場。またスコットチェックに忙しくなってきました。


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