Matthew Bourne's Nutcracker! Report@ Sadler's Wells Vol.8
21&22 November,2002
By Natsumu


 トラブルに巻き込まれた人に「大丈夫ですか?」と優しく声をかけて出会いのきっかけをつくり、自分自身とその性格を相手に売り込む。この古典的な手を使うべく、シュガーは弟フリッツに巨大雪だるまをくるみ割りにぶつけなさいと命令。信じがたいほど大きな雪だるま大の雪が空から降って来て見事彼に命中。あはは。もー、またマシューは!思いきりのいい事で。
 このシーン。直径1メートルはある雪玉がくるみ割りの頭にスコーンと命中。バタっと倒れるのです。その思いきりの良さと単純さに会場から笑いがどっとおこります。またアラン・ヴィンセントが何の抵抗もせずパターンときれいに倒れるのです。

 そこに「大丈夫ですか?」とシュガーが優しく美しく、くるみ割りに駆け寄り介抱しました。すっかり彼女の美しさと優しさにまいってしまったくるみ割り。
 君は、あの不可思議な雪の固まりに疑問を感じないのか?!どう考えても不自然でしょうが!一抱えどころか、一人で持ち上がらないぐらい大きかったぞ、今の!!と突っ込みを入れたくなるほど、くるみ割りは素直に彼女の手中に落ちてしまいました。
 男って・・・きれいな女の人には弱いものなのねぇ。はぁ・・・とクララにかわってつぶやいておきましょう。

   Frozen Lakeに、この国の王と王妃がやってきます。言うまでもなくこれはDrドロスと夫人。スコットとピアシーが演じています。彼等も白い暖かそうな衣装に身を包んでいます。
 白のえんび服と帽子の王様。ロシア風毛皮の帽子にドレスの王妃様。白い帽子に大きなボンボンがついた王様、スコットの衣装がちょっとキュート。でもこのご夫妻。孤児院のDrドロスと夫人とは思えないぐらい静かです。所かわって、控えめな人たちになってしまったようです。

 さて、全員でのダンスが始まります。クララも加わり、今度は彼女も楽しそうに、でも一人白いネグリジェのまま寒そうですが明るい表情を浮かべ、くるみ割りをパートナーに踊りはじめました。プリンセス・シュガーは弟のプリンス・ボンボンと踊っています。

 美しい水色の空に純白の大きな羽が浮かび、その下のFrozen Lakeで白いかわいらしい衣装に身を包んだ子供達と王様たちが楽しげにスケートをしながらダンスをしています。そこに、サーッと美しい雪が降ってきました。
 スノードームの中にある粉のように、光を浴びるとキラキラ、キラキラと美しく光り輝く夢のような雪。夢のような光景が舞台に現れました。
 その瞬間、その美しさに観客からも声があがります。何てきれい!!!拍手の中、右を向いていたダンサーたちが、今度は左に向きを変えてポーズをとりました。ここは氷の上(の設定)。片足を90度の高さに上げてポーズをとる女の子たちのスカートの裾は、男の子達の手動で(イメージは滑らかにスケートリンクを滑っていて、スカートの裾が風を受けて翻っている状態)はためいています。その演出に会場から笑いが。やんや、やんやの客席の反応に、満足げなダンサー達の笑みが広がりました。

 全員での見事なスケーティング(笑)が終わり、いつしかまたクララは一人ぼっちに。再び彼女の顔に寂しげな表情が浮かびます。夢のような美しい空間で、一人置き去りにされたクララ。そして彼女は、純白の大きな枕に身を横たえて眠りにつきました。

 会場に明かりがともります。あっという間にインターバルになってしまいました。何と早い!たった今見た雪の美しさを思い出し、きれいだったなぁとぼおっと考える時間が…私にはない!インターバルといえば、マシューです。どうしても彼と話しをしたいっ!!!し、手紙も渡したい。
 初めて作品を見る時の緊張とは違う緊張が今、私に訪れていました。
ちゃんと話せるかしら。迷惑ではないかしら。あー、どうしようっ!!と頭の中で葛藤が始まりますが、時は迫っています。どんどん会場からロビーに人が出て行っているのです。逆方向にマシューが出て行ってしまったら、もうアウトです。と、色々思う間もなく、私の座席の方向にマシュー・ボーンが歩いてきました。チャンスです!

 いつものようにメモを片手に舞台のチェックに余念の無いというより、その為にここに居るマシューが私の目の前に近づいてきます。さあ、勇気を持って!
「Excuse me,Mr.Matthew Bourne」
と、ここでシャツにクルーネックのセーター、そしてパンツというカジュアルな姿のマシューが立ち止まってくれました。
「日本から来ました。この手紙読んでください。」
「ありがとう」
早速差し出した手紙を快く受け取ってくれました。
「あの、私は日本であなたについてのHPを作っているのですが」
というと、にこっと笑ってくれます。
「日本のあなたのファンにメッセージを頂けませんか?」
「いいですよ」
と快諾。手渡したノートとペンを持って休憩で人の居なくなった座席前の通路に立って書きはじめてくれました。本当にいつも丁寧に、気さくに接してくれる人です。
「来年、日本でSWAN LAKEが予定されていますが、日本には来られるんですか?」
と聞くと、ここで顔をこちらにあげて
「うーん・・・分からないなぁ。行ければいいけどね。」
「来年のシザー・ハンズはいつごろになるのでしょう?」
「うーん・・・来年の遅い時期。まだ何も決まってないんだよね」
「秋ですか?冬?秋?」
「そう・・・遅い時期(笑)本当にまだ何も決まってないんだ」
「じゃあ、リトルマーメードは?」
「あれはNYなんだけど、2004年!」(結局マシューはこの作品への不参加を決定しました)
「4?」
「そう、4」
とにこにこ。ここで、はいとペンとメッセージを書いてくれたノートを返してくれました。
「本当にありがとうございます。今夜の舞台、本当に楽しんでます!」
「ありがとう」
とまたにっこり。そして、すっと手を差し出してくれました。しっかり握手し、じゃあねと舞台チェックメモを片手に、マシューは会場を後にしました。

残った私は、偶然という名のつく自分の幸運に喜びながら、今渡してもらったばかりのメッセージをみつめていました。かなりの感動とともに。

 マシューと話している時は必死で気付きませんでしたが極限状態の緊張にあったようで(でも思いっきり自分の言いたい事は伝えて(笑)メッセージまでもらってしまったにも関わらず)急に極度の疲れに襲われ、思わず座席にへたりこむ私。
 胸にはしっかりと、今もらったメッセージを抱え、心地よい疲労感に包まれて、良かったねぇ〜と話しかけてくれる友達に頷きながら、今、私的大イベントを無事終えた充実感に包まれていました。
 ああ、ノートとペンを駄目もとでちゃんと用意してきて良かった。自分の用意周到さに満足!充実したインターバルでした。さあ、次の幕に備えてトイレに行きましょう(笑)


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