Vol.5

<ACT THREE>

- THE STREETS OF LONDON -

シンデレラの靴をしっかりと胸の位置で抱えるように持ち、ハリーはこの靴の持ち主を知らないか、シンデレラを見かけなかったかと人々に尋ねて回っていた。
しかし人々の反応は冷たく、この緊急事態に何をしているのかと相手にもしてもらえない。彼が近寄ると逃げるように足早に歩き、あっと言う間に通り過ぎていく人々。負傷しているハリーはよろける様に人々の間を歩いている。

空襲に怯える人々の中で、シンデレラを探して歩く彼は完全に孤立していた。

- THE LONDON UNDERGROUND -

ハリーが辿り着いたのは地下鉄の地下道。ここでは空襲の恐怖がないせいか、歩き回る人々はいない。
ここは地上とは対照的にとても静かで、戦時中である事を思いださせるものは、壁に貼られた軍隊のポスターしかない。

深夜になっているので地下鉄はおそらく動いていないのだが、ここには若者がというより、コールガールらしき数人の女性とベレー帽をかぶった若者がたむろしていた。深夜の地下鉄は本来とは違う目的で来た人々が集まっているのだ。
派手な格好の女性達が誘うように数人立っている。男達も女達を物色するでもなく、ただ佇んでいる。彼らはコールボーイなのだろうか。
そこへその場には不似合いのハリーが飛び込んできたのである。

再び靴を片手にシンデレラの行方を聞いてまわるハリー。しかしここでも彼はまともに相手をされない。それどころか、逆にコールガールに言い寄られてしまう。
疲れきっている彼は優しく近寄ってきた彼女の誘いに一瞬のってしまいそうになるが、思いとどまり再びシンデレラの靴をギュッと胸に抱きしめる。
彼女への感心は急激に冷め、ハリーは逃げるように壁づたいに歩いて彼女から離れる。

そこへ賑やかな音をたてて救世軍らしき男女二人がビラを配りながら現れた。
ハリーよりもこの場で浮いている彼ら。しかし全く気にする事なく彼らはビラを配り、人々に呼びかけている。作ったような笑顔を浮かべた彼らはまるで気味の悪い人形の様であり、一種のバカにも見え、偽善者にも見える。
壁にもたれかかっていたハリーは彼らにも質問する事にしたらしく、よろよろと救世軍の方に歩きだす。しかし、彼らはハリーの言う事に耳を傾ける事はなく、ビラを手渡しそれを読めばあなたは救われるのですと満足げに頷いた。
質問もさせてもらえず、がんばって下さいと握手されてしまうハリー。自分たちの仕事は終わった、また一人救うことが出来たと満足げに行進して、救世軍は来た道を戻っていった。

救世軍のいなくなった地下鉄は再び夜の雰囲気に包まれる。
紳士が若者に近寄り何かを手渡している。すると紳士は突然彼のチャックを引き下げ、足早に去っていった。慌てる若者と足早に立ち去る紳士。その中をハリーが次の場所に移動するべくよろよろと歩いて行った。

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