NATSUMU'S Times Square/nutcracker! report.html

Matthew Bourne's Nutcracker! Report@ Sadler's Wells　Vol.6
21&22 November,2002
By Natsumu

　もしも抱き人形が人間サイズになって自分に向かって歩いて来たら。更にそれが夜中だったりして、しかも暗がりで、何を考えてるのか分からない全くの無表情で（まあ、人形の顔が笑ってても怒ってても更に恐いですが）ただただ直進をして来たら？
　それはもう、迷う事無く子供だろうが大人だろうが、その場から逃げるのが当たり前。という訳で、クローゼットの扉を開けて彼を起こしてしまったシュガーは、一目散に逃げ出しました。勝手に事を起こしておいて、身勝手に逃げちゃう女っているよね～と思ってる人も居たでしょうが、それよりなにより観客は今、カラフルなジャケットを着た人形に目が釘付けです。だって、変なんだもん。

　さて、気の毒なのは子供達が眠る中、唯一人目が覚めているクララ。人形は恐いし、外にはドロス一家が居るしで身の置き所がありません。
　歩き回る人形。これは恐い・・・さすがの子供達も目を覚まし、怯え震えはじめました。暗い中、大人サイズの人形が部屋を歩き回り、更に！壁を壊しはじまめました。うーん。ハカイ（破壊）ダー。バキバキ、メリメリ壁が壊れてます。マスクの中に入ってるのがアラン・ヴィンセントだと思うと、妙に説得力が（笑）

　そこにおもちゃのピストルを持ってフリッツが乱入。すっかり姉の尻に敷かれてる弟フリッツ（ユアン）。
　おもちゃで勝てると思ってるなんて彼も子供ね～というより、この偏執狂気味のしつこさなら、本当におもちゃで勝てるかもしれないという気迫（？）のようなものが、いえ、キてる感じが、ユアンからは伝わってきます。
　一家勢揃いのドロス's。クローゼットを確認するも人形が見つからず騒然としている所に、子供達の反撃が始まった！そう。子供達案外強いです。
　ここからは子供たちとドロス一家の壮絶なるバトルが繰り広げられました。ドロス一家総勢４人を一人づつ血祭りに？あげるべく子供達が一致団結して闘っています。

　ドロス一家の一人づつが別々のキャスター付きベッドに押さえ込まれています。そして、あっという間に部屋の外に退散させられていくのです。
　このシーン。日頃の恨みをはらすには絶好の・・・いえいえ。そんな事はないですよね（笑）
　人形でサラーンをひっぱたいていようが、ユアンを紐で括りつけていようが、ピアシーを体ごと押さえ込んで動きを封じていようが、どれもそれは演技、演出。だから、Drドロス演じるスコットがベッドに押さえつけられ、子供達の怒りの爆発のもと、おもちゃのナイフで首を切り落とそうとされ、更にその首を受けるバケツを持った子が居てるなんて事が起こっていても、これはみんな演技なのです！！
　まあ、振付け演出してるマシューの心はいざしらず（笑）舞台で起こっている事は全て演技。押さえつける手に必要以上の力が入っていようが、おもちゃのナイフが本当に首にあたっていようが、それは熱演なのでしょう。そういう事にしておきましょう（笑）

　という訳で、一見純真純粋そうに見える子供達の心の奥底にあったドロっとした恨みが表に噴出し、舞台の上は大騒ぎ。この、感情を押さえられ様々な事に我慢していた人間がある事をきっかけに一気に心のたがが外れ、行動が極限まで行ってしまうというのは、マシュー作品の特徴です。その極限が結構過激なのもまた特徴で（笑）だいたい「殺してやる」の衝動に出るのですが。

　さて、一方的にスコット、いえ、Drドロスがやられている訳もなく、彼の反撃が開始。髪を振り乱し再び悪魔的な表情を浮かべて子供達を窮地に追い込んで行きます。死人になったCar Manのディノ役といい、このドロスといい、スコット・アンブラーは本当に、髪を振り乱して反撃に出る無気味な男という役も上手いです。演じていて本当に楽しそうに見えるし。オールラウンダーですね。

　　そこに姿を消していた人間サイズの人形が登場。アランVSスコットなら、腕力勝負でやっぱりアランでしょう。てな訳で、ドロスは場外に連れ去られてしまいました。うう。スコットが・・・居なくなってしまった。寂しいっ。

　大変な騒ぎがDrドロスとともに舞台から過ぎ去っていきました。気付くと部屋にはクララ演じるマーフィットだけ。部屋の壁はハカイダー、アランが壊していった為大きな亀裂が入っています。そこに先ほどの人形（アラン）が戻ってきました。
　マスクを取り、上着を脱ぎ去る人形。すると、現れたのは素肌に白のサスペンダーと白いロングパンツだけを身にまとった男性、アラン・ヴィンセント演じるNutcracker（くるみ割り）でした。

　何故に上半身裸なのか。そして、何故に素肌にサスペンダー。更に、白いパンツはクラッシックバレエの王子様をイメージしたものなのか？！なかなか不思議なスタイルのヒーロー登場です。