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「物流2024年問題」の闇 −トラック運送業を“官業”にし、運送業者は官業の下請けにして、天下りの楽園にしたいのか−

 1月31日の読売新聞は、「荷待ち削減計画の策定義務化、下請け管理簿作成も…トラック運転手の長時間労働・低賃金を改善」と言う見出しで、次の様に報じていました。
茶色字は記事、黒字は安藤の意見)
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荷待ち削減計画の策定義務化、下請け管理簿作成も…トラック運転手の長時間労働・低賃金を改善 
2024.01.31 05:00 読売 物流2024年問題

 トラック運転手の人手不足で輸送力の低下が懸念される物流の「2024年問題」に対応するため、政府が検討する物流関連2法の改正案の概要が30日わかった。積み下ろしの順番を待つ
荷待ちを減らす具体的な計画の策定荷主に義務づける。多重下請け構造を可視化し、低賃金を改善させる。

 長時間労働を改める働き方改革関連法が4月から、トラック運転手らにも適用される。政府は、物流総合効率化法貨物自動車運送事業法を改正し、商慣行の見直しや取引の適正化を進める。2月にも閣議決定し、今国会に提出する方針だ。

 記事はなぜ、「物流の2024年問題」としたのでしょうか。
 人手不足は“物流”業界だけに起きているわけでは無いし、他のサービス業、製造業界でも同様の問題はあるはずですが、“2024年問題”と言って騒いでいるのは、“物流”業界だけです。
 さらに“物流”とは言っても、鉄道・海上・航空輸送は言及されていないので、陸上(トラック)輸送だけです。

 他の製造業、サービス業などでは、人手不足に対しては、それぞれの企業、企業グループ等が対策を立て、対応していると思われます。
 ではなぜ、陸上(トラック)輸送業界だけが、取り上げられるのでしょうか。

 荷主に対して“荷待ち”を減らせ、その具体策を出せと強制していますが、それは暴論では無いでしょうか。荷物の中身は千差万別・多種多様で、一概に減らすことは出来ず、“荷待ち”運送に付きものと考えるべきでは無いでしょうか。“荷待ち”“運送”の一部なのです。“道路の渋滞”と同じです。
 どうしてもと言われれば、
“輸送”“荷待ち”別料金にするかですが、それは官僚(以下“官”と表記します)が決めることでは無く、当事者が決めることです。それなのになぜ“官”が口を出すのでしょうか。陸上(トラック)輸送を“官業”にしたいからではないでしょうか。

 
“官”(国交省)でも無いのに長時間労働低賃金など労働問題を前面に押し出していますが、この記事からは“労働者側の声”(他にも下請け業者からの声も、荷主側の声も)はどこからも聞こえてきません。聞こえてくるのは“官”の声ばかりです。正に“官”一人舞台の観があり異様と言わざるを得ません。

 
トラック運転手は、全産業の平均と比べて、労働時間2割長く賃金1割低いとされる。

 平均値は平均ですから、実態は平均以上平均以下多数存在します。この記事は全ての職業・職種に於いて
賃金格差あってはならないという趣旨に読めますが、その是正を実現するには全産業統一の賃金を制定しなければなりません。そんな事が可能(かつ必要)だと思っているのでしょうか。時代遅れの共産主義・社会主義思想以下妄想(妄言)です。

 改正案では、一定規模の荷主らを特定事業者として指定し、改善計画の策定と定期的取り組み状況を報告することを義務づける。社内で責任を明確にするため、物流統括管理者配置も求める。取り組みが不十分な場合は、国が勧告や是正命令を出すことができる。

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運送業界は、多重の下請け構造になっており、間に事業者が介在するほど、実際に運送に従事する運転手の報酬に回せる原資が少なくなる。元請けの運送業者には、下請け状況を明らかにする管理簿の作成も義務づける。

 
特定事業者、計画、報告、物流統括管理者、是正命令、管理簿作成義務と、とげとげしい言葉が並んでいますが、いずれもその定義、基準など中身が示されておらず、何を根拠・基準にして“是正命令”を発するのか分かりません。これでは何でも好きなことが言えるようで、とても法治国家にはあり得ない事態です。
 (もし、詳細が明らかにされているにもかかわらず、報じられていないのであれば、それはマスコミ・読賣新聞の責任です)

 記事では物流業界の
特殊性を色々指摘していますが、一番重要な点は陸上(トラック)輸送事業は規模の大小にかかわらず、「免許(許認可)」行政とされていて、役所への届け出(認可)が必要とされている“官営(許認可)事業”であることです。
 その為他の業界以上に“官”の口出しが多く、業界の再編成
“経営規模の拡大”が進まないのだと思います。

 今回提示されている提案を見ると、「具体的な
計画の策定荷主に義務づける」などとあり、荷主(顧客)計画の策定を義務づけていますが、肝心の中身については何も触れていません。計画を策定すれば必ず達成(成功)するとは限らないし、「報告」未達成の報告」となる事もあり得ます。当然ですが、「達成」が義務づけられているわけでもありません。しかしこの計画未達脅迫の材料にされる可能性は否定で痔来ません。

 中身
を問わない“具体的な計画”を義務づけるとは不可解千万です。有意な計画立案が困難(不要)で目標達成困難(不要)である事に対する、“官”の責任回避(転嫁)ではないでしょうか。荷主(顧客)にこれに応じる義務があるのでしょうか。

 また、
多重の下請け構造の原因は、大型トラック運転手という労働者は、その他の労働者に比べて同一業種(職種)内での転職容易定着率低く労務管理が難しいという一面が影響しているのでは無いでしょうか。

 これらの重大広範囲
“改革(改悪?)”について、“官”マスコミ荷主の立場、意見完全に無視して、一顧だにしていません。完全に“悪党”扱いです。こんなことがあって良いのでしょうか。到底許されないことです。

 かつて
ヤマト運輸荷主であるデパート(伊勢丹?、三越?)専属の運送業者として、中元・歳暮などの配達を請け負っていましたが、荷主のデパート側の傍若無人に耐えられず、これと絶縁して個人客相手宅配業務を始めて大成功を収めたことは有名な話しです。本来であれば“官”はこのヤマト運輸の大成功を称賛してしかるべきですが、その後“官”がしたことは正反対の、ヤマト運輸に対するいやがらせの数々です。

 
国土交通省によると、トラック運転手の1日の平均労働時間12時間26分で、このうち、3時間超が運転とは関係ない荷待ちや積み下ろしをする荷役といった業務に充てられている。

 
荷待ち積み下ろしは、“運転”無関係であっても、“運送”とは密接どころか、一体不可分の業務です。運転手には、運転以外業務をさせてはならないという法律があるのでしょうか。

 
引っ越し荷物の運送の時は、当然運転手・その助手などが荷物の積み下ろしを行います。それを拒否されたら消費者は大迷惑です。もしそれでもあくまでも“運転とは別だ”こだわるのであれば、“積み下ろし料”“運送料”を分けて、その分“運送料”を差し引くことになるでしょう。どうしてそんな事にこだわるのか、“官”現実離れ(現実無視)を象徴しています。
 運送業を他の
一般のサービス業と切り離して“官業”にするからこう言う事になるのです。

 
国交省は昨年、荷主らから不当な要求がないかを調べる「トラックGメン」制度を導入し、荷主や元請けへの監視体制を強化していた。26日には、長時間の荷待ちをさせている疑いがあるとして、荷主と元請け2社に対し、勧告を実施して社名を公表している。
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 もうこうなったら“官”には陸上(トラック)輸送から完全に手を引いて貰うしかありません。この提案は“官”民間企業にすることではありません。市場経済完全否定です。
 “官”は運送事業を民業では無く、“官業”として官業らしさを徹底したいのでしょう。そして運送業者を
“官”の下請けにしたいのでしょうか。さらに、トラック輸送業界を、“天下りの楽園”にしたいのでしょうか。

 運送業(トラック運送)を
“官業”にしてもメリットは何もありません。デメリットだけです。自由競争の原理が消滅して、高コスト・低効率がはびこる問題業界に転落することは目に見えています。一刻も早く“官業”指定とそれによる規制を取り外し、一般のサービス業に位置付けるべきです。

 宅配分野
ヤマト運輸大成功を収め、消費者には大歓迎をされましたが、“官”はそれを歓迎せず、あらゆる機会を捉えていやがらせを続けました。

 ヤマト運輸に対するいやがらせの例
H14 「郵便法」は憲法違反 −職業選択の自由を奪う「郵便法」− (kcn.ne.jp) 
H83 日本郵政独占の弊害 1月2日に配達されなくなった年賀状 −ヤマト運輸に「親書」の取り扱いを認めよ− (kcn.ne.jp) 
H94 理不尽なヤマト運輸叩き マスコミと役所の意図は何か −見積もりと結果の相違は珍しくない− (kcn.ne.jp) 
H100 独占企業「日本郵便」のもと、劣化が止まらない「郵便事業」 −独占を批判し新規参入を目指すヤマト運輸を、一丸となって叩く政・官・マスコミ− (kcn.ne.jp) 
H164 「2024年問題」とは何か −日本郵便とヤマト運輸、上位企業2社の「協業」は健全な市場経済と消費者の利益に反する− (kcn.ne.jp)
その他の動き
ゆうパック・速達、一部地域で最大半日遅く…途中で荷物積み替える中継輸送推進 (msn.com)
 これらの動きに対して、
マスコミは“官”を批判をしないどころか、一緒になって“官”ヤマト運輸叩き足並みを揃えています。

 官はなぜヤマト運輸に対するいやがらせを続けるのでしょうか。
 それは“官”
郵便小包大打撃を受けた恨みもあるでしょうが、官・民の現状の立場・力関係が危うくなることが大きいと思います。成長し大きくなれば、“官”役割縮小します(天下り先を失います)

 2024年問題から話しが飛びますが、自動車業界でははすでに世界的な巨大企業で、その
実力を遙かに上回ります。
 そういう世界では
官の役割などは形式的な範囲に止まり、能力の実態はと言って良いと思います。それにもかかわらずその実態を直視せず、旧態依然にしがみつこうとする“官”達諸悪の根源なのです。

 一連のダイハツ・トヨタに対するいやがらせ、過去の日野、日産、スバルに対する同様の事件の続発から言えることは、今の“官”は自動車メーカーに負担を掛けるだけの存在であり、無意味な「認証制度」改める(廃止する)必要があると言うことです。

 自動車メーカー生産・出庫停止により蒙った
巨額の損失に対して微塵の良心の呵責も感じない“官”達と、“民(メーカー・消費者)”の立場一顧だにしない“マス”達“癒着”を止めるべきです。

 にも拘わらず
マスコミ業界癒着を止められないのは、“官・マス”間相対的な力関係が、官優位に代わりつつあるからです。マスコミの中心であるテレビ、宅配新聞相対的にも絶対的にも力を喪失しつつあります。

 
視聴者、購読者数は確実に減少し続け、スポンサーも減少しています。テレビ・宅配新聞とも一流大企業の広告は激減しています。

 このような中で、各地の
記者クラブで対峙する“官”と記者の力関係“官”の優勢である事は間違いないと思います。

 また、
“官”国交省(建設・運輸所管))の優勢の原因の一つとして、公明党長期間大臣ポストを独占していることや、日本郵政の増田寛也社長が日本郵政に止まらず、政界で活躍(暗躍?)していることも関係があると見られますが、マスコミはどこも何も報じていません。

 最近のダイハツ、キックバック、2024年問題等の流れを見ても、いずれも
官の思惑通りに展開し、マスコミ官に対しては何も言えない様に見えます。

 
“官”が自由にマスコミ(言論)操れる社会とは恐ろしい社会です。

令和6年2月6日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ